【地域発】100万円助成で商店は活性化するか(一井暁子)

群馬県高崎市(群馬県南西部の中核市:人口37万5千人)が今年度から始めた、「まちなか商店リニューアル助成事業補助金」が人気です。市内の商店主が店舗の改装や備品の購入を行う際に、最大100万円補助する、というもの。

今回は、地域の商店や商店街の活性化についての事例を紹介します。

群馬県高崎市(群馬県南西部の中核市:人口37万5千人)が今年度から始めた、「まちなか商店リニューアル助成事業補助金」が人気です。

市内の商店主が店舗の改装や備品の購入を行う際に、最大100万円補助する、というもの。商店や商店街の衰退は地方都市に共通する課題ですが、この補助金は、お客さんに「行ってみたい」と思わせるような店になるための条件整備として始まりました。

具体的には、改装工事(税抜20万円以上)や備品の購入(1品1万円以上、合計税抜10万円以上)に対して、1/2を補助します。1店舗1回限り。内装を変えたり、飲食店であれば、テーブルやいす、冷蔵庫などを買う例があるそうです。

事業は3年計画の予定で、まず、今年度当初予算に1億円を計上しました。5月1日から受付を開始したところ、大好評で、1週間で予算額を超過。5月末には374件、2億3千万円に達したとのこと。

すぐに6月補正予算で2億円を追加したのですが、7月10日時点で、またも予算額を超過(589件、3億5700万円)。申込は600件を超え、今年度の受付は終了しました。不足分の予算は、9月議会に補正予算として計上され、現在審議中です。

人気の原因は、何と言っても補助額でしょう。店舗の改装等に対する助成制度は全国にありますが、100万円も出すところは聞いたことがありません。

高崎市は、事前に聞き取り調査を行って商店主のニーズをつかんだ上で、施工・販売業者に対する調査から標準額を設定し、補助額を決定しています。実際に改装や購入に必要な金額を踏まえているため、制度の利用者が伸びていると考えられます。

■「地元」経済に目を向けた制度

「地元」経済の活性化のための制度であることも特徴です。

まず、対象。小売業、宿泊業、飲食業、生活関連サービス業などのお店が対象ですが、大規模店舗(床面積合計が1000m2超)や風俗店、市外に本店があるチェーン店・フランチャイズ店は、対象から除いています。

もう一つは、市内の施工業者・販売業者の利用を条件としている点です。実は、高崎市には先例がありました。平成23 年度から、住んでいる持ち家を、市内の施工業者を利用して改修・修繕する場合に、工事経費の3割(上限20万円)を助成しているのです。これも好評で、市民からも業者からも喜ばれているとのこと。この助成と同じ手法を応用したと言えます。

実際、店舗の改装工事等の総額は8億3400万円(7月10日時点)に上っているそうですから、市内経済への波及効果は小さくありません。

■課題もあります

しかし、「商店の魅力を高め、集客力の向上を図る」「商業の活性化」という本来の目的を果たすためには、これだけでは十分とは言えません。

買いたい商品や、また行きたいと思わせるサービスなど、顧客目線に立った商店主のソフト面での創意工夫がなければ、いくら外観や備品がキレイになっても、残念ながらお客さんは増えないでしょう。

ハード整備にこれだけ思い切った支援をしたのですから、ここは腰を据えて本来の成果を出すべきです。

問題は個々のお店だけではありません。これまで来なかった層にアプローチするためには、新規開店の増加や商店主の世代交代が進む必要もあるでしょう。

さらに、来店したお客さんがついでに他のお店ものぞくとか、ぶらぶらとウィンドウショッピングをして歩くなど、店同士の相乗効果から街全体の魅力創出につながっていって、はじめて商店街や商業の元気が生まれます。

例えば、集客や販売促進の専門家による顧客作り指導や経営戦略立案などで商店主を後押しする。お客さんと店、お客さんと街、あるいはお客さん同士の交流を生むしくみを考えるための場を作る。新規創業の希望者を発掘し、事業計画のチェックなど経営改善を専門家が支援する。

そういった施策を、従来通りの行政手法ではなく、民間事業者の自主的な取り組みを行政がバックアップする形で進めていき、ぜひ、真の先進事例となっていただきたいと思います。

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