この秋サンマはどうなる?北太平洋漁業委員会閉幕

サンマは近年、日本の沿岸域での漁獲減少が懸念されている魚種の一つです。
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Getty Images/MIXA

2018年7月3日から5日までの3日間にわたり、東京で北太平洋漁業委員会(NPFC)が開催されました。これは北太平洋での資源管理、また海洋生態系の保全にかかわる国際的な漁業管理機関の一つです。今回は特にサンマ漁の規制強化などについて議論が交わされました。WWFもこれにオブザーバーとして参加。議論の展開を追いつつ、深海の環境保全を行う団体と協力し、海底の自然環境に注目したサイドイベントを実施しました。

北太平洋の漁業管理と海洋保全に向けて

NPFC(North Pacific Fisheries Commission:北太平洋漁業委員会)は、2015年に正式に発効した、数ある地域漁業管理機関の中でも比較的新しいものです。 NPFCは、一部の例外を除き、管轄海域で漁獲対象となる水産資源全体をカバーする機関です。2018年現在、優先的に扱う水産資源として、以下の種を挙げています。

・クサカリツボダイ(Pentaceros wheeleri)

・キンメダイ(Beryx splendens)

・サンマ(Cololabis saira)

・アカイカ(Ommastrephes bartramii)

・スルメイカ(Todarodes pacificus)

・マサバ(Scomber japonicus)

・ゴマサバ(Scomber australasicus)

・マイワシ(Sardinops melanostictus)

現在加盟しているのは、アメリカ、カナダ、ロシア、中国、日本、韓国、台湾、バヌアツ。 この海域を主要な漁場として操業する東アジアの国や地域にとっては、重要な機関の一つとなっています。 特にこの委員会が、大きな責任を負っているのは、主に3点です。

●北太平洋で漁獲される浮き魚(サンマ、マサバなど)の漁業管理

●北太平洋で漁獲される底魚(キンメダイやツボダイ)の漁業管理

●脆弱な海洋生態系の保全

さらに、IUU(違法・無報告・無規制)漁業への対応についても、重要な役割を担っています。 該当する北太平洋海域では、こうした問題のある漁業が横行している可能性が高く、漁業資源や海洋環境の保全を考える上で、軽視できないリスクが指摘されているためです。 こうしたことを考慮すると、NPFCは非常に課題が多い委員会ともいえます。

サンマの漁業規制をめぐる議論

2018年7月3日から5日までの日程で、東京で開かれたNPFCの第4回年次会合では、主に、サンマや底魚漁業の規制強化などが議題となりました。 サンマは近年、日本の沿岸域での漁獲減少が懸念されている魚種の一つです。

しかし、その資源状況がどの程度深刻な状況にあるのかどうかは、簡単には調べられません。 資源を漁獲する各漁船のデータを国がしっかり提出し、さらにデータに基づいた科学的な調査研究や、最終的な資源評価を行なうには、どうしても時間がかかります。そのため、科学的知見が十分得られる前に、資源の危機がさらに深刻化してしまう可能性もあるのです。

そこで、NPFCをはじめ国際的な資源管理の会合では、たとえ資源危機を証明するような科学的勧告が十分に出そろわなくとも、原則として「予防的アプローチ」に従い、いち早く過剰漁獲や海洋環境の破壊を防ぐような措置を行なうことが合意されています。

今回のNPFCでは、こうした「予防的アプローチ」に基づいた提案が加盟メンバーから出されていました。サンマに関する資源管理強化の提案も、その一つであったと言えます。これら「予防的アプローチ」に基づいた提案が、原則に基づき採択されるかどうかが、この会合のカギでした。サンマの漁獲規制強化については、これまでの努力量規制(船の隻数や操業日数に関する規制)から、漁獲量の規制に、資源管理の方法を移行ができるかどうかが注目されていました。

しかし、これらは従来の操業体制に変化を迫るものであり、加盟国にとっては、自国船の漁獲量の一時的な減少を伴う可能性を持つ提案でもあります。 そのためどの議題においても、加盟国からはたびたび「予防的アプローチを」という発言が聞かれたものの、最終的に合意された管理措置はいずれも、その原則に従った十分な結果とは言い難いものになってしまいました。

また、WWFが水産資源と同じように懸念する、「脆弱な海洋生態系」への配慮についても、十分な進展は見られず、海洋生態系の健全性を維持するために指標とする生物の追加などは、2019年の会合に議論が持ち越しとなりました。

IUU漁業対策への一歩「公海での乗船検査制度」

一方、IUU漁業への対策については、一歩前進がありました。 公海での漁船の乗船検査制度の導入が合意されたのです。 北太平洋では近年、沿岸域だけではなく、公海での漁業が急速に拡大してきました。 しかし従来のルールでは、監視船が公海上で不審な行動をしている漁船を発見しても、簡単にはその行動を調査するための臨検をすることができませんでした。

このことが、公海でIUU漁業の横行を招く一因となっていたと考えられています。 その中で今回、導入が合意された公海での漁船への乗船検査制度は、どの国の漁船に対しても、監視船が臨検を行なうことを認めるものです。これにより、多国間が協力したIUU漁業の取り締まりと撲滅が、より容易なものになることが期待されます。

今後の漁業管理の徹底と課題の解消を目指して

上記の他に、今回のNPFC会合では、底魚(キンメダイ、クサカリツボダイ)の管理強化についても合意が交わされました。 そういった意味では、合意された措置はありながらも、いまだ解決できていない課題がNPFCには数多く残されています。 特に北太平洋は、多くの漁船が通年操業する海域であるため、対応が一年遅れれば、それだけ海洋環境や漁業資源に深刻な事態にさらされる恐れがあります。

今後も引き続き、議論の透明性を確保しながら、しかし迅速な合意と決定がなされるように、WWFはNPFCに対し強く求めてゆきます。

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