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2018年06月10日 23時52分 JST | 更新 2018年06月11日 10時36分 JST

選挙の勝敗は街頭演説のやり方で決まる!

相手候補の訴えに対し具体的な対案を出さない池田氏の姿は、今の野党の姿そのものを描いているようだった。

新潟県知事選挙の候補者の訴えを聞く有権者=9日午後、新潟市東区 
時事通信社
新潟県知事選挙の候補者の訴えを聞く有権者=9日午後、新潟市東区 

 新潟県知事選挙は与党が支持した花角英世氏が当選。野党が推した池田千賀子氏は敗れた。新潟は野党が強い。前回の知事選挙も、昨年の衆院選挙も、野党候補が県全体で合計5万票近く多く取り、今回、様々なスキャンダルで安倍政権に批判が上がっているにも関わらず、池田氏は惨敗した。米国でパブリックスピーキングを学び、コミュニケーションコンサルタントとして人前で演説する方法を教えてきた私は、2人の街頭演説を見て、花角氏が勝つと確信していた。

 まず、池田氏の演説は全く中身がなかった。

「新潟で初めての女性知事を」

「市役所、市議、県議とずっと新潟でやってきた」

「ケアマネジャーの資格を取り、早稲田の通信制でも学んだ」

「原発は何としてもストップ」

「新潟のことは新潟で決める」

新潟での現場経験が長いにも関わらず、現場で何を見て、どんな問題意識を持ち、知事になったらそれをどう改革していくのか、わかりやすく話すことができなかった。「原発ストップ」は確かに具体的かもしれないが、花角氏も脱原発を掲げているため、差別化が難しくなった。しかも、池田氏の原発についての具体的政策は検討委員会を設置するというのが主で、中身としては乏しいと言わざるをえない。

さらに、6月4日の新潟日報によれば、新知事に原発を最優先に取り組んでほしいと考える県民は全体の2割にとどまった。医療、介護、景気、教育などをより重点的に取り組んでほしいと考える人が半数だったにも関わらず、その後も、池田氏は上記の話をメインに話した。

「新潟のことは新潟で決める」と言いながら、応援弁士の多くは、新潟とは縁のない野党の幹部がずらりと並んだりもした。その幹部たちは池田氏の話よりも、「安倍政権を倒す」ことにより重点を置いて話した。有権者からしたら、「安倍政権の終焉が新潟の景気対策にどう結びつくの?」と疑問に思ったのではないか。

私は日本の選挙には何度か関わったことがあるが、党の幹部に応援に入ってもらうというのは、運転手からスケージュール調整まで、かなりの人員と時間が割かれる。野党党首の中には、新潟ではほとんど知名度のない方もおり、同じ人員と時間を割くなら、しっかりした政策や世論調査チームを作って、街頭演説先の住民のニーズを把握し、毎日、池田氏にどんな演説をすべきかアドバイスをした方がよっぽど効果的だっただろう。

花角氏の演説は決して上手とは言えないが、池田氏よりは何段も上だった。まず、野党が推した前知事が女性問題で辞任したことを念頭に「県政への信頼を取り戻す」と切り出し、交通網のインフラ整備やベンチャー企業立ち上げ支援など、池田氏よりはより具体的な話があった。豪雪地帯では、厳しい生活環境に住み続ける住民の労をねぎらい、住民が交通網から取り残されないよう努力すると伝えた。「先日はこんな取り組みをされている方にお会いしました」と具体例も出していた。私個人的には、新潟は不要なインフラ整備が多すぎると思っており、「またインフラかよ」という感じになってしまうが、それを生活の糧にしている人が多い地域では、心に響くものがあったかもしれない。

東京から来る弁士が後ろに立つ頻度は、池田氏よりも格段に少なく、むしろこちらの設定の方が「新潟のことは新潟で決める」というメッセージを発することに成功したのではないか。

野党は、自らが推した前知事が女性スキャンダルで辞任したことを気にかけたのか、候補者を最初から女性に絞った。私はそこが今回の一番の敗因だったと見ている。女性政治家が少ない日本で、候補者を「女性ありき」にしてしまえば、政策が後回しになることは避けられなかった。

「初の女性知事誕生」など聞こえの良いスローガンばかりが先行し、相手候補の訴えに対し具体的な対案を出さない池田氏の姿は、今の野党の姿そのものを描いているようだった。

「コシヒカリ」が30年振りに最高級ランクから転げ落ち、自殺率も人口1000人に対する医師の数も外国人旅行者の増加率も、全国でワーストクラスの新潟の現状を、知事になったらどう変えてくれるのか。池田氏が自らの現場での体験を通して、政策を練り、県民の心に響く演説ができていたら、結果は変わっていたかもしれない。