2015年10月15日、WWFは2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会を、持続可能な社会の実現に向けた「変革の契機」とするよう求める提言を発表しました。現在、人類は地球1個分の生産力を超える規模で消費活動を続け、それが世界の生物多様性を損なう大きな原因になっています。その中で、「地球1個分のオリンピック」を実現し、さらに地球1個分での暮らしを人類共通の「一つの未来」として東京大会のレガシーとすることで、受け継いでいくよう提案したものです。
オリンピック大会を変革の契機に
この提言は、WWFが2015年10月6日に、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会街づくり・持続可能性委員会」に提出した、大会の持続可能性に関する提言の内容をふまえたものです。
提言の中でWWFは、現在、人類が地球1個分の生産力を超える規模で消費活動を続け、地球の生物多様性を大きく損なう原因になっていることを指摘。
2012年のロンドン大会招致の際に初めてWWFが「ワン・プラネット・オリンピック(地球1個分のオリンピック)」というコンセプトを掲げたことを紹介しました。
この提言は実際に大会で採用されロンドン大会の主要テーマとなった経緯があります。
また、2016年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック組織委員会も、大会の会場で供給されるすべての水産物(シーフード)を、環境に配慮して生産されたMSC(海洋管理協議会)・ASC(水産養殖管理協議会)認証製品とする趣旨の覚え書きを関係団体と締結。
各大会の環境配慮に対する意識とそのメッセージは、確実に高まりつつあります。
そうした流れの中で開催される東京でのオリンピックは、WWFは今回、これまでと同じレベルで環境に配慮したものとするだけでなく、未来に向けて社会を変革させる、大きな機会とすべきことを訴えました。
そしてWWFは、その新たなキャッチフレーズとして「One Planet, One Future 一つの地球、一つの未来」を提言しました。
東京大会に向けたWWFの提言「One Planet, One Future 一つの地球、一つの未来」
このキャッチフレーズを実現するために、WWFが示した、2020年の東京大会に向けて取り組むべき大きな2つのテーマと具体的なプロジェクト取り組み例は、次の通りです。
低炭素型社会の実現
東京大会を、日本が誇る世界最高水準の省エネルギーと、福島第一原発事故を経た国の経験を踏まえ、再生可能エネルギー中心の低炭素型の大会を実現すること。
オリンピックを契機に、日本に低炭素型のライフスタイルを浸透させる大会とすること。
プロジェクト例
- 世界最高水準の省エネルギーの実現によるCO2削減
- 再生可能エネルギーの最大限の活用:消費電力に占める再エネ目標を置くこと(その際には新規再エネ施設からの電力を優先)
- 大会関連車両に燃料電池車や電気自動車などを使用。水素スタンドなどの関連施設の整備。
責任ある調達の根付いた社会の実現
大会に関わる全ての調達を行なう組織およびその納入者は、かけがえのない生物多様性の保全と持続可能な利用のために、森林・海洋などの生物多様性、そして人権や地域住民の生活に配慮したよりよい生産による原材料や製品を使用すること。また調達した原材料や製品の情報を公開し透明性を確保すること。
プロジェクト例
森林・海洋生態系に重大な影響を与えている木材・紙、パーム油、水産物の持続可能な調達について、実効性が高く経済的な手段として、信頼できる下記の認証制度などによる産品を活用する。
- FSC®(木材、紙)、MSC(天然水産物)、ASC(養殖水産物)、RSPO(パーム油)
こうした取り組みの実現には、大会前からの十分な準備が必要です。
そして大会期間中のみならず、大会後も持続可能な「地球1個分の暮らし」が日本の社会全体に広がっていく効果も期待できる上、IOC(国際オリンピック委員会)が主催する国の組織委員会に求めている「オリンピック・レガシー」となるものでもあります。
安全で文化的な都市であることを世界に認められた東京で、「地球1個分のオリンピック」を実現し、「一つの未来をめざす」こと。
それは、地球の再生産力の範囲内に収めながらで人類が持続可能な消費を行ない、なおかつ快適な暮らしをおくることが可能である、ということを伝える、日本から世界へのメッセージです。
WWFは2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会が、そのための貴重な機会となることを期待しています。