熱中症対策:帽子とサングラスはファッションではありません

日差しの強いこの地域に帽子とサングラスなしで行くのは自殺行為だ。

2016年8月、稲田防衛大臣(当時)が赤道に近いアフリカのジブチに視察に行くため、帽子とサングラス姿で成田空港に登場し、「それが公務に行く格好か?」と批判の声が上がった。

日本では毎年、夏になると「熱中症対策をしっかりしましょう」とテレビでは連呼されるが、例年、熱中症で多くの人が病院に搬送されている。その原因の一つに、この稲田大臣に対する的外れな批判があるのではないか。

私はジブチに近い難民キャンプで3年働いたが、日差しの強いこの地域に帽子とサングラスなしで行くのは自殺行為だ。私は、キャンプでの勤務当初、野球帽を被っていたが、それでは耳や首がカバーされないため、すぐに熱中症で倒れ、3日間ベッドの上で過ごした。それから、全身を覆う麦わら帽子とサングラスは絶対に持ち歩くようになった。

日本では、これだけの炎天下にも関わらず、頭に何も身に付けずに出かける人が多い。通勤、通学中に頭を覆っている人はどれくらいいるだろうか?昼休みに会社から出る際はどうだろう?

7月8日、横浜スタジアムで午後1時開始のプロ野球の試合を観に行った。30度以上の炎天下で3時間、直射日光を浴びることはわかっているにも関わらず、2-3割の観客が頭に何も身に付けていなかった。一緒に行った友人もその1人で、私が「え?帽子なくて大丈夫?」と何度も言い、「言われてみるとキツイね」と試合の後半になってタオルを買いに行き、それを頭に巻いていた。試合中盤で、球場内のトイレに行くと、通路脇には熱中症予備軍の人がたくさん座り込んでいた。

昨日も35度近くだったのに、道端でサイクリング中の友人5人に出会ったが、頭を覆っているのは1人だけだった。通勤や通学で帽子を被ることを奨励する学校や会社はどれくらいあるのだろうか?記者は外での活動が多い仕事だが、私は毎日新聞勤務時代、屋外での取材中に帽子を被るように言われた記憶はない。

帽子はファッションではなく、あなたの命を守るための必須アイテムだ。テレビでは、2万円する扇風機付きのジャケットなどが紹介されたりしているが、帽子の効果についてもっと伝えてほしい。男女関係なく、麦わら帽子か日傘の使用を奨励するよう、是非、呼びかけてほしい。

この時期は、私は基本、大きな麦わら帽子にサングラス姿だ。「黒岩さん、怪しいですね」とよく言われるが、「熱中症対策万全ですね」と言われる社会になってほしい。

注目記事