がんに勝ち負けなんてない。

結果として短い人生だったことが、負けではありません。

不定期でブログを投稿させていただきます、西口洋平です。妻と小学生のこどもを持つ、一般的な38歳男性です。「ステージ4のがん」であることを除いては。

がんだと宣告されたときに、おぼえた孤独感。仲間がいない。家族のこと、仕事のこと、お金のこと......相談できる相手がいない。同じ境遇の人が周りにいない。ほんとにいなかった。

それなら自分で仲間を募るサービスをつくろうと、コミュニティサービス「キャンサーペアレンツ~こどもをもつがん患者でつながろう~」を、2016年4月に立ち上げました。

こどももいて、地元には親もいる。仕事やお金...... 心配は尽きません。 そんな僕みたいな働き盛り世代で、がんと闘う人たちをサポートしたい。そんな思いから、抗がん剤による治療、副作用と付き合いながら、仕事と並行して、地道に活動を続けています。

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西口洋平

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キャンサーペアレンツは、子育て世代・就労世代のがん患者のコミュニティであり、様々な社会的な接点の中で生きています。こども、家族、仕事、地域、普段の生活、将来への不安。がん患者への偏見や誤解など、まだまだ「がんと生きる」ということに対する理解が乏しいというのが実態です。キャンサーペアレンツでは、ここに集う方々の意見を『声』として広く世の中に発信し、がんに対する理解を広げ、がんになっても生きていきやすい社会を実現すべく活動を行っています。

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ある方が、がんになって亡くなられたことを受けて、率直に感じたこと。

若いうちに、がんで亡くなる。がんに負けるな、がんに勝ってほしかったのに・・・みたいなコメントがたくさんあるけど、勝ち負けちゃうからね。がんになること、亡くなること、それは負けじゃない。そんなこと、勝手に決めんといて欲しい。

— 西口 洋平/キャンサーペアレンツ (@nishigucci) 2018年9月19日

このツイートに様々な反響があったことから、私なりに考えをまとめてみました。もちろん、いろんな意見があるのはわかっているし、一概に正解があるものでもないのもわかっています。ですが、その何気ない一言によって、悲しい気持ちになる方がいるかもしれないことを、気にとめてほしい。

■有名人のがん報道

有名人ががんになると、必ず報道される。

なんかツライ治療を頑張ってるとか、体調が良くないとか、家族が献身的に支えているとか、そんなこと。

そして、大変な状況であればあるほど、みんなが食いつく。私もその一人かもしれない。

ただ、その中で決まって出てくるコメントの一つに、

「がんに負けないで」

「がんに勝ってください」

みたいなものがあります。テレビのコメンテーターも、これみよがしに、こんなことを言っています。

ただ、ちょっと待って下さい。

もし、その方が亡くなったら、それは、がんに負けたということなんでしょうか。

もし、その方が長生きしたら、それは、がんに勝ったということなんでしょうか。

■がんと戦うということ

そもそも、勝ち負けというのは、そこに勝負を挑み、勝ちか負けかがあるということを理解した上で、はじめるものだと思います。

では、がんとの戦いは、がんになった本人が、その戦いを希望し、勝ち負けを意識してはじめているんでしょうか。

そもそも、どのようにがんと戦うというのでしょうか。

もちろん、一種のたとえとしての言葉かもしれませんが、全くしっくりきません。

そもそも、勝ち負けではありません。

がんになったこと自体、明確な原因もわからず、ある種、運のような要素もある中で、いきなり勝ち負けゲームに放り出され、もし命を落とせば、「負けた」扱いを受けるわけです。

また、がんが治れば(長生きすれば)、がんに「勝った」かのような扱いを受けるわけです。そして、勝ち方を伝える伝道師にような存在になる方もいます。

がんになった原因がわからない以上、治った原因も明確にはわかりません。つまり、ここには、勝者も敗者もいないわけです。そもそも、誰も望んでこんな無謀な戦いをしたくはないし、ましてや、アカの他人に勝手に「勝って」「負けないで」と言われたくないわけです。

すくなくとも、僕はそうです。

■短い人生が負けではない

ぼく自身も、予後の悪い病気なので、いつ命を落とすかわかりません。

その時、わたしはがんに負けたとは思いません。平均余命を超えたからといって勝ったとも思いません。

また、結果として短い人生だったことが、負けではありません。

がんという病気を経験し、他の人が気付けないことに気付けたし、その中で様々な出会いがあり、やりたいことにもめぐり合えた。長く生きたいとは思うものの、短いからといって負けではない。そんな風に決められたくない。

命を落とした後に、家族に敗者のレッテルを貼られるのも絶対にイヤ。

こころもちが、自身のいのちを左右することはあると思います。

ただしそれは、勝ち負けではないし、誰かに決められるものでもない。

(以上)

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