男性の育児休暇についてシングルファザーからの三つの提案

子育ての楽しみは数日間だけじゃわからない。

0歳児のシングルファザーになって9ヶ月。日本の男性の育児休暇取得率の低さはどうにかならないものかと思いつつ、これについての議論をニュースで見るたび、いくつか大事な要素が欠けているようにに思え、三つの提言をさせてもらう。

提言1 育児休暇取得率だけでなく、会社に取得意思を示した数も割り出して

厚生労働省によると、昨年10月の取得率が3パーセントということだが、そもそも「取得したい」と意思を示せた人数はどれくらいなのか?

5割が「取りたいのですが」と上司に相談して、3パーセントしか取得できないのだとしたら、雇用主側に啓発活動が必要になるが、実際に意思を示した数も取得人数とあまり変わらないのだとしたら、啓発活動の対象は従業員となり、対応の仕方が異なる。

「他の男性に比べたら、私の夫は育児に参加してくれて助かる」と誇らしげに語られるイクメン友人を何人も見てきたが、「育児休暇を取ろうとした?」と尋ねてみると、ほとんどがノーだ。理由を聞いてみると「仕事が忙しかったから」など。

取得できない理由によく挙げられるのが「会社の雰囲気」。でも、雰囲気というのは社員一人一人の力で変えていくものだ。

私は当初、トップダウンで雰囲気は変わるものだと思っていたが、それが完全な誤りであることが「プレミアムフライデー」で証明された。官民のトップが旗振り役となって毎月最後の金曜日に午後3時退社しようという運動だったが、実際に帰った人は3パーセントだったというデータもあり、あまり浸透していない。

もし従業員が会社の雰囲気を変えてまで育児休暇を取得したくないというのなら、それまでのことなのである。

取得率を伸ばすために、無理矢理取らせたら、「私の夫なんか、育児休暇を取って、パチンコ行っていたのよ」とかなる可能性もあり、逆に夫婦関係が悪化しかねない。育児休暇取得宣言した後、不倫が発覚した元国会議員のことも思い出される。報道に携わる私の知人男性は、1年の育児休暇を取って、自分の興味のあることを取材し本を出版した。

提言2 実際に取得した男性の妻たちの声を制度に反映して

私のアンテナが低いからなのかもしれないが、育児休暇を取得した3パーセントの方たち自身の感想は聞こえてくるが、彼らの妻たちの声を聞く機会が乏しい。

大半の取得期間が1ヶ月未満ということは、取得者自身が一人で育児を担うのではなく、すでに家で育児や家事をやっている妻と共同でする場合が多いと考えられる。

「夫が取得してくれたおかげで、夫婦関係が良くなった」とか「できたら3日とかだけでなく、1ヶ月くらいは取ってほしい」とか「育児休暇も大事だが、毎日午後9時の退社時間を午後7時に変えてくれる方がありがたい」とか、色々な声が上がってきそうである。

私は、これまでいろいろな人に育児支援をお願いしてきたが、育児や家事支援は継続的に関わってもらわないと逆に負担になることもある。

普段家にいない人が、突然、数日間家に来て、ミリンの場所からミルクの作り方など教えて慣れる前に、仕事に戻ってしまうようなら、初めから一人で全部やったほうが楽である。料理や皿洗いの量が増えるだけで得することはあまりない。

しかも、その数日間で「俺、育休取得した数少ないイクメンだぜ!」とかなって、私の育児スタイルについて評論するようにでもなったら、面倒くさくてかなわないだろう。

提言3 育児休暇の最低取得日数を定めよ

子育ての楽しみは数日間だけじゃわからない。辛抱強く夜鳴きに付き合っていくなか、言語を発することができない赤ん坊と信頼関係を作っていくことこそ育児の楽しみだ。

私の息子は最近、私のそばなら安心するのか、一人遊びする時間がどんどん長くなり、おかげで隣で新聞読んだり、皿洗いしたり、料理したり、自分の時間が確保できるようになってきた。私と一緒に色々な友人に出会うことで、人見知りが減っていき、駅やレストランで、「かわいいですね」「もう1歳?」などと、話しかけられたら、笑顔を振りまくようになった。数ヶ月間、四六時中一緒にいてこそ得られる達成感である。

だから、2-3日休んだだけで、育児休暇取得とカウントするのではなく、最低1ヶ月とか日数を決めてはどうか。政府が目標とする、2020年までに取得率13パーセントを達成できたとしても、取得期間が数日間のみなら、数字合わせのため育児休暇になりかねない。

繰り返しになるけど、問われているのは、男性社員が会社の雰囲気を変えてまで育児をしたいと思えるかどうか。そして、妻たちに「この人が家にいて家事育児をしてくれたら助かる」と思ってもらえるかどうか。取得意思を示す社員が少しずつ増えていけば、最初は渋られることもあるかもしれないが、着実に雰囲気は変わっていくだろう。

そして、会社の雰囲気を変えてまで育児に関わりたくないという人が大多数の場合、育児休暇取得を増やす方法は、普段育児に関わっている私たちが育児の楽しさを発信していくこと以外にないと思う。

私の場合、子どもが生まれた直後に妻が亡くなったため、常に一緒にいてくれる子どもの存在が死ぬほどありがたい特別なケースなのかもしれない。それでも、四六時中、誰かと一緒に時間を過ごし続け、お互いの成長を肌で感じ取っていく体験というのは、育児以外ではありえないもので、その喜びが片方の性別に偏っている今の日本の現状があまりにももったいないと感じてしまうのだ。

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