2014年の秋、日本各地でクマの大量出没の発生が懸念されています。その要因の一つとして注目されているのが、堅果類(ドングリなど)の実りの状況です。WWFジャパンでは、堅果類の豊凶調査を実施した先進的な都道府県の情報を中心に、各都道府県の関連情報をまとめました。
クマの大量出没について
クマは例年、生息地である奥山に食物が少なくなる夏になると、ある程度の頻度で人里へ出没しますが、ドングリなどが奥山で実る秋になると、そうした行動は収まります。
しかし年によっては、奥山の実りが不足することがあり、平常の数倍のクマが出没することがあります。これがクマの大量出没といわれる現象で、社会的な問題となっています。
特に近年、本州では2004年、2006年、2010年に、全国的な大量出没が起こっています。その結果、クマによる農業被害や人身被害が多発。また、被害防止のため多くのクマが捕獲されました。
こうした大量出没の原因は、クマの問題である食糧不足のみとは限りません。
過疎化が進む中山間地域の社会・経済問題や、狩猟者の減少など、人間の側の問題もその要因の一つです。
クマの大量出没は、これら複数の要素が重なって、起きると考えられています。
大量出没の予測について
とはいえ、その年のクマの大量出没に直接的な影響を与えていると考えられているのは、やはり奥山の食糧不足です。
クマは冬眠に向け、秋になるとブナ・ナラ類などの実をたくさん食べますが、それらの木々がどのくらい実をつけるかは年によってさまざまで、ほとんど実をつけない年もあります。
そこで、クマが秋の食物として依存している木々の実りを調べることで、ある程度、その秋のクマの出没傾向を予測することができます。
出没予測の指標となる樹種は、地域によって異なりますが、主にブナ、ミズナラ、コナラなど堅果類(かたい皮や殻に包まれた果実や種子)が挙げられます。
これらの「木々の実り調査(堅果類の豊凶調査)」は、都道府県単位で行なわれていますが、現在のところ、すべての都道府県が実施しているわけではなく、一部の先進的な自治体に限られています。
WWFジャパンによるまとめ
事前にクマの出没を予測し、それに備えることで、クマとのトラブルを減らそうという取り組みは、とても意義があることだと考えます。
今後はより多くの都道府県でより精度の高い調査が行なわれるようになると共に、調査の結果が広く告知され、多くの人に認知されることが望まれます。
そこで、WWFジャパンでは、2014年秋に堅果類の豊凶調査を実施した都道府県が、公開している結果を取りまとめました。
また、一部の都道府県が取り組んでいる堅果類の豊凶調査の他に、多くの地方自治体が注意喚起のために出しているクマの目撃・出没情報などについても収集しています。
予めこうした情報と意識を持ち、行動することは、実際にクマの出没が起きた時に発生する被害を減らし、さらに被害を防ぐために行われるクマの捕獲を減らすことにもなります。
WWFではぜひ、お住まいの地域やお出かけを予定されている地域の情報をご確認いただき、クマとの不要なトラブルを避ける一助としていただきたいと考えています。
それは「クマとの共存」を考える上で、とても大切なことです。
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クマの分布図
環境省(2004)による分布確認地点を水色で、その後の分布拡大エリアを赤色で示している。
- ※注意:日本クマネットワークが独自に行なったこの事業では分布周縁部に着目し、生息地内部の情報までは収集することができなかったため、分布の縮小に関しては言及していない。なお、生息数やその増減についても言及していないことに注意が必要である。