【WWFシンポジウム報告】持続可能なオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて

世界が注目する4年に一度の祭典、オリンピック・パラリンピック大会。近年はその重要な理念の一つに「環境」が 掲げられ、保全や配慮に向けた取り組みに力が入れられてきました。

世界が注目する4年に一度の祭典、オリンピック・パラリンピック大会。近年はその重要な理念の一つに「環境」が 掲げられ、保全や配慮に向けた取り組みに力が入れられてきました。中でも、2012年のロンドン大会は「最も持続可能なオリンピック」として歴史に名をと どめています。2020年に予定されている東京大会に向け、日本はどのような環境配慮を実現するのか。WWFジャパンと自然エネルギー財団は 2015年4月7日、その現状と課題をテーマとしたシンポジウムを東京で開催しました。

どうなる? 東京大会の環境配慮

近年、オリンピック・パラリンピック大会は、過去の反省をふまえ、会場となる競技場等の開発や跡地の利用のみならず、開催期間中に消費される、紙や飲食物などについても、環境への配慮がなされるようになってきました。

そのメッセージは、開催国内にとどまらず、世界各国から集う選手団や観客に対しても、これから必要とされる社会的な変革を体感し、理解を広げる、重要な機会と目されています。

とりわけ、2012年にイギリスで開かれたロンドン大会は、徹底した環境配慮を実施し、「史上最も持続可能なオリンピック」と讃えられました。

そして、2020年の東京大会誘致にあたり、日本はこのロンドン大会を超える、意欲的な環境配慮の目標を設定、アピールし、その実現を約束しました。

しかし、その計画と実行を担う公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(森喜朗会長)からは、まだその実現に向けた具体的な計画や施策が見えてきていません。

大会の持続可能性についての方針も2014年に作成されましたが、その内容は十分に周知されておらず、開催するとしている、NGO(民間団体)や各分野の専門家の参加を得た会議についても、いまだに実施の予定が見えていません。

東京はロンドンを超えられるか

オリンピック・パラリンピック大会の開催にあたっては、持続可能な取り組みの重要性を深く理解し、進めていく必要があります。

そうした声が高まる中、2015年4月7日、WWFジャパンは東京で、公益財団法人自然エネルギー財団と共に、シンポジウム「東京はロンドンを超えられるか ~より持続可能なオリンピックを目指して」を開催しました。

このシンポジウムには講演者として、ロンドン市などが環境に配慮したオリンピック・パラリンピックを実現するために設置した「持続可能なロンドン2012委員会」の、ショーン・マッカーシー元議長も登壇。

「ロンドン2012から東京2020へのメッセージ」と題して、ロンドンがどのようにして持続可能な大会を実現したのか、その成果と教訓をお話しいただきました。

この委員会は、ロンドンオリンピック組織委員会などとは別の、独立した立場から、持続可能性のために約束されたことがきちんと実施されているかを、第3者の 目で監視し、直接オリンピック理事会(ロンドン市長、大臣、オリンピック組織委員会代表などで構成される最高位の理事会)に報告することができる委員会で す。

オリンピック史上はじめての設立で、WWFをはじめとするNGOや専門団体などさまざまなステークホルダーの関与を得ながら、その任務を確実に実行されてきました。

また、自然エネルギー財団の副理事長で、国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問を務める末吉竹二郎氏は、気候変動対策をはじめとする国際的な取り組みの見地から見たオリンピック大会のあり方と、2020年の東京大会が目指すべきものについて講演。

さらに、東京大学名誉教授で日本エシカル推進協議会の代表でもある山本良一氏からは、持続可能な産品で開催をまかなう「エシカル五輪」に向けた特別提言が行なわれました。

「東京オリンピックと持続可能な都市づくり」

シンポジウムではこの後、「2020東京オリンピックと持続可能な都市づくり」と題した、パネルディスカッションを実施。

マッカーシー氏をはじめ、早稲田大学の田辺新一教授、東京大会の招致委員会のCEOを務めたミズノ株式会社の水野正人会長、そしてロンドン大会にも参画したWWFを代表してWWFジャパンの筒井隆司事務局長がパネリストとして参加し、議論が行なわれました。

会場からも、「ロンドン大会では早い段階からNGOを巻き込むことにより、どのようなメリットがあったのか」といった質問が寄せられ、それに対して、マッカーシー氏からは、NGOがさまざまな考えと始点を持っていること、そうした主体が幅広く参画することが、成功のカギになった、というお話がありました。

そして、環境に配慮した東京大会が実現できるかどうかの鍵は、こうした幅広い知見の収集ができるか、そして国民の参加意識を高められるかどうかにある、という点が強調され、今後の取り組みに深くかかわる視点が提示されました。

最後に、シンポジウムを主催したWWFジャパンと自然エネルギー財団は共同声明を発表。

5年後に東京で持続可能なオリンピック・パラリンピック大会を実現するために、東京で何をすることが必要なのか、その要点をまとめた提言を行ない、閉会となりました。

当日の参加者はおよそ250名。その内訳も、2020東京大会にかかわる企業や東京都の関係者、NGOのメンバーなど多岐にわたり、寄せられた関心の高さがうかがわれました。

みずから掲げた環境保全への高い理念と、目標を達成するために、日本と東京は2020年に向け、どのような取り組みを実現するのか。今後の議論が注目されます。

▼共同声明および当日の講演についてはこちら(WWFのサイト)

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