BLOG
2018年08月30日 20時43分 JST | 更新 2018年09月04日 11時36分 JST

海外投資ファンドは、本当にハゲタカなのか?面接を受けてみたら…

不遜な態度で望んだ面談は、今振り返っても印象深い時間になりました。

ハフポスト日本版の読者の皆様、はじめまして。時国司(ときくに・つかさ)と申します。

ハフポストへの寄稿のお話をいただき、とても光栄で、嬉しく思っています。せっかく貴重な機会を頂いたので、是非読んで下さった方に有益な情報や視点をご提供していきたいと思います。

主な内容としては、世界の金融センターであるニューヨーク、ロンドン、香港で仕事をして感じたことや、ゴールドマン・サックス、ベイン・キャピタル、そして今オービス・インベストメントで働いていて面白いと思ったことなど、読んで下さる方が海外投資ファンドでの仕事を疑似体験できるようなものを書いていけたらと考えています。

また、たまには脇道に逸れて、私なりの「働き方改革」(投資ファンドでの仕事とフットサル代表の活動と子育てを、どう自分なりに両立してきたか)など、専門分野とは直接関係ないようなことについても、書いていきたいと思います。

私は、台湾の台北市で生まれ(父が台湾、母が日本人です)。1歳半で初めて日本にきて、そこから日本と台湾の間を往来しました。大学卒業後、約6年半日本で仕事をしたあと、ロンドンに渡ってMBAを取得し、そのまま現地採用でオービス・インベストメントに入社しました。

投資/資産運用において、世界でも最も長い歴史を持つイギリスでの経験は、とりわけ多くの学びを与えてくれました。そして、2016年に、約6年ぶりに日本に戻ってきました。

帰国してまず感じたのは、やはり日本は素晴らしい国だということです。

食べ物が美味しくて、生活にかかわる利便性も極めて高く、風光明媚な名山勝川が数多あります。国民の教育水準も高く、治安は安定しています。ここまでの国をつくりあげた先人の凄絶な努力は想像に難くなく、尊敬と感謝の念を改めて抱きました。

しかし一方で、こと投資/資産運用という点に敢えて着眼点を絞ってみると、世界の金融センターと比して、日本がいかに後進的な状況に甘んじているかを、痛感せざるを得ませんでした。これは海外に出る前には、気づくことすらなかったものです。

私がオービス・インベストメントに入社するきっかけになったのは、ビジネススクール在学中の2010年に、同社の本社取締役から突然送られてきたメールでした。

オービス・インベストメントは、数年前まで、「メディアに出ない」という方針を長らくとっていたこともあり、メールを受け取ったとき「有価証券報告書の主要株主一覧で何度か見かけたことがあるような...」という程度の印象しかありませんでした。

しかし、ファンドの運用レポートを見てみると、「約3兆円(2010年当時。現在約4兆円。)ものお金を、60-70銘柄内外の集中型ポートフォリオで、上場株にのみ投資する形態で、20年以上の長期に亘ってこんなに高いリターンを出せるものなのか」と、その運用実績に驚きました。

会社に怒られそうですが、私は「これは、よくある怪しい投資ファンドか、或いは物凄く良い会社か、どちらかだな」と思いました。

そこで、会社のウェブサイトをじっくり読んでみることにしました。そして、ウェブサイトを読み終えたとき、一冊の良書を読破したあとのような満足感と高揚感に、面談を受ける返信を打ちました。

面談の日、シャーロック・ホームズの221Bを横目に見ながら、学校のあるベイカー・ストリートを出て、メリルボーン・ハイストリートを抜け、20分ほど歩いてオフィスに到着しました。そして、中に入った瞬間、「これがオフィス?」と驚嘆しました。

華美ではないものの、歴史とこだわりを感じる内装。吹き抜けのエントランスホールと二階を、赤いカーペットの階段がつないでいて、壁には荘厳な絵画が飾られています。「中世ヨーロッパの邸宅のような場所だな」と思ったら、本当に、オービス・インベストメントの創業者アラン・グレイの自宅でした。

投資アナリストたちが、口もきかずにただただ企業分析に没頭していて、オフィス内はとても静かでした。そこは、例えば、靴職人の親方とその弟子たちが、日々切磋琢磨しながら技を磨き、とにかく良い靴をつくることだけを考えて日々を過ごしているような、そんな空気感でした。

この人たちは、お金や名誉のためではなく、純粋に投資が好きで、投資家として成長し、優れた結果を出すために、日々ここに来ているのだなという感じがしました。

会議室に着くと、私にメールをくれた取締役が現れました。一通りの挨拶を済ませると、「長期投資とは、何年間のことか?」と聞かれました。「10年でしょうか」と答えると、「違う。100年だ」と一刀両断されました。

その後も、「チームワークと個人主義、どちらがいい?」などの難問が続きました。他にも印象に残っているのが、「オービス・インベストメントは、営業をしない」、「当社の株主は、100%運用職人で構成する。上場はおろか、外部には一切所有権を渡さない」、「ファンドがリターンをあげられなかったら、運用報酬は受け取らない。それで倒産するなら、かくあるべし」、「資産運用は、ビジネスマンがやってはいけない。職人がやるべきものだ」といった議論です。こうした観念については、また後日、別の記事として書きたいと思います。

かくして、「怪しい会社か、すごい会社か、見極めてやろう」という不遜な態度で望んだ面談は、今振り返っても印象深い時間になりました。約2時間にわたって、投資/資産運用について議論する中で、私は、「ここで自分はもっと成長できるかもしれない」、「(大変手前味噌ですが)この会社の観念や手法を日本に伝えれば、日本の投資/資産運用業界を変えられるかもしれない」という思いを抱きました。

しかし、このときの私は、まだ知る由もありませんでした。紆余曲折を経て実際に日本に進出するまでに6年間もかかること。面談当時は運動不足の小太りだったところから、4年後に仕事の傍らイングランドFAフットサルリーグのセレクションに合格して選手としてピッチに戻り、5年後にはFIFAワールドカップアジア最終予選に進出し、アジアベスト12に入ること。8年間経ったいま、実際に日本の投資家様に新たな価値を届けられていること...。

オービス・インベストメントに入社したことで、私が想像だにしなかったような出来事が次々と起こりました。それはまた別のお話。