グラフを見ていると日本の父親の家庭に関わる時間が少なすぎて何だか哀れになってきたりもします。 かなり発見の多い統計です。
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今週のThe Economistに育児に関して面白い記事がありました。

アメリカでは過去50年の間に家電の進化や意識の変化から、母親が外で仕事をする時間は増加、家事にかける時間は減少、育児にかける時間は増加し、父親は仕事時間が減少、その分家事と育児にかける時間が増加している(右グラフ)。 結果、両親が子どもと過ごす時間は50年前よりも長くなっている(=子どもにとってよいこと)。

裕福な家庭は育児(親という仕事)を真剣に捉え育児書を良く読み、子どもとの時間をたっぷり取り、質の高い育児をするようになった一方で、貧困家庭では子どもとの時間が減り、子どもが必要な知的刺激や感情面でのサポートを与えられていない。 生まれついた家庭の差による育ち方のギャップがますます広がっている。

という内容です。

ワーキングマザーの育児にかける時間は昔より長くなっているというのはいい話ですよね、多くの母親は子どもとの時間を十分に取れていないという罪悪感に悩まされているのですから。

これ、日本だとどうなんだろう?と思って統計を調べてみました。 時系列で比較できるものが見つからなかったのですが、共働き世帯の時間の使い方について2011年現在のデータが見つかったのでアメリカのデータと並べてみました。

1週間の中で共働き世帯が育児・家事・仕事にかける時間の内訳(食事・風呂など身の回りのことをする生活時間を除く)で、左から日本(末子3歳未満)、日本(末子が15 - 17歳)、アメリカ(少なくとも1人は18歳未満の子がいる)家庭になっています。 年齢を完全に一致させたデータは見当たりませんでした。

(クリックすると拡大します。)

いろいろ気づくことはあります。

- 日本の父親の驚くべき労働時間の長さ。 週末含めて60時間ということは、週5日働いているとすると1日平均12時間。 平均ですよ、平均。

- 必然的にしわ寄せが母親にきていて、家事時間が末子3歳未満の家庭では夫の10.5倍、末子15-17歳の家庭では夫の29倍(アメリカでは母親の家事時間は夫の2倍弱)。

- 育児も同様。 この育児は「子どもに向き合っている時間、子どものための活動の時間」で本の読み聞かせ・公園で遊ぶ・習い事に連れていく・宿題をみる・授業参観/PTAに参加する時間などを含んでいますが、親が家事をしながら同じ空間で子どもがテレビを見ているなど「ながら」時間は含まれていません。 一緒に食事をする時間も含まれていません。

個人的に驚愕したのが日本の末子15-17歳の家庭での育児時間の少なさ、ほとんど皆無。 アメリカのデータで同条件のものがないので比較できないのですが、アメリカもイギリスも家庭学習は塾中心ではなく家で親がみるかチューター(家庭教師)を雇うかなので親が子どもの教育に深く関与します(そのため日本よりも親の熱心度や経済状況が子どもの成績に直結する)。 また、中学校以上でも親が学校に送迎する場合が多いし、学校の活動にも親が積極的に参加(ボランティアで遠足の付き添い、放課後の補習クラス手伝い、チャリティー活動など)します。

アメリカのワーキングマザーといえば国務省政策企画本部長という中央政府でのキャリアを子どもを理由に諦めたAnne-Marie Slaughterの子どもが(乳幼児ではなく)ティーンエージャーだったことに衝撃を受けました(彼女がアトランティック誌に寄稿した"Why Women Still Can't Have It All"(なぜ女性はすべてを手に入れられないのか)は大論争を呼びました)。 が、米英では「愛情をかければ誰が育てても変わらない乳幼児と違い、小学生やティーンエージャーになった時は親が側にいることが必要」と考える人が多いのは事実です。 日本の「3歳児神話」とは真逆で初め聞いたときは驚きました。

日本の高校生の親は学校と塾に任せているんでしょうね、私の母親も働いていたので、そうでしたが。

また、グラフを見ていると日本の父親の家庭に関わる時間が少なすぎて何だか哀れになってきたりもします。 かなり発見の多い統計です。

(2014年7月29日付「世界級ライフスタイルのつくり方」より転載)