2016年6月5日から11日まで、日本で「サステナブル・シーフード・ウィーク」を実施しました。これは、世界の各地で海の豊かさが失われ、魚や貝、エビなどの水産資源が枯渇している現状を伝えながら、持続可能な水産資源(サステナブル・シーフード)の利用を広げてゆこう!というメッセージを伝えるキャンペーンです。「環境の日」にあたる初日の6月5日には、東京の表参道でオープニング・イベントも開催。会場を訪れた多くの人たちに、サステナブル・シーフードの証であるMSCとASCについて知っていただく催しを行ないました。
選ぼう!サステナブル・シーフード
水産資源の乱獲や違法な漁業、サンゴ礁や干潟、マングローブなどの沿岸域の自然破壊、ウミガメや水鳥などの野生生物を誤って漁網にかけ死なせてしまう混獲、そして海洋の汚染を伴う養殖。
今、世界の各地で、海の自然が脅かされています。
WWFの「生きている地球指数」が示す海に生きる生物の豊かさは、1970年からの40年間で、4割も喪失。
特に、魚や貝、エビなどの獲りすぎは、深刻な問題で、天然の魚は、もう3割以上が、ほぼ獲りつくされてしまいました。
この状況が続けば、多くの海の野生生物が絶滅の危機に追いやられるのみならず、今あたりまえに食べている魚や貝が、子どもたちが大人になったころには、食べられなくなるかもしれません。
そうした状況の中で、自然環境や社会に配慮して生産された「サステナブル・シーフード(持続可能な水産物)」の利用が今、世界で注目され、広がり始めています。
日本でも、第三者が認証したサステナブル・シーフードの証である「MSC」と「ASC」のラベルつきシーフードを、積極的に生産し、流通・販売する漁業者や企業が年々増加。
スーパーマーケットなどでも、そうした製品が手に入るようになってきました。
この認証製品は、消費者が選び、購入することで、世界の海の自然と、持続可能な漁業を応援できる仕組みです。
しかし、日本ではその認知がまだまだ低く、海の環境と未来に対する危機感は、消費者に十分認識されていません。
そこで、2014年からWWFジャパンとMSC(海洋管理協議会)日本事務所では、サステナブル・シーフードを扱う国内の企業や団体と共に、その利用を呼びかける「サステナブル・シーフード・ウィーク」を毎年、環境月間の6月に実施してきました。
「サステナブル・シーフード・フェスティバル」の開催
2016年の「サステナブル・シーフード・ウィーク」は、「環境の日」にあたる6月5日から11日まで行なわれました。
初日の6月5日には、東京・表参道にあるcommune246で、休日を楽しむ2,000名以上の方々を迎えたオープニング・イベント「サステナブル・シーフード・フェスティバル」も開催。
メディア・パートナーとして、キャンペーンのメッセージを全国に向け、繰り返し発信してくれたJ-WAVEによるスペシャルライブをはじめ、さまざまな催しが行なわれました。
スペシャルライブでは、アーティストの岩崎愛さん、おおはた雄一さんをお迎えし、J-WAVEの公開収録を実施。
演奏の合間には、お二人にそれぞれお好きなシーフードや、海についての思い出などもおうかがいしました。
また、福井県敦賀市にある、アジアでは初めてのASC、MSCの認証シーフードのみを扱う専門飲食店「TOTALLY SEAROLL CLUB」のオーナー松井大輔さんをお迎えして行なったステージ・イベント「サステナブル・シーフード・クッキング」では、同店のサンドイッチ「シーロール」を実際に作っていただきながら、その来場者の方々にレシピを配布。
地元の敦賀でも近年獲れる魚が減っている中で、ご自身にできる海と漁業を守る取り組みとして、認証シーフードを使っていきたい、という松井さんの思いを語っていただきました。
さらに、こうした認証シーフードを使った料理を、実際に来場者の方々にも食べて頂こうと、イベント会場であるCOMMUNE246のフードカート『FISH COOP スタンド』にご協力を仰ぎ、ASC/MSCのラベルがついたホタテとズワイガニを使った、コラボレーション・メニューも提供。
6月5日(日)~6月11(土)までの一週間、期間限定で販売していただきました。
豊かな海の現場からのメッセージ
この「サステナブル・シーフード・フェスティバル」では、実際の海の現場からのメッセージもお伝えする、トーク・イベントも実施しました。
ゲストとして宮城県の海からお招きしたのは、2016年3月に日本で初めてのASC認証を取得した、宮城県漁業協同組合志津川支所、戸倉出張所の戸倉カキ生産部会長、後藤清広さん。
もう一人は、一本釣り漁業で現在MSCの認証取得を目指している、明豊漁業株式会社の代表取締役、松永賢治さんです。
どちらも東日本大震災を乗り越え、それをきっかけとして、新たな漁業・養殖の未来をめざしてこられました。
後藤さんは、「津波で船も家も、養殖設備もすべて失い、復興は不可能だと思った」と、当時を振り返りつつ、震災を機に養殖業者全員が力を合せ、それまでの養殖のやり方を大きく変えてきたことをお話くださいました。
目指したのは、養殖の量を3分の1 に減らし、カキの質を上げることを目指した取り組みです。
それは見事に成功し、汚染などが減り、海の環境が改善された結果、カキの成長が倍以上に早くなり、大ぶりで良質のカキが獲れるようになりました。
そしてこの成功は、震災前には無かった地域のブランド「戸倉っこかき」の誕生にもつながったのです。
「自分たちは海に生かされている。大量生産で海に負荷をかける養殖は10年後20年後を考えたらダメ。その精神はASCと同じだった。
ハードルは高かったけれど、多くの方々の協力でASC認証をとることができました。これをスタートにしたい」と、後藤さんはお話しくださいました。
また、松永さんは、地元の塩竈市は津波の被害が少なく復興が早かったものの、魚が加工場に入荷できなくなったため、船を買い、自ら漁業を始めた経緯を説明。
そして、「20年働いてきたが、漁業者も水産資源も減っている。20年50年の先まで考えねばならない」と、漁業と海の未来を心配しながらも、「認証されたシーフードを食べ続けていただけるように、プライドを持ってこの取り組みをやっている。お店に出せるようになったらぜひ手にとってみてほしい」と、MSC認証の取得に向けた気概をお伝えくださいました。
東京で暮らす消費者の一人ひとりが、MSCやASCの認証シーフードを選ぶことで、未来を考えた漁業の現場を支えることができる、そんな実感をいただいたトーク・イベントでした。
企業の海を守る取り組みも紹介
この他にも、会場のcommune246では、MSC、ASC認証を取得した企業や団体による取り組みとメッセージも、パネルでご紹介しました。
2016年の「サステナブル・シーフード・ウィーク」には、前年を上回る26の企業・団体が参加しましたが、そのうち下記の12社・団体が、このメッセージを発信。
「豊かな海を未来に!」引きつぐため、今どのような挑戦を行なっているのか。それぞれの現場の担当者の皆さんからもコメントをいただきました。