【新国立競技場見直し】数百億円の削減でごまかすな!「巨大化」をあきらめ、住民の暮らしと景観を守れ!

「工費が2520億円もかかるのは高すぎる」と世論の猛反発を受けた新国立競技場が、計画見直しに向けて動き出しました。

「工費が2520億円もかかるのは高すぎる」と世論の猛反発を受けた新国立競技場が、計画見直しに向けて動き出しました。

このタイミングで見直しの方針が示された背景には、安保法制の衆議院強行採決による政権へのダメージを最小限に抑えたいという安倍政権の政治的な意図があることは明白ですが、新国立競技場の計画に反対を続けてきた多くの建築家や市民の運動が世論を動かし、政府も無視できなくなったという事実は踏まえておきたいと思います。

ただ報道によると、見直し案は「工費を数百億円減らす」程度のものになりそうです。これでは過去のオリンピック競技場と比較しても、コストははるかに高く、「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」などが指摘してきた景観の問題も解消されません。

現行案の最大の問題は、競技場の規模が高さ、広さともに巨大なところにあります。その高さは歴史的な景観を台無しにし、その広さは長年暮らしている地域住民の住まいを奪い去ります。

私は国立競技場を建て替えるにあたって、一番に聴くべきは地域住民の声ではないかと指摘してきました。特に、競技場に隣接する都営霞ヶ丘アパートの住民が競技場の巨大化に伴い、立ち退きを強いられていることを問題視してきました。

「歩行者の滞留空間となるオープンスペース」と位置付けられている「A-3地区」に都営霞ヶ丘アパートがある。

今年6月22日、都営霞ヶ丘アパートの住民の有志は上智大学の稲葉奈々子教授とともに都庁で記者会見を開き、都営団地の存続を訴えました。稲葉奈々子研究室による住民アンケートでも、高齢者の多い住民が移転を望んでいないことは明らかです。

政府が本当に「見直し」を進めるのなら、こうした住民の声を受け止め、競技場を「巨大化」させるという前提から見直すべきです。

マスメディアも、小手先の「見直し」にごまかされず、「巨大な競技場が本当に必要なのか」という本質的な議論を展開していってほしいと願っています。

(2015年7月17日「稲葉剛公式サイト」より転載)

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