「持続可能な森林管理方針」はどこへ?皆伐続けるAPRIL社

2005年にも同社は「保護価値の高い森林」を保護するとう内容の方針を発表しましたが、実際には方針が守られていないことが問題視され続けてきました。
WWF JAPAN

インドネシアを中心に、大規模な熱帯林の破壊を伴う方法で、紙の原料調達を行なってきた製紙メーカーAPRIL社。その操業のあり方は、同じくインドネシアでの原料調達が問題視されているAPP社と同様、長い間にわたって、国際的な批判の対象となってきました。こうした批判を受け、同社は2014年1月28日、新たな「持続可能な森林管理方針」を発表。しかしその4カ月後、APRIL社に原料を供給する伐採企業が、保全対象である自然林の皆伐を行なっていることが確認され、「方針」が書面上のものであることを懸念する声がますます強まっています。

高まる批判を受けて

東南アジアのスマトラ島やボルネオ島で、紙の原料調達を行なっている製紙メーカーAPRIL社は、1993年の操業開始以来、大規模な熱帯林破壊を続けてきたことから、長期にわたって世界の企業やNGOの批判を受けてきました。

2013年8月には、国際的な森林認証制度で知られるFSC(Forest Stewardship Council)が、APRIL社とその関連企業に対して、アソシエーションポリシーの適用を発表。同社に対し、会社単位でFSC認証のを一切許可しないことを明らかにしました。

このアソシエーションポリシーは、企業単位で評価すれば破壊的な林業や社会紛争などの問題に関わる事業者が、ごく一部の森林区画や工場などでFSC認証を取得することにより、まるで操業全体が環境や社会に配慮しているかのように見えるのを防ぐものです。

また、2014年1月には、APRIL社もメンバーとして参加するWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)も、同社の操業に対して見解を発表し、指摘されているさまざまな問題について、改善するよう要求しました。

こうした圧力が強まる中、2014年1月28日に、APRIL社は新しい「持続可能な森林管理方針」を発表。

そこには、同社が所有する植林地と同等の面積の森林を保全するという、先駆的で評価できる内容が含まれている一方、2019年まで自然の熱帯林に由来する原料を使い続けることなども盛り込まれています。

WWFは、こうした点が新方針の抜け道になる可能性を排除するため、2014年内に調達する全ての原料を植林木にするよう、APRIL社に対して求めていました。

またも反故にされた「約束」

加えて、APRIL社には、同じくインドネシアで原料調達を行なう製紙メーカーAPP社と同様、「持続可能な操業」を掲げる立派な方針を発表しても、それを守ってこなかった歴史があります。

2005年にも同社は「保護価値の高い森林」を保護するとう内容の方針を発表しましたが、実際には方針が守られていないことが問題視され続けてきました。

このため、WWFは、今回の新方針発表の直後にも「方針が単なる書面上の誓約ではなく、現場において確実に実行されていることが認められない限り、APRIL社が「責任ある企業」への革新を遂げたとはいえない」との見解を発表していました。

そして、その懸念は現実のものとなります。

新方針の発表から約4カ月後の2014年5月、カリマンタン(ボルネオ島のインドネシア領)において、APRIL社に原料を供給する伐採事業者が、法的な保護対象であるはずの泥炭地の自然林の皆伐を継続していたことが確認されたのです。

さらに、APRIL社の実施した「保護価値の高さ」を測る調査の結果、「保護価値が高い」ため保全すべきと評価されたわずかな自然林でも、皆伐を行なっていることがわかりました。

これは、WWFインドネシアをはじめとする現地のNGOの調査により明らかになったもので、APRIL社が自社の約束した新しい方針に、早くも反した行動を取っていることを示すものです。

「方針」の改善、そして実施を求めて

WWFインドネシアの森林担当シャライニは、こうしたAPRIL社の行為に対し、次のように述べています。

「明らかになった事実により、 APRIL社が持続可能な森林の利用について誓約したことを、真摯に実行していないことが確認されました。私たちは、彼らの掲げる『持続可能な森林管理方針』を、一層疑問視せざるを得ません」

この事態を受け、ボルネオで活動するNGOのGAPETAボルネオやWWFインドネシアなどのカリマンタン地域で森林のモニタリング調査に取り組むNGOの連合体「RPHK」は、APRIL社に対し「持続可能な森林管理方針」の改善と遵守の徹底を再度強く要請。

さらに、APRIL社とその企業グループであるロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループとの取引のある企業に対し、同社が新方針を改善し、信頼に値する独立した第三者の監査によって、方針の実施が確認されるまでは、取引を控えるよう求めました。

WWFでは今後も、現地のNGOと協働しながら、APRIL社と関連会社の操業を調査し、同社の顧客である各企業をはじめとする、さまざまな関係者に対し、情報の提供を継続していきます。

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