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2018年10月11日 10時16分 JST | 更新 2018年10月11日 10時16分 JST

投資すべき優良なファンドを選別するための着眼点とは?

投資リターンだけでなく、組織哲学にも目を向けることが重要です。

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オービス・インベストメント、ロンドン・オフィスの会議室

前回、投資ファンドにお金を預ける意義に触れました。小さい頃から投資家を志して研鑽を積み、激烈な競争を勝ち抜いてきた人材に、我々の資産を増やすため昼夜を問わず働いてもらうことができる。ただし、良いファンドもあれば、投資すべきでないファンドもあるのが現実、という話をしました。

今回は、良いファンドを選別するために私が着目しているポイントを紹介したいと思います。

大きく分けて2つあると私は考えています。

1つ目は、投資リターン創出能力で、2つ目は、資産運用会社としての組織哲学です。この2点は、互いに独立したものではなく、後者が前者を支え、その継続性を担保するという関係にあります。

前者の重要性については、説明不要だと思いますが、その評価は容易ではありません。例えば、過去のトラック・レコード(リターン実績)をみるにしても、何年前からのリターンを見ればよいのでしょうか?これは、プロの間でも意見が分かれます。私は、最低でも10年以上のトラック・レコードをみるべきだと考えています(できれば20年以上)。なぜなら、対象となる資産運用会社が、最低でも一回以上の景気サイクルをこえて、リターンを創出できる体制を維持できたかどうかを確認したいからです。例えば、今日を起点に過去10年間の環境に目を向けると、リーマン・ショック以降、株式市場は概ね右肩上がりでした。この10年間において高リターンを実現しつづけた事実は、果たして今日以降も当該資産運用会社がリターンを出しそうであるという推測の根拠になるものでしょうか?仮に、この先大きな下落相場がきたとします。上昇相場と下落相場では、フィールドが異なりますし、更に重要なのは、下落相場で困った状況になったときにどういう経営判断をする会社(経営陣)なのかも、直近10年間を観察しただけでは明らかになりません。逆境でこそ、真価が問われます。

次に、後者(資産運用会社としての組織哲学)について考えてみましょう。組織哲学に係る論点は多数ありますが、ここでは3点に絞って議論したいと思います。

まず1点目に、資産運用会社の株主構成について考えてみましょう。長期投資にあたって、株主構成が適切にコントロールされていることは大変重要だと考えています。

ITバブルの時代を例にとって考えてみましょう。

いま「ITバブルの時代に、IT銘柄への投資を避けていました」というと、「なかなかやるじゃないか」という印象になるかと思いますが、ITバブルの最中にIT銘柄を多く持たないということは、バブルの期間中、ベンチマークや競合他社に対して、大きくアンダー・パフォームするということでもあります。そして、ITバブルは1999~2000年まで約2年間続きました。2年間にも亘って大きくアンダー・パフォームし続けると、「なんだこのファンド全然ダメじゃないか」と思われてしまうケースが多いのではないでしょうか。これに対し、「今は相場がおかしいだけだ。この投資ファンドは、過去数年間大きくアンダー・パフォームしているが、引き続き優秀なファンドである。従って継続して投資する。もっと言えば、『安く買って、高く売る』ためには、こういうときこそ追加投資のチャンスだ」と判断できる方がどれだけいるでしょうか。

そして、それは投資ファンドの側も同じです。「アンダー・パフォームしている主因は、IT銘柄を持っていないことであるが、IT銘柄は割高なので買わない。株価が適正な水準に戻れば、リターンは実現できる。」と、ポジションを堅持できる資産運用会社がどれだけあるでしょうか。途中で「素晴らしい銘柄選択をしていた(IT銘柄を避けていた)投資アナリストをクビにしてしまう」、「運用資産の減少を補填するために、営業を頑張る」など、誤った経営判断をしてしまう投資ファンドも残念ながらあります。また、このとき、仮に経営陣が正しい判断をしようとしても、株主が賛同していなければ、経営陣自身がクビにされてしまうことが、問題を更に難しくしています。株主が、投資をビジネスとして捉えていたり、短期志向だったりすると、経営陣は資産運用会社として正しい判断を下すことができません。こういった背景から、株主構成が重要だと考えます。

2点目に、そもそも投資ファンドが営業チームを持つのは正しいことなのか、議論したいと思います。仮に、個人対個人の取引として考えてみましょう。皆さんが、ご友人から「自分はデイトレードをやっていて、非常にうまくいっている。あなたのお金も投資して増やしてあげる」と言われ、相当額を預けたと仮定します。なけなしの個人資産を預けた友人が、次の日も、そのまた次の日も、別の友人のところに行って、資金集めしていたら、どうでしょうか。そして、資金集めに奔走するための交通費などは、皆さんが支払った運用報酬から出ています。おそらく「何してるんだ?早く投資をしてくれよ」と思うのではないでしょうか。しかし、多く(殆ど?)の資産運用会社には、営業チームがあります。私は、投資ファンドは、「売るべきもの」ではなく、「買われるべきもの」だと考えています。

3点目として、運用報酬体系についても言及しておきたいと思います。私は、運用報酬体系は、投資ファンドのメンタリティを如実に表す鏡であると考えています。現状、一般的な運用報酬体系は、定率(運用資産額に一定の料率をかけたもの)になっていますが、私は、リターンが出ても出なくても、一定の運用報酬を受け取ることができてしまう定率の運用報酬体系は、運用会社と顧客との利益が一致していないと考えています。運用報酬体系が定率だと、運用会社のインセンティブは運用資産の拡大に置かれてしまいます。会社としての収益を拡大させる唯一の手段が、運用資産拡大になってしまうからです。投資家が必要としているのは、運用リターンです。インセンティブを運用リターン創出に置くためには、報酬を、運用リターンに連動させる必要があります。

「優良な投資ファンド」というのは、ただ投資リターンをあげているだけでなく、その背景に、緻密に練られた組織哲学がある、ということです。

第1回の記事で「資産運用はビジネスマンがやってはいけない。職人がやるべきものだ。」ということを書きましたが、それは、まさに組織哲学を確立する上で、ファンドの作り手のメンタリティが重要だからです。

ファンドを選ぶ際には、是非運用会社のメンタリティまで掘り下げて精査していただきたいと思います。そしてそれは、実際に経営陣や従業員にインタビューしなくても、例えば前述のような、株主構成や営業チームの有無、運用報酬体系などを見れば、透けて見えるものです。

注釈:本文中の見解は、筆者個人の見解であり、筆者が所属する組織の公式見解ではありません。