最近、心温まる話がない。有名人のセクハラ疑惑、アマチュアスポーツでの大反則行為、そして次々に疑惑の文書が出続ける中央政界。そんな中、私の大好きな広島カープの試合をテレビで見ていたら、あるシーンで感動して涙が出そうになった。
昨年リーグ連覇したカープは今年も首位を独走している。しかし、なぜカープが今年こんなに強いのか納得のいく説明をできる人は一人もいない。チーム防御率も打率も3位。得点圏打率を含め、主要な数値で、リーグ1位は一つもない(5月25日現在)。開幕投手と昨年のリーグ最優秀選手がケガで離脱し、4番打者と一昨年の最優秀選手が最近復帰したばかり。先発投手の一角を担う外国人投手は妻の出産に立ち会うために一時帰国中。ルーキーが活躍しているわけでもなく、もちろん、巨人の様に補強選手がいるわけでもない。じゃあ、なぜ強いのか?
その感動シーンは、5月23日、茨城県の地方球場であった巨人との試合。カープが6対0でリードした場面で、4回表1死一二塁。打席には、ケガから復帰したばかりのチーム最年長の新井。外角に来た球を流し打ちし、一塁線を破った。二塁走者がホームへ帰り、7対0.そして、一塁走者もホームを狙い、外野からボールが返ってきたが間に合わず、8対0。と、思ったら、捕手が受け取ったボールを、すぐに三塁へ送球した。何と、新井がホーム返球の隙を突いて、二塁から三塁へ進塁を試みたのだ。特に足が速いわけじゃないから、私はアウトになると思ったが、間一髪でセーフ!その瞬間、思わず涙が出そうになった。
野球ではよくあるシーンかもしれない。しかし、考えてほしい。8対0のワンサイドゲーム。慣れない地方球場。土を入れ替えるためにゲームが一時中断するほどの大雨。足を怪我して長期離脱して復帰したばかりの41歳。もう一度ケガをすれば選手生命が絶たれてもおかしくない。二塁で止まっていても、誰も文句を言う人はいなかっただろう。文句どころか、この試合の解説を務めたカープ前監督の野村謙二郎氏が「(首脳陣は)ちょっと抑えてくれよ(無理しないで)と思いながら見ていたと思います」と言うように、進塁せずにケガのリスクを軽減した方が、監督は喜んだ可能性だってあるのだ。
「プロ選手ならそれくらいハッスルして当たり前」と思う方もいるかもしれない。そう思う方にはユーチューブで「バレンティン やる気なし」で検索してほしい。5月13日、4点負けている大雨の試合で、ヤクルトのバレンティンが守備中に飛んできたボールを歩きながら拾ったのだ。
こういう数字では表せないものが、カープを1位に押し上げ、ヤクルトを最下位にさせるのだろう。
新井のプレーを見ると、彼にとって一番大切なものは、プロ野球選手としの地位ではなく、勝ち負けでもなく、ただグラウンドで楽しく野球することなのだということが伝わってくる。地位を利用してセクハラする有名人や、どんな疑惑が出てこようとも地位にしがみつく政治家や、勝ち負けだけにこだわってルールを無視する教育者とは、あまりにも対照的だ。私も新井みたいながむしゃらな人生を送っていきたいと思う。カープの躍進は日本全体を明るくしてくれるだろう。
新井の激走を見たい方は、「新井 走塁 3塁」でユーチューブ検索してみてください。