バルサ元会長ラポルタの告白「カタルーニャは尊厳のために独立を願い、バルサはその感情を表現してきた"クラブ以上の存在"」

なぜカタルーニャの人々が独立を願うのか。

「大阪内閣成立!」、今から15年ほど前に製粉メーカーが流していたCMだ。吉本新喜劇の芸人が登場し、「お好み食べて高度成長!」「1日3回ギャグを言え!」などと訴える。これ自体はユニークで、当時私も面白がって見ていたのを覚えている。

日本において、関西独立なんてあり得ない話だ。しかし、あくまでたとえ話として、東京を中心とする関東地区から関西が迫害されていたとしたら。独自の文化を持つのは危険だと言われ、岸和田だんじり祭は中止。関西弁の使用は禁止され、喋ることができるのは警察の警備が及ばないガンバ大阪のスタジアム内だけ。そして、街中で関西弁を喋っていると最悪の場合、射殺される。そんな背景があれば、きっと"独立"という言葉に関して抱く印象もかなり変わって来るだろう。

■なぜカタルーニャは独立を望むのか

想像もできない話だが、今から約75年~40年前、スペインのバルセロナを中心としたカタルーニャとマドリードのスペイン中央政府は、そんな関係にあった。クーデターを起こして全権を掌握した独裁者フランコが、独裁時代(1939年~75年)に最も力を入れたのが、バルセロナのあるカタルーニャ地方とバスク地方の弾圧だったのである。

それ以降ずっと、カタルーニャにはスペインからの独立を望む声が絶えない。今年行われた州議会選挙では、独立派の政党が過半数の議席を確保。18カ月以内に独立手続きを進めるというニュースが流れ、カタルーニャ国設立の気運が高まった。実際は、スペイン政府が断固阻止の姿勢を示し、EU(欧州連合)から認められる見込みも薄く、まだ現実味はない。しかし、独立派の勢力は根強く存在する。それはサッカーでも例外ではないのだ。

バルセロナの元会長で、ロナウジーニョをチームに引き入れて黄金期を作り出したラポルタ会長も、独立を推進するひとりだ。本来は弁護士で、スタジアム内に広告スペースを増やしてクラブ財源を確保するなど、ビジネスセンスにも長けている。なぜカタルーニャの人々が独立を願うのか、その問いにラポルタはこう答える。

「根本となっているのは、尊厳(我々の誇り)のためだ。それと我々の子孫の進歩と繁栄を図るためでもある」。

■カタルーニャの人々にとってバルサとは?

同じく、サッカーにおけるスペイン2大クラブの対戦、レアル・マドリードとバルセロナの"伝統の一戦クラシコ"は、この中央政権vsカタルーニャの代理戦争にも位置付けられ、その尊厳をかけて戦う一戦として世界から注目を集めている。

カタルーニャの人々にとってバルサの存在とはどんなものなのか。幼少時代からファンとしてチームを見守り、大人になってからは頂点でクラブ経営を行っていたラポルタは語る。

「バルサとそのスタジアム内は、カタルーニャの人々が自分たちの感情を表現できるフォーラムとしての場所になっている。民主的であり、カタルーニャの人々にとって、それはつねに"クラブ以上の存在"だった。なぜならチームは、カタルーニャの人々の感情、権利を表現してきたからだ。それは困難な時(弾圧されていたとき)でさえも、そうあってきた」。

カタルーニャ同様に独自の道を進むバルサ。その哲学は他とも一線を隔している。

「バルセロナの哲学はヨハン・クライフが植え付けたものだ。試合をコントロールして、パスサッカーをして、相手がボールをとったら、直ぐにプレスをかけて奪い返す。攻撃的なサッカーであり、1対0で勝つよりも6対5で勝利する方を望む。しかもスペクタクルなサッカーをして勝利するものだ。バルサのサッカースタイルはアルテ(芸術)なんだよ」。

バルセロナ、ひいてはカタルーニャの人々の心を突き動かす"尊厳"。その力は国をも動かし、宿命のライバルであるレアル・マドリードに対して最大限の力を引き出す。今ではクラシコも、スペイン代表で両チームの選手が共に戦っていることもあり、過去ほど憎しみの感情むき出しの試合ではなくなった。それでも、命をかけるほどのプライドがぶつかりあう試合に変わりはない。

カタルーニャ独立と同じように、クラシコも結末のつかない戦いを続けている。113年間ほぼ互角という、どちらも譲らない戦い。そのサッカーの枠を越えた激戦が、今週末キックオフされる。

文/守本和宏

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現地解説/野口幸司

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