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2018年09月27日 17時34分 JST | 更新 2018年09月27日 17時34分 JST

投資で儲けるためには、何に着目すればいいのか?

投資とは、対象資産の「本源的価値」を見極める作業です。

前回は、以下のクイズを出題したところで終わりました:

「1970年代にタイムスリップして、IT銘柄(当時の2大テクノロジー銘柄であるIBM及びデジタル・イクイップメント)とタバコ銘柄(当時の2大タバコ銘柄であるブリティッシュ・アメリカン・タバコとフィリップ・モリス)、どれに投資をするか?但し、株価情報は使用できないものとする。」

1970年代から目覚しい成長を遂げたIT業界と、健康問題や訴訟リスクに喘ぐタバコ業界との対比がポイントでした。

今日はまず答え合わせをしましょう。

以下に、1975年以降の株価を図示します。(1975年1月1日の株価を100として数値化。)

タバコ銘柄の株価がそれぞれ約6500倍、2000倍になったのに対し、IT銘柄は51倍と7倍にしかなっていません。前回書いた私の直感に反して、タバコ銘柄の圧倒的勝利という結果になりました。

なお、下図では、株価を対数グラフで表しています。普通のグラフでは、IT銘柄の株価がX軸とほとんど区別できなくなってしまうほど低いためです。

データストリーム

各セクターの行く末を知った上で、過去にタイムスリップして投資ポジションを組んでも、私が勝ち銘柄を言い当てられなかったのはなぜでしょうか。

理由の一つに、成長性の高いセクターが、新規参入者を誘引しがちである(即ち競争が激化する)ことが考えられます。デジタル・イクイップメントとIBMは、PCブームを予見できずに、マイクロソフトという小さな新興企業にその地位を奪われました。これとは対照的に、ローテクで訴訟リスクも高いタバコ業界においては、競合他社が次々に撤退する一方で、新規参入企業は限定的であったことから、残存者利益が大きなものになったと考えられるでしょう。

では、株式投資にあたって、どういった指標に着目するのが有効でしょうか。

いずれにせよ、正確に株価を予測するのは不可能ですが、複数の研究結果から、投資開始時点における「バリュエーション指標」とその後のリターンとの間には、一定の相関がありそうだということが示されてきました。バリュエーションとは、企業の利益や資産額に対して、その何倍で当該企業を買うか、という考え方のことです。そして、その指標には、例えば株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)などがあります。

バリュエーション指標とその後のリターンとの関係について、弊社でも独自に調査してみました。まず、過去約35年間の月次株価データを収集し、各事象ごとに、出発点の株価収益率(PER)と、その後10年間の年率換算リターンをとりました。そして、各事象を、出発点のPERを基準に、五分位に分けたのが、以下の棒グラフです。

オービス

即ち、一番左の第1の五分位には、出発点のPERが最も低かった20%の事象が入っており、当該五分位に含まれる事象の平均PERは18倍でした。(つまり、年間の純利益に対して18倍の値段をつけて株式を購入(投資)した、ということです。)逆に、最も右、第5の五分位においては、平均PERが60倍でした。それでは、各五分位ごとの、投資から10年間のリターンはどのようになったでしょうか。水色の棒グラフで示します。

オービス

投資開始時点におけるPERと、その後の株式のパフォーマンスには、負の相関が見て取れます。即ち、投資開始時点のPERが高ければその後のリターンは低くなり、PERが低ければリターンは高くなるというものです。国や経済、業界の動向を予測できたとしても、株価予測に役立つとは限らないという難点が浮き彫りになった一方で、投資入り口時点におけるPERは、少なくともこの検証結果からは、役立ちそうに見えます。

これは、「高く買うより、安く買った方が得だ」ということをいっているだけで、換言すれば当たり前のことです。ただし、忘れてはならないのが、「高い」「安い」という概念は、「価値に対して、高いか安いか」であることです。例えば、同じ鞄でも、私が手作りしたものならば100円でも高いですが、ルイ・ヴィトンなら1万円でも安いわけです。しかし、なぜか株式投資となると、「価値と価格の比較」が忘れられがちであると感じます。「良い会社」が必ずしも「良い投資対象」とは限りません。超優良企業でも、株価がその価値よりも高ければ、投資対象として魅力的とはいえないわけです。

そして、当該比較を成立させるためには、各企業ないしその事業の実力を把握し、適正な株価(これを私は株式の「本源的価値」と呼んでいます。)がいくらなのかを算出する必要があります。投資とは、投資対象資産の本源的価値を見極める作業だといっても過言ではありません。本源的価値を見極められれば、あとは価格(株価)と比較するだけです。

本源的価値の算出のためには、個別企業のビジネスがどういうもので、今後も魅力があるものなのか、他社に勝てるような差別化要因があるのか...、と理解を深めていき、その結果売上がどうなり、コストがどうなるか...と予測していきます。これを、ファンダメンタル分析と呼びます。前回私が「まず会計の知識がないと、株式投資は困難」と申し上げたのは、まさにこのポイントです。企業の本源的価値を算出するにあたって、まず会計が分からなければ、未来を予測するどころか、現状どういう売上/費用項目があるのか、これまでどういう経営をしてきた会社なのかすら把握できません。

しかし、会計の知識をプロレベルまで引き上げるのは簡単なことではありませんし、その先にある投資判断は、多くの場合更に厄介です。そこで私の場合には、自分自身で銘柄選択をするのではなく、一流の投資ファンドに任せるようにしています。ゴールドマン・サックス戦略投資部、ベイン・キャピタルで、数百社のファンダメンタル分析をさんざんやってきて、わざわざMBAまで取得して英国の投資ファンドに現地採用で入社しておいて、それでも投資を人任せにするなんて情けないことこのうえない、と揶揄されると思います。しかし、それでも私はスタンスを変えるつもりはありません。前回「私は15年近くこの業界で仕事をしてきて、投資を容易だと思ったことは一度もありません。むしろ、年々その難しさ、奥深さを痛感しています。」と書きましたが、少なくとも株式投資については、世界の一流投資ファンド(決してどこでも良いわけではありません)に任せたほうが、より効果的に資産をふやせると判断しています。そして重要なのは、投資ファンドに資産運用を任せるという行動は、読者の皆さんを含め「誰でもできる」ことです。小さい頃から投資家を志して訓練を積み、学業ではハーバードやオックスブリッジを優等で卒業し、この業界の激烈な競争を勝ち抜けてきたような人材が、あなたの資産を増やすために、昼夜を問わず働いてくれるのです。それが、本来の投資信託の妙味です。前述のような難しいファンダメンタル分析や投資判断を、自分でやらなくてもよいのです。

ただし、良いファンドもあれば、投資すべきでないファンドもあるのが現実です。

次回は、良いファンドを選別するために、私が着目しているポイントを紹介したいと思います。

注釈:本文中の見解は、筆者個人の見解であり、筆者が所属する組織の公式見解ではありません。