「香港、マカオ、上海は近くていい。台湾は強化したい。」 バニラエア、石井知祥社長単独インタビュー(中)

7月1日、エアアジア・ジャパンからバニラ・エアにブランド変更されて以降、初の独自路線となる、東京/成田〜奄美大島線に就航した。ANAグループが就航していない奄美大島をなぜ選んだのか、同社の今後の戦略とともに、石井知祥(いしい・とものり)代表取締役社長に聞いた。

7月1日、エアアジア・ジャパンからバニラ・エアにブランド変更されて以降、初の独自路線となる、東京/成田〜奄美大島線に就航した。

ANAグループが就航していない奄美大島をなぜ選んだのか、同社の今後の戦略とともに、石井知祥(いしい・とものり)代表取締役社長に聞いた。(上はこちら

ーヨーロッパでは夏はLCCのフライトが山のようにあって、冬は1便もないということもあるが。そのような季節便の計画は?
チャーターベースでやりたい。定期便ではなくて、夏はここ、冬はこっちとか。なかなかそういう部分ができないのは、スロット(発着枠)が取れないから。定期便として運航していないと、スロットの確保は難しい。1ヶ月前に分かったところで売れますか?3ヶ月、4ヶ月前にわかっているといいのですが。
ちょっと夏は海外のあっちのリゾート、冬はこっちのリゾートへ運航、逆というのもまさしくレジャー・リゾート路線のLCCらしいと言える。レジャーという面では、定期便ばかりでなくて。定期便だとお客さん少なくても飛ばし続けないといけない、それが定期便の使命だから。将来的には実現したい。やりたいけれども、成田も(一部の国際線が)羽田に移ったとはいえ、(ピークの)時間帯は変わらないから厳しい。
ー夏以降、札幌6便体制になるが、一つの路線を太くしていくという方針なのか。
札幌は流動性が高いお客さんも見込めて稼動がいい。当社にとって一番短い路線で、効率の良い運航ができる。乗員が2往復できる。需要もしっかりある。
ー搭乗率がいいということですが、引っ張ってるのは台北線?
台北は最初から孝行息子。(搭乗率が)90%をずっと超えている。4月はちょっとダイヤ変えたので、国内を含めて厳しい数字にならざるを得ない。台北はスロットが取れれば増便したい。もっとやりたい。
ーその台北線をなぜ1往復に?
日中のスロットがなかなか取れない。夜行便は好調だけれども(乗員が2日間にまたがる勤務なので)稼働効率を考えると難しい。うちは夜出して、朝帰ってくる。乗員はそれで終わり。稼働からしたらものすごく落ちる。夜行便やりたいんですよ。
台湾は需要がついていて、お客様の6割が台湾の方なので、チャンスがあれば充実させたい。短期的にそうなっている。
ーバニラ・エアでは、手荷物料金が運賃に含まれている。LCCが重要視する付帯収入の大きい部分だと思うが、どう付帯収入を増やすのか。
旧エアアジア・ジャパンの時は19%くらいだったのかな、2割弱。当初は25%くらいは付帯収入で確保したいと申し上げたが、今は15%くらいが付帯収入目標になっている。でも今現状は1割にも届いていないからどうするか。ヘッドレストカバーに企業宣伝を機内に取り込むなど、それ以外にも付帯収入を上げる工夫が必要。お客さんにリーズナブルなものを理解していただける中でやっていかないと。支払手数料を200円で値上げしていませんから、シンプルさを失わない中で、どう付帯収入を増やしていくか。目標よりいっていないので。
スマホから予約できないので、それをできるだけ早く。それが伸びない原因の一つと認識しているのでできるだけ早くやるようにしています。
ー台湾から札幌といった通し運賃の発売は。
今は考えていられない。システム面での対応や乗り継げなかったい場合の保証の考え方など、整理が必要となるとか。できるだけ定時性は高める。
ー4人以上での同時予約と利用だと10%が割引になる「みんなで割」は売れていますか。
最近の数字は取れてないが、当初は結構あって、全体の3~4割を占めるくらいの時があった。
ーピーチとはどう差別化を考えていますか?
私自身はしていない。新しいことをやっている中でいいものを取り入れたいと思っている。
我々が大切にしているのはもまず大事なのは、安全で安定した運航、安心して安くご利用いただけること。定時性という公共交通機関の基本をどう徹底して、お客様にバニラエアを選んでいただくか。選ぶ選択肢になってもらうか。安ければ売れるという時代ではないから。おもしろい、何かあるという付加価値も付け加えていく。そこのブランディングが正直出来ていないし、ゆるキャラ路線なのか今ひとつわからない。大事なのは定時性や安全。そこを安心してもらうのが大事。当然、低廉な運賃を出し続ける。
ー九州の就航地はゼロですが、宮崎と長崎ですがどうお考えですか。
私は宮崎の出身ですなんですけど(笑)。
宮崎は選択の一つとしては余地がある。我々は(旧エアアジア・ジャパン時代に福岡には)飛んでいたし、(九州に)未練はありますよ。しかし、どちらかというと我々は海外にパワーをかけたい。
ー海外路線、具体的にはどの当たりを想定?

香港、マカオ、上海は届く。リスクはあるがけど、やはり近くていい。マニラ、グアム、サイパンはETOPS(双発機が洋上飛行をする際に課せられる制限)をクリアしなければならず、すぐにというわけにはいかない。

セブはちょっと(航続距離が)届かない。前職の時(ANA)にはチャーターを飛ばしていて、今はすごく良くなったと聞く。
あと、台湾線は強化したい。スロットが取れれば。台中とか高雄とか、(台北の)松山に入れればいいが。
ーバニラ・エアがどこに飛んでいるかわからない人も多い。どうやってバニラエアを広めていくのか。ジェットスターのように桐谷美玲さんなどを起用してお金をかけるというやり方もあるが。
コストはあまりかけられない。だから、異業種とのコラボなど知恵と工夫で勝負する。ロハコとやってみたり、もう少し異業種と組めるところを探したいと思う。
我々はまず、地元にどう知ってもらうか。千葉県民でも「バニラ・エアって何?」という人もいる。徹底的に地元と就航先にPRしていく。
ー「地元に知ってもらう、PRしていく」とは具体的には?
山武市の広報誌に載せてもらっている。それもひとつですし、営業部隊が千葉県で予定していますけれど、車でまわって航空券の移動販売みたいなものも考えている。
自治体では、職員さんにバニラエアを使った旅行商品を案内してもらっている。徹底的に。
ーということは、LCCだから成田に飛んでいるというわけではなく、成田のエアラインということになる?
そう。(「うなりくん」のピンバッジを)500個もらったんですけどね。準社章ですと。
ピーチが関西に愛されて支持されたのと同じように、地元間の交流事業で支持してもらいたい。我々はCMなどにお金をかけられないので、話題作りは異業種と組んだり、キャラクターを活用したり。
(続)

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