- ラテンアメリカ・カリブ海地域の今年の平均成長率は0.8%に低下
- 構造改革を導入しない限り今後も低成長に
- 教訓を基に国内貯蓄を重視
中国の成長ペースが鈍化し、一次産品価格が低迷する中、ラテンアメリカ・カリブ海地域は、「新たな常態(ニューノーマル)」に適応する必要があるだろう。同地域のGDP平均成長率は、2011年以降、一貫して大幅に減速しており、今年はわずか0.8%になると予測される。成長を後押しする意欲的な構造改革を導入しない限り、今後も低水準にとどまる恐れがある。また、成長の促進に向けた鍵である貯蓄拡大も、財政・金融政策の余地を再び広げるのに役立つだろう。
世界銀行が半期に一度発表する経済報告の最新版「ラテンアメリカ:成長への道は険しく-景気低迷とマクロ経済の課題」は、同地域が4年連続の低成長になると予測し、成長促進に向けた堅固な改革が導入されない限り、2000年代に見られたような力強い成長を再び取り戻す可能性は低いと結論付けている。
同報告は、ラテンアメリカ・カリブ海地域が、すべての途上地域の中で最も減速するとしている。これは、域内の一次産品輸出国に対する投資が極端に落ち込み、その影響が増幅されるからである。
このように厳しい外的環境の中でも、ラテンアメリカ各国の政策担当者には、景気を刺激するための様々な政策オプションがある。東カリブ諸国の一次産品輸入国は、一次産品価格の低下や米国の景気回復を背景に先行きはまだ明るいだろう。他方、一次産品輸出国の中でも為替レートに柔軟性がない国は、より大きな困難に直面するだろう。「新たな常態」に移行するために、支出の総額を大幅に抑える必要があるからだ。
現在、ラテンアメリカの貯蓄率は、アジアに比べて約10%ポイント低い。同報告は、貯蓄率を改善すれば、財政・金融政策の両方の余地が拡大すると指摘する。さらに貯蓄は、実質為替レートを通貨安に導き、外貨預金への依存度を減らす事によって成長を促進する。通貨安は外的競争力を高め、外貨依存度の低下は資本コストを下げるため、共に成長の持続可能性を高める事につながる。貯蓄が多く、為替レートの競争力が高い国は、輸出が増え、成長が加速する事は実証済みである。
国別概況など詳細は、プレスリリースをご覧ください。
【関連リンク】
- 「ラテンアメリカ:成長への道は険しく-景気低迷とマクロ経済の課題」
- ラテンアメリカ・カリブ海地域概要
- 動画「ラテンアメリカ:失われた成長を求めて」(英語、スペイン語)アウグスト・デラ・トーレ世界銀行ラテンアメリカ・カリブ海地域総局チーフエコノミストによる概要説明