【地域発】国の借金>地方の借金×5(林和弘)

さらにその前に、国の出先機関の廃止、人員整理(単に地方にそのまま移すのではなく)、県や市町村を通さずに、実態もわからず、直接現場に交付している交付金などの見直し(廃止)は、必ずやってもらわなければなりません。それが国の歳出を無駄に膨らませ、借金の元凶にもなっているのですから。

「国の借金」(国債や借入金など)の残高は、すでに、1000兆円を超えています。

財務省のHPで確認してみると、これまでの年度の推移(膨らみ具合)はこんな感じ。

一方、「地方の借金」(地方債など)の残高は、約200兆円。

総務省のHPの資料で確認すると、こういう状況です。

■ものは言いよう

国(財務省)は、よくこういう言い方をします。

「国と地方の借金の合計は、1000兆円を超えている。」

自分の借金が、地方の5倍以上だから、比較されては困るので、「合計」という説明になってしまうのでしょう。丸めてしまおうという気持ちが働くのも、無理ないかもしれません。

国民1人あたりに背負わされている額(負担額)で比較すると、国の借金分が約800万円、地方の借金分が約160万円となります。

地方の借金は、住んでいる地域(自治体)によってまちまちですが、非常に大ざっぱに言うと、都道府県分と市町村分が、1/2ずつ、というところでしょうか。

■比べてみると

本当は借金が無いに越したことはないのですが、普通の感覚で、1人あたり160万円は、とてもつらい感じです。が、800万円は、ちょっとありえない額。

4人家族なんかで換算したら、3200万円です。

一般的な住宅ローン(家と土地)借入額が、2500万円前後と言われる中、果たしてどうやって返していくのか・・・。

そして、もうひとつ、注目していただきたいのは、グラフのカーブです。

2つの棒グラフの、ここ10年分くらいを見比べてみてください。地方は、ほぼ横ばい(借金が増えていない)であるのに対し、国は、見事に右肩上がりで、順調(?)に借金を重ねているのが分かります。

これは、地方は、何だかんだ言っても行革をし、限られた財源の中で一生懸命やりくりし、財政規律を守ろうとしていることを如実に表しています。

それに引き替え、国は、危機感が全くない状況です。

「お札を刷れば、いくらでも使える。」

そう思っているとしか考えられません。

政治家(国会議員)の責任もあるでしょうが、これを放置している財務官僚は、誇りやプライドを、何か他の自己実現できるものにすり替えて、日々、職務に精励されているのでしょうね。

■もう一つの知られざる事実

地方の借金のグラフを見て下さい。右下に、平成13年度から、赤い部分が出現しています。これは、臨時財政対策債といって、借金には変わりないのですが、後年度に、100%地方交付税によって措置される(=国から地方へ交付される)ものです。

20%弱が、そういった借金です。ここだけ聞くと、

「地方は国からお金がもらえていいなあ。」

と、思われるかもしれませんが、実態はそうではありません。

本来、地方交付税として国から地方へ交付されるべきお金の原資が、国にないために、地方に、とりあえず、しかし無理やりに、借金させているものなのです。

例えば、親が子供に毎月仕送りしているとして、親が「今月、仕送りするお金が足りないから、とりあえず自分の信用(責任)で、サラ金でも何でもいいから借りておりて。」

「返済の元金分と利息分は、来月以降、月々の仕送りに、全額入れて(合算して)送るから。」

と言っているようなものです。

こういった状況が、もう何年も続いており、しかも増えているわけです。

本来は、親がどうやってでも工面すべきものを、子どもに借金させているのは、おかしいですし、ひどい状況ですよね。

しかも、国全体の交付税の総額(毎月の仕送り額)はほぼ決まっているので、借金返済用のお金がその中に入っていると言われても、実際は、他の経費(生活費分)が、少しずつ減らされているような・・・。

■今、やるべきことは

前回も書きましたが、地方交付税は、本来地方固有の財源で、一旦国が、地方に代わって徴収しているに過ぎません。

しかし、配分の権限を国が握っているために、地方は不満があっても泣き寝入りしているのです。

こういったこと一つ捉えても、地方交付税制度を含む、地方や国の税財源のあり方を、抜本的に見直す時期に来ていると言えるでしょう。

さらにその前に、国の出先機関の廃止、人員整理(単に地方にそのまま移すのではなく)、県や市町村を通さずに、実態もわからず、直接現場に交付している交付金などの見直し(廃止)は、必ずやってもらわなければなりません。それが国の歳出を無駄に膨らませ、借金の元凶にもなっているのですから。

注目記事