女子が教育を受ける権利-熱意を行動へ

そう、2人に共通しているのは教育への情熱です。

マララ・ユースフザイ(2014年ノーベル平和賞受賞者。マララ基金共同創設者。)、ジム・ヨン・キム(世界銀行グループ総裁)

18歳の学生と世界最大の開発機関の総裁。この2人に、一体どんな共通点があるのでしょうか。韓国の「Yeolsimhi gongbu hay」(情熱を持って勉強しなさい)という表現を好んで使う総裁と、世界中の少女達に、情熱を持って発言し教育を受ける権利を主張するよう強く勧めるマララさん。そう、2人に共通しているのは教育への情熱です。とりわけ、女子が教育を受ける権利についてです。なぜならそれは、平等の権利と極度の貧困撲滅を達成するための最も確かな方法だからです。ただし、この意欲的な目標を実現するためには、行動が伴わなければなりません。

9月に国連の場で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の中では、2030年までにすべての少年少女が公平で質の高い初等・中等教育を無料で受けられるようにする事が掲げられています(目標4)。これは幸先の良い第一歩と言えるでしょう。普遍的初等教育の達成を謳ったミレニアム開発目標と比べても、大きな前進です。しかし、いくら目標を掲げても、達成しなければ意味がありません。

すべての女子が、安全かつ質の高い初等・中等教育を12年間無料で受ける権利を求める嘆願書には、100万人近い署名が集まりました。今週公開された新ドキュメンタリー映画「わたしはマララ」をご覧になる方も多いでしょう。この映画を通じて、数百万人もの少女が教育を受ける権利を奪われているという事実に多くの人が思いを寄せる事を期待します。今も世界中いたるところで、兄や弟のように学校に通えない女子や、児童婚から逃れる事ができない女子、勉強したいと望んだがために暴力やいやがらせを受ける女子がいるのです。

この10年間で、女子の就学率には目覚ましい進歩が見られました。とは言え、途上国では、中等教育年齢でありながら学校教育を受けられないでいる女子が3,200万人もいます。農村部に住む最貧困層の女子の場合、状況はさらに深刻です。南アジアと西アジアの農村では、最貧困層の女子で前期中等教育を修了している割合はわずか13%にすぎません。これが後期中等教育になると、多くの国でその数はあまりに少なく、就学数を把握する事さえ難しくなります。

質の高い中等教育を受ける事ができた女子は、自信をはぐくみ、技能を身につける事ができます。そして、その事が社会にもたらす影響は計り知れません。女子の教育には、国ばかりか次の世代まで変える大きな力を秘めています。教育を受けた女性の場合、出産年齢が高く、出産する子供の数も少ないという傾向が見られます。教育水準の高い女性達は所得が高く、その子供たちは男女を問わず健康状態が良く、教養を身につけています。韓国は文字通り、教育の力で貧困を脱却し、戦争の傷跡から立ち直る事ができました。

女子の教育について権利を主張すると言っても、初等教育から中等教育へ進学できさえすれば良いという訳ではありません。もちろん、それ自体大きな進歩です。しかし、十分ではありません。この記事の読者の中には、我が子が基礎教育さえ受けられればそれで十分だと思う人も多くいるでしょう。しかしSDGsの達成期限である2030年には、それだけでは間違いなく不十分です。12年間の教育を、全ての国で全ての子供たちが当然の事として受けられる世の中にしなくてはなりません。SDGsは、全ての子供が初等・中等教育の両方を受けるだけでなく、「質の高い」教育を確保する事を目指しています。残念ながら、多くの国にとってこれは極めて高いハードルです。数年間の学校教育を受けても、読み書きのできない子供は2億5,000万人以上います。学ぶものがなければ、多くの障害を乗り越えてまで女子が学校に通う事の意味が失われてしまいます。

何よりもまず、途上国の教育分野における膨大な資金不足を解消するための財源の確保が必要です。そのためには、ドナー国と途上国政府の双方がそれぞれの役割を果たし、資金を教育分野に振り分け、国内の教育制度に充てる予算の拡大に取り組む事が求められます。

もう一つ、大きく欠けているのがデータです。マララは、「女子の教育は我々の将来に大きな意味を持ちます。そのためには、女子教育の現状をしっかりと把握することが大切です」と言います。これを世界銀行の言葉で言い換えると分散したデータの集積という事になりますが、どちらも実質的には同じ事を意味します。12年生になるまでの女子の進捗を男児とは別にモニター・測定する事で、各国政府は女子のニーズにあった適切な計画を策定する事ができるのです。

では、どうやって進歩を加速させればいいのでしょうか。世界銀行グループなどの国際的パートナーは、知識、資金、技術協力を提供する事ができます。一方、マララ基金などのNGOは、学校に資金を提供し、政府やドナーにさらなる働きかけを促し、女子が自国内で権利を主張できるよう支援します。各国政府の指導者たちは、自国の義務教育制度を強化し、全ての生徒に質の高い教育を提供するための投資を拡大しなければなりません。貧しい国の少女も、豊かな国の少女と同じように学べる機会を得られるようにするためです。

我々は、初等・中等教育の機会が、世界中の全ての女子に当然の事として与えらえる日を目指しています。どこに住んでいるかに左右されるべきではありません。あらゆる事を行う覚悟はできています。今こそ、熱意を行動に移す時です。

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