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2018年04月02日 11時02分 JST | 更新 2018年04月02日 11時02分 JST

ヨーロッパ人のライフスタイルを真似できるか?

忙しくない日本人と、リラックスしているように見えるヨーロッパ人。

日本人とヨーロッパ人のライフスタイル

働き方改革が叫ばれて久しいが、忙しくない日本人と、リラックスしているように見えるヨーロッパ人。よく聞かれる二項対立だが、仕事、休暇、そしてライフスタイルについて簡単に考察してみたい。

まずは在日経験のあるフランス人が書いた「日本人の休み方はフランス人には不思議だ」という記事を読んでみると面白いだろう。この記事を手短に言えば、多くのフランス人が3、4週間の「バカンス」をとることを引き合いに、日本のような詰め込み休暇がフランス人には不思議に映るという話をしている。日本人も休暇のあり方を考え直してみたらいかが、というところだ。

また日本の観光政策はフランス人のニーズに対応していないという。私は、彼女と正反対で、ヨーロッパに長年住んでいる。そのためか、同意する部分とそうでない部分があることに気づいた。そこで、彼女の体験と比較しながら考えてみることにしよう。

Tsunanori Chinatsu
Beach vacation in Sicily

Photo by Tsunanori Chinatsu
This work is licensed under a Creative Commons Attribution-ShareAlike 4.0 International License

ヨーロッパでは何日休みがあるの?

なぜフランス人はそんなにたくさん休暇がとれるのか。そう思う日本人の感覚は正しいだろう。フランスに住んだことはないが、イタリアやオランダやオーストリアでの例をとると、たいてい25日前後の有給休暇がとれる。土日をあわせれば、年5週間程度の勘定だから、夏休みに3週間、クリスマスに2週間といったまとまった休みがとれる。

日本人からすれば、「信じられない」と思うのは当然だろう。ただ、注意が必要なのは祝日は別だという点だ。祝日に関してだけ言えば(土日と重なっている場合を除くと)、2018年のオランダが9日に対し、日本では13日あり、全体的にヨーロッパより日本の方が弱冠多めだ。(注:職場・地域によって多少異なる。また、オーストリアは多めで13日。)

彼女がいうには、フランスでは、年間11日の祝日があり、有給休暇は30日だそうだ。つまり前後の土日も含めれば、年8週間程度の連続休暇がとれる計算になる(実際は二回以上に分けてとることになるだろう)。12ヶ月のうち2ヶ月は休んでいるのだから、確かに多い。

ヨーロッパに長年住んでいる私からすると、彼女の指摘するところは概ね正しいのだが、多くの反応にもあるように、日本人が単に休暇だけをフランス人の真似をすることはできないとという点において認識が少し甘い。すなわち、休暇と仕事は切っても切り離せない関係にあるということを無視しているのである。つまり、日本人の休み方が不思議なのではなくて、日本人の仕事と休暇に対する包括的なライフスタイルの概念や習慣がフランス人(あるいは多くのヨーロッパ人)には理解しかねるという指摘の方が正確だろう。

実際、多くのヨーロッパ人は、日本人は勤勉だと思っていて、彼らと違い長時間働くということを知っている。そういう話が出ると、たいてい私は日本で働くのがきついからこっちで働いているのだと冗談を言うことにしている。

また、話が少し長引くと、過労死の話もすることにしている。日本人がヨーロッパ人のようなリラックスした休暇をとりたかったら、それこそ現在日本で話題になっているような働き方改革をしなければ、いくらフランス人のライフスタイルと比べても無駄であろう。

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観光政策とバカンス

ただ、彼女は観光政策の面にも触れていて、その戦略に疑問を提示している。日本政府などが10日以内の旅行を想定しモデルコースを提案したり、JRパスなどの利便性などの点で、日本人の多くがヨーロッパの旅行者のニーズを理解していないという点には賛同する。

彼女いわく、多くのフランス人は数週間以上の長期滞在でのんびり旅行したいのだ。今後観光大国を目指すうえで、外国人旅行者の嗜好の理解をすすめ、実際のニーズにあった開拓していく必要はありそうだ。

しかし、である。2週間以上の休暇に関して言えば、そもそもプランを提案する必要があるかが疑問である。その位の長さを旅する旅行者は、自由に旅行したいのであって、誰かが提案するかもしれない「行き当たりばったりのためのプラン」を参考にしようとするほうがよほど変だと思う。

どちらかといえば、トップダウンの観光戦略よりも、ボトムアップという面で、ホテルや民泊、レストランやコンビニ、交通機関、観光センター、イベント・体験型サービスなど個々のサービス業者に改善の余地がありそうだ。

例えば、長期滞在用の各種料金設定や、団体の観光バスツアーではできないような、地元民の暮らしが体験できたり、Meetupのような地元民ネットワークのイベントなどで、市民と交流できるような企画が考えられよう。また、ボランティアやワーキングホリデー、短期留学や市民大学、農業や漁業などのアグリ・ツアリズムなどと組み合わせたプランならば、参加者も増えるかもしれない。

一方、今やインターネットとソーシャル・ネットワークの時代である。ヨーロッパの旅行者は口コミやインターネットを駆使し、日本の情報を非常によく知っている。政府が薦める従来型の標準プランではニーズはカバーしきれないのは当然だ。概してガイドブックに載っていないところに行く方が意外性があって面白いものだ。

また、ヨーロッパ人は日本人よりも興味があるものとないものがはっきりしていると思う。全体的に満遍なく主要観光地を訪れるという観光客も多いが、特殊な興味やニーズがある人々はそれに絞って行動することも多い。例えば、初めての日本旅行で京都には行かずに、北海道にスキーだけに行く人もいるのだ。

Perfect Zero https://flic.kr/p/CYRpmg
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モデルコースなどは参考にしたければ見て、必要ない人は見ない。それだけで、よいのだと思う。事実ヨーロッパの主要観光地にだって、はとバスツアーのような典型的なモデルツアーがたくさんある。

有名なロンドンの二階建て観光バスはヨーロッパ中(それこそパリにも)に見られるし、都市近郊の名所を巡る一日バスツアーもヨーロッパ人観光客も含めて混雑している。彼女のいうような多様なニーズは個人個人にまかせた方がいい。

話はそれるが、この点をあえて少しだけ掘り下げよう。日本全国であれ、小さな地域であれ、モデルコースは観光客を誘導する効果がある。これは交通管理(渋滞の緩和も含めて)や観光管理には役に立つ。

観光客が閑静な住宅街に進入しないようにしたり、観光に対する警備や交通などの整備範囲を管理しやすいし、都市計画など副次的効果はいろいろあると思われる。「モデルコースなんてニーズに合っていないからいらない」。そうは単純ではないだろう。

第二回に続く