ガザの若き起業家支援:日本の民間専門家によるビジネスコンテスト「ガザ・イノベーション・チャレンジ」優勝チームをUNRWAも祝福

ビジネスコンテストの優勝チーム「Green Cake」の起業アイデアは,環境にやさしく,低コストの新しい建設用ブロックの開発です。

8月10日と11日,ガザ地区のハン・ユニスにある国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職業訓練校において,ガザの若き起業家向けのビジネスコンテスト「ガザ・イノベーション・チャレンジ」が開催され,優勝チームと準優勝チームの2組がクラウドファンディングで集める賞金5千ドルと,起業アイデア実現に向けた日本人民間専門家からの今後の技術支援を獲得しました。

2050年の明るい未来のガザに向かって,どのような起業アイデアが有効なのか,ガザの若き起業家に加え,日本人の民間専門家や社会起業家,また,UNRWAの社会起業プロジェクト「GGateway」のほか,ガザで活動する起業支援団体も議論に加わり,白熱した議論が交わされました。

今回のコンテストのテーマは,将来の生計向上につながること。予選を通過したチームから,保健衛生,栄養改善,水管理,農業,教育,工業など,さまざまな起業アイデアが発表されました。

ビジネスコンテストの優勝チーム「Green Cake」の起業アイデアは,環境にやさしく,低コストの新しい建設用ブロックの開発です。従来の建設用ブロックに比べ,25%の経費削減が見込めるブロックは,さまざまな特徴があります。チームリーダーのマジド・マシュハラウィさん(22歳,土木技師,写真下)は「今回のビジネスコンテストを通じて,多くのイノベーション・アイデアを得ることができ,本当にすばらしいプログラムでした。」と感謝しました。

準優勝チーム「Sketch Engineering」の起業アイデアは,階段で重い荷物や車イスを運ぶためのキャリアー「Stair Climbing Lifter」のデザインと開発です。チームリーダーのアマル・アブ・モエリックさんは「他のチームのアイデアもとてもすばらしく,自分たちが準優勝を受賞できるとは思わなかった。」と他チームのアイデアをたたえました。

ビジネスコンテストで審査員をつとめた米倉誠一郎一橋大教授は,最終審査に残った5チームの起業アイデアを称賛するとともに,参加チームの積極的な参加により自分も含めた参加者全員が多くの気づきを得られたこととに感謝し,今後の起業アイデアの実現に向けた支援に意気込みを語りました。

審査員として参加した清田(せいた)明宏UNRWA保健局長は「人々の生計を支える事は,人道支援の中でも非常に大事だと思います。保健の分野でも,社会全体が健康になって初めて人々は健康になる,と感じています。もちろん,人道支援はガザを含めパレスチナ難民支援に非常に大事ですが,今回のビジネスコンテストのような,生計向上支援を如何に行っていけるかが,とても重要なことだと思います。」と今回のビジネスコンテストの意義と重要性を訴えました。

UNWRAは,さまざまな活動を通じて,ガザ地区の差し迫った社会経済状況が作り出す厳しい状況を克服するための,ガザの若い起業家を支援・激励しています。2016年6月,ガザ封鎖から10年目に入りました。繰り返される武力紛争は経済状況を悪化させ,多くの貧困・失業者が発生しています。2015年,パレスチナ統計局によれば,若者全体の失業率は61%を示し,女性の場合には,78.5%と非常に高い失業率を示しており,懸念されています。

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