イベリアオオヤマネコの個体数増加を確認

世界のネコ科の野生動物で、最も個体数が少ないイベリアオオヤマネコが、近年増加の傾向にあることが分かりました。

世界のネコ科の野生動物で、最も個体数が少ないイベリアオオヤマネコが、近年増加の傾向にあることが分かりました。2016年4月4日に発表された最新の報告書によれば、その推定個体数は404頭。2014年の327頭を大きく上回っています。WWFスペインでは長年この保護に取り組んできましたが、交通事故や、主食であるアナウサギの減少による脅威は今も大きく、今後もアナウサギや生息環境の保全を視野に入れた活動の継続が求められています。

イベリアオオヤマネコが404頭に

今回発表されたイベリアオオヤマネコ(スペインオオヤマネコ)の調査報告は、アンダルシア政府によるもので、2014年の327頭から404頭に増加した結果を示すものとなりました。

ここには、生殖可能な120頭のメスの個体数も含まれています。

2002年に52頭(成獣のみ)とされ、まさに絶滅寸前の危機にあったイベリアオオヤマネコが、保護活動により確実な回復を遂げつつあることを物語るものです。

イベリアオオヤマネコは、かつてイベリア半島に広く分布していましたが、1940年代以降、生息環境の低木林の伐採や、ダム開発、道路交通網の広がりなどを受けて、減少。

ポルトガルでは一度絶滅し、スペインでも南東部のコート・ドニャーナ国立公園を含む、わずかな地域に生き残るのみとなっていました。

継続されてきた保護活動と今も残る脅威

イベリアオオヤマネコの保護は、ユネスコの世界自然遺産にも登録されている、コート・ドニャーナ国立公園の設立を求める取り組みから始まりました。

それから半世紀あまり。現在は5カ所でその生息が確認されています。

その中には、一度いなくなった地域に、人工繁殖させた個体を再導入(自然復帰)させる取り組みが、2014年に初めて実現したポルトガルの生息地も含まれており、こうした場所でも確実な回復が認められています。

こうしたエリアで、完全な野生回復が実現したと判断するのは時期尚早ですが、今後、現存する生息域を中心に、再導入される地域はさらに増やされる予定です。

しかし、生息地やその周辺では交通事故が今も頻発しており、過去3年間で51頭ものイベリアオオヤマネコがその犠牲になりました。

さらに、今回の調査では、イベリアオオヤマネコの主要な生息域で、アナウサギの個体数がウイルス性の病気により半減していることも分かりました。

食物の75~99%を、アナウサギというただ1種の動物に頼っているイベリアオオヤマネコにとって、その影響は深刻です。

実際、このウサギの減少により、生まれるイベリアオオヤマネコの仔が6割も減った地域もあります。

イベリアオオヤマネコの未来のために

イベリアオオヤマネコの保護が、その設立の契機にもなったWWFスペインでは、今回の調査結果を歓迎する一方で、次のように警鐘を鳴らしています。

「イベリアオオヤマネコを回復させるためには、アナウサギの個体数減少をより詳しく調査する必要があります。地中海周辺の生態系の中で、重要な役割を担う、このアナウサギの減少が止まらなければ、私たちは生態系の崩壊を目の当たりにすることとなるでしょう」(WWFスペイン、ルイス・スアレス)

それは、一度は増加したイベリアオオヤマネコが、またリバウンドのような形で急減する危険があることを示すものでもあるといえるでしょう。

さらに、イベリア半島では近年、気候変動(地球温暖化)によると考えられる、干ばつなどが生じていますが、こうした環境の急激な変化が、ウサギの病気を拡大させる恐れも指摘されており、より広い視野に立った保全活動も必要とされています。

WWFインターナショナルの野生生物保護プログラムのディレクター、カルロス・ドレウスは、保全に傾けられた長年の協力と努力が、今回の報告で報われたことを認めつつも、次のように語っています。

「私たちの仕事はまだ終わっていません。イベリアオオヤマネコが、完全に回復し、それが軌道に乗るまでは、まだ遠い道のりが待っています」。

今後、イベリアオオヤマネコの調査と、再導入を継続する試みは、EUの支援のもと、スペインのアンダルシア州政府が主導するLife + Iberlinceプロジェクトの一環として行なわれ、WWFもこの取り組みに参加してゆきます。

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