環境省が石炭火力発電所の新たな建設を容認する方向性を示した、という報道に対し、WWFジャパンは新規建設をこのまま認めていけば、日本の気候変動(温暖化)対策を、長期にわたってさらに遅らせる結果となることを指摘。
環境省だけでなく、日本政府全体が、この石炭火発増加の方向性は容認するべきではない、という考えを示しました。
また、石炭に頼る事業者自体も、石炭火力発電所の建設が、将来の気候変動対策を考えた際に、責任ある投資と言えるのか、再考する必要があります。
くわしくはこちらの声明をご覧ください。
声明 2016年2月8日
2月6日~7日の各社報道によれば、環境省が石炭火力発電所の新設を容認していく方向となった。これは、これまで環境省が、石炭火発の新設については、環境影響評価(アセス)制度を通じて一定の抑制をかけてきたことに対し、電力業界(大手電力会社および新電力)が「電気事業低炭素社会協議会」を新たに設立し、自主的な温室効果ガス排出量削減の計画等を各社に提出させ、報告させるということを条件に、容認に転じたということである。
しかし、新規石炭火力発電所建設をこのまま認めていけば、日本の気候変動(温暖化)対策を、長期にわたってさらに遅らせる結果となる。環境省だけでなく、日本政府全体として、この石炭火発増加の方向性は容認するべきではない。そして、そもそも何より事業者自体が、石炭火力発電所の建設が、将来の気候変動対策を考えた際に、責任ある投資と言えるのか、再考するべきである。
日本は1990年以降、石炭火力発電所からの電力利用を増やし、結果としてCO2排出量を大幅に増やしている(約2.8倍)。石炭火力からの排出増は、事実上、他部門での削減努力を相殺するほどの増加であった。
さらに、今後もさらに多くの石炭火力発電所の建設が計画されている(気候ネットワーク他のNGOの調べによれば47基にも上る)。化石燃料の中でも、最も排出量が多い石炭の使用は、本来、むしろ減らしていくべきものである。
しかも、発電所のような設備は、一度作られてしまえば、少なくとも寿命(一般的には40年程度といわれている)までは使い続けることが、投資を回収して利益を得るためには必要となる。現在計画されているような石炭火力発電所が2020年近辺で運転を開始した場合、それらの発電所は今世紀後半にわたって大きな排出をし続けることになる。
「今世紀後半に世界の排出量実質ゼロ」を目指すパリ協定を受け、日本はこれから気候変動対策を本来、強化するべき段階にある。先日も、環境省自身の有識者懇談会(「気候変動長期戦略懇談会」)の提言において、「2050年80%削減」の方向性が確認されたところである。そのような中で、石炭火発増設の方向性を容認することは、社会に対して「まだ石炭で大丈夫」という誤ったメッセージを送る結果になる。
さらに、既に計画されている石炭火力の計画をなし崩し的に進めてしまうことにもなりかねない。
目指すべきは脱炭素社会であり、石炭の再興ではない。環境省を始め、日本政府全体として、そして石炭火発に投資を行なっている企業自身が、今一度その方向性を見直すべきである。
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