中西部太平洋のマグロ資源をめぐって 2015年WCPFC年次総会終了

インドネシアのバリで開催されていた、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次総会が2015年12月8日、閉幕しました。

インドネシアのバリで開催されていた、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次総会が2015年12月8日、閉幕しました。この会議は中西部太平洋のマグロ・カツオ資源の保全を目的とした国際会議ですが、今回の会合では、漁業監視員の処遇やカツオの保全管理について一部改善がみられたものの、マグロ資源全体の保全に関しては、目立った進展がありませんでした。太平洋の生態系の頂点に立つマグロ類の未来は、翌年の交渉に持ち越される形になりました。

懸念されるビンナガとメバチの行方

現在、中西部太平洋ではほぼすべてのマグロ資源が、減少し続けています。

特にメバチは、激しい乱獲にさらされ、資源が枯渇の危機に瀕しているにも関わらず、過剰漁獲が続いています。

また、南太平洋のビンナガも確実に漁業による圧力が増加しており、この資源に依存している小島嶼開発途上国(SIDS)の経済に、深刻な影響を与えています。

それにも拘わらず、このビンナガおよび、メバチの問題については、効果的な措置が依然として採られていません。

しかし今回のWCPFC会合で、加盟各国の政府代表は、この課題に対する十分な成果を出すことができませんでした。

マグロ資源の保全管理措置を強化するためには絶対に欠かせない、関係漁業国の断固たる意志と行動が、会合では示されなかったのです。

実際、熱帯性のマグロに関する現行の管理措置は改訂されることなく、メバチの過剰漁獲に歯止めをかけることができなかった上、ビンナガの目標管理基準値の実施についても合意が成立しませんでした。

こうしたWCPFC加盟各国の姿勢には、内外から強い批判と失意が示されています。

WWFの中西部太平洋マグロプログラムのマネージャー、ババ・クックは次のように述べました。

「WCPFCのフェレティ・テオ事務局長とリア・モスクリスチャン議長の強いリーダーシップにより、本会合では、効果的な措置を実施しよう、という気運が高まりました。

ただ、いくら気運が高まっても、後ろ向きな参加者を無理やり取り組ませることはできません。

WCPFCの加盟国が、全加盟国の共通の利益のために取り組もう、という政治的な意欲を奮い起こさない限り、太平洋のマグロ資源の保全は、危機的な道筋をたどるのではないかと懸念しています」。

カツオと漁業監視プログラムに関する進展

しかしWWFは一方で、今回の会合において前進があった点も認め、慎重ながらもその結果を前向きにとらえています。

その第一点は、WCPFCが、それなりに十分な内容のカツオ目標管理基準値(*)の設定に合意したことです。これにより、カツオ資源の保全管理が進む兆しが見えてきました。

カツオはメバチなどに比べると、資源が豊富にあるとされていますが、日本近海では近年、漁獲が減少しており、その将来が懸念されていました。

そうした中で実現した、目標管理基準値の設定は、資源保護に向けた新たな一歩といえるでしょう。

さらに認められたもう一つの成果は、漁業監視プログラムの監視員の安全と保安に関する進展です。

会期中、WCPFCは、太平洋の漁船で働く監視員の保護について、重苦しい議論を行ないました。

近年、太平洋の至る所で、漁業の不正を監視する監視員たちが行方不明になっているためです。

2015年9月10日にも、全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)のトランスシップメント・オブザーバープログラムのもと、運搬船のビクトリア号(Victoria No.168)で漁業監視を行なっていた、キース・デイビスが行方不明になりました。

キースは、周囲からも大変尊敬を集めていた素晴らしい監視員でした。

こうした問題を受けて、監視員の安全と保安を向上させるための措置を、至急策定するよう嘆願を行なってきたWWFは、今回の会合でWCPFCが、監視員の安全と保安を大幅に向上させる勧告案を採択したことを、心から歓迎しました。

WWFのババ・クックは、「この件についてWCPFCが前向きであることは、大変喜ばしいことです。採択された措置が実施されるかどうか、チェックする必要はありますが、勧告案の採択は非常に喜ばしく思います」とコメント。

これを受け、加盟国は、2016年の終わりまでに採択された措置を実施することになっています。

日本沿岸をその海域に含めた中西部太平洋のマグロ資源をめぐる問題。次回のWCPFCの会合は2016年の12月に、フィジーで予定されています。

根本的な課題は、いまだ解決していませんが、WWFは引き続き、海の生態系の保全と、その恵みである資源を守ってゆくために、各国政府に対し、持続可能な漁業の推進を働きかけてゆきます。

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