■世界一高い成長率を誇る南アジア原油安を生かしてさらなるエネルギー価格見直しを
南アジア地域の経済成長率は、インドの好調な経済成長に、原油安も加わり加速するだろう。同地域は、域内全ての国が石油の純輸入国であり、原油安から受ける恩恵が世界でも特に大きい。世界銀行が半期に一度発表する「南アジア経済報告」は、南アジア地域が2014年第4四半期時点で既に世界で一番急速に成長する地域となった、と指摘している。
同報告は、南アジア地域の成長率は、活発な消費と投資が今後も拡大する事から、2015年は7%、さらに2017年までには7.6%まで着実に伸び続けるだろうと予測する。同地域の国内総生産(GDP)にはインドの動向が大きく影響するため、一連の予測は、事業拡大を促進する改革や投資家心理の改善によりインドで予想される成長加速を反映したものとなっている。
域内の各産油国における原油安の国内価格への影響は、各国で様々である。例えば原油安による価格変動率(パススルー率)は、パキスタンではほとんどの石油製品で50%を上回ったが、バングラデシュでは影響は見られなかった。
原油安は、食糧価格の下降と相まって、インフレ率の大幅な低下にも貢献している。南アジアはかつて、途上地域の中でもインフレ率が一番高かったが、わずか1年も経たない内に最も低い水準となった。2013年3月には前年比7.3%であった消費者物価指数(CPI)の上昇率も、2015年3月は1.4%であった。
同地域の外的ショックに対する脆弱性は緩和している、と同報告は指摘する。例えば、ほとんどの国で、経常収支が回復している。インドへの資本流入は、対GDP比1.9%から3.4%へと上昇したが、現在はより変動性の高い投資勘定が全体の中で大きな割合を占めている。外貨準備は、既に危険水域を脱したパキスタンを含め、域内全域で蓄えられている。
しかし、同地域の輸出実績は思わしくない。昨年は期待が持てそうな回復を見せたが、現在は減速しつつある。2014年末には、輸出高の伸びが地域全体でゼロに近かった。
同報告はまた、インドが既に、今回の原油安を財政赤字解消のための政策とは切り離し、化石燃料使用の負の要因に対応するために炭素税導入という決断を下した事を紹介している。今後の課題は、中期的には大いに起こり得る原油価格上昇の際にも、この方針から逸脱しない事だ。
詳細、各国の概況は、プレスリリースをご覧ください。
【関連リンク】
- 「南アジア経済報告」
世界銀行が同地域の経済を包括的にまとめた報告。半年に一度発表され、解禁後はウェブサイト上で無料でダウンロードいただけます。
- 南アジア地域概要