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2018年03月22日 10時52分 JST | 更新 2018年03月22日 10時52分 JST

世界のエリートたちを招き入れる日本の大学の敷地内に「ごみ処理施設」が建設されます

「市民一人だけが声をあげても、どうせ何も変わらないよ」と思っていたが、そうでもないらしい。

市民が一人だけで声を上げても、何も変わらないと思いますか?

日本政府による途上国支援の一環として、世界のエリートたちを日本に招き、人材育成の拠点となっている国際大学(新潟県南魚沼市)の敷地内にごみ処理施設の建設計画が浮上し、学生たちの間で戸惑いの声が上がっている。大学には50か国以上から約350人の学生が通い、大半は日本政府からの奨学金で来ている。例えば、2013年、アフリカとの関係を深めようと安倍首相が表明した「ABEイニシアティブ」により、毎年、アフリカの若者が200300人ほど日本の大学機関に招かれているが、その内の約1割が国際大学に来ている。赤道ギニア、シリア、中央アフリカ、フィジー、マダガスカル、ジョージアなど、滅多にお目にかかることができない国籍の方たちが国際大学には在籍し、日本でもこれほど国際色豊かな場所はなかなかないだろう。日本在住の赤道ギニア人は全部で6人で、その内の半分がこの学校に通っている。そんな日本にとって大事な世界への情報発信地に、なぜごみ処理施設を作るのだろう?

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建設計画は、南魚沼市と、隣接する魚沼市と湯沢町の21町が2013年から始め、候補地を公募したら、3地区が手を上げたが、周辺住民の反対でとん挫した。以降、行政主導で候補地の選定がすすめられ、三自治体の中間地点であることなどから、国際大の敷地5.5ヘクタールが選定され、昨年12月、「住民の理解を得ること」を条件に大学側が了承した。150億円の事業費で2025年までの稼働を目指している。

 315日の新潟日報朝刊で、南魚沼市が周辺の各行政区で住民説明会を計13回実施予定であることを知った。大学の敷地は「国際町」という行政区で、学生や教授やその家族が約400人暮らしている。先日のブログで大学の学生と地元住民が断絶された暮らしをしていることについて書いたが、もしかしたらこの住民説明会に「国際町」が含まれていないのではないかと不安になり、市に電話してみた。そしたら、予想通り、「国際町では開催予定はない」とのこと。私は「なぜですか?」と尋ねると、「大学側が必要ないと言ったからだと思いますが、、」となり、私が再度確認すると「あ、ちょっと、議事録調べてからかけなおさせてください」となった。

20分後、市から電話が来て、「市から大学側に『説明会どうしますか?』と尋ねたら、『今は必要ない』との回答だったため」と返答した。私が「他の行政区にも、市は『どうしますか?』と尋ねたのですか?」と尋ねると、「いえ。他の行政区には市から『やらせてください。お願いします』と言いました」と言う。私が「なぜ国際町だけ対応が違うのですか?」と尋ねると、市は「国際大学の学生は学校の管理下にあるという認識ですので」と言う。

全く、意味不明な対応だ。大学に通う住民には、大学を通してしか連絡ができないなんてありえない。学生だろうが外国人だろうが、すべて住民として平等に扱えないものか。

確かに、住民が嫌がる施設を作るにはベストな場所かもしれない。学生の大半は日本語ができないから、情報が入りづらい。大学院大学のため、大半の学生の滞在期間は2年と短く、7年後に稼働予定の施設に関心は持ちづらい。さらに、大部分は日本政府のお金で来ているため、行政の決定に対して声を上げづらい。もちろん、投票権もない。

私は、大学の担当者に問い合わせてみた。予想通り「学生は1年や2年で出て行ってしまいますから、計画段階の今はまだ説明会は必要ではないという判断だと思います」と言い、私が「それは大学の正式な回答ですか?」と確認すると「正式なのが必要でしたら、書面でお願いします」と言われ、すぐに短いメールを送り、回答を待った。

その後、知り合いの学生数人に尋ねても、ごみ処理施設計画について知っている人はいなかった。昨年12月に大学が承諾してからすでに3か月が経過しているにも関わらずだ。

318日、私は大崎という地区で開かれた住民説明会に参加した。

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まず、南魚沼市の林茂男市長が「皆さんの理解を得るためなら、今日来れなかった人のために説明会をもう一巡やってもいい」と意気込みを語った。そして、担当者から、国際大が候補地となった理由の一つとして、「景観保護」が挙げられ、山の北側に隣接しているため、南側に住む住民からは見えないという。さらに、候補地から一番近い民家が600メートル、一番近い集落からは800メートル離れていると説明された。しかし、国際大の学生寮から予定地の距離については言及がなかった。大崎地区住民の様に山の南側に住む人の視界にごみ処理施設は入らないかもしれないが、国際町の住民からは丸見えで、景観は一変するだろう。

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ごみ処理施設の予定地は国際大学の学生寮と山の間で、寮からの景観は一変する

 質疑応答の時間になり、私は市長に「説明会をもう一巡やってもいいというくらい理解を得たいとおっしゃっているのに、今回、なぜ一番近くに住む学生に市長自身の言葉で説明したいと思わなかったのでしょうか?」と尋ねた。市長は「正直そこまで考えなかった」と返答し、「英語できないからね」と苦しい弁明をした。

 私は「高齢化で若者が少なくなっていくなか、国際大の学生にこの地に残ってもらえるような施策が必要なのではないでしょうか?そのためには、学生を同じ住民として扱うことが大事なのではないでしょうか?大学には外国人だけでなく、東京や大阪出身の日本人も30人ほどいます。彼らが今、この地で暮らしてくれることに私たちは感謝しなければならないのではないでしょうか?地域のために何かしたいと思っている学生はたくさんいます。私が除雪作業で亡くなる高齢者の話をしたら、学生が除雪ボランティアとなって空き家周辺の雪かきをしました。311日の震災7年の祈念行事で、地域作り協議会が雪灯篭作りのボランティアを募集したら、集まったのは国際大の学生5人だけでした。国際大学は南魚沼の過疎化に歯止めをかけてくれる可能性がある存在なのではないでしょうか?」と市長に伝えた。市長は「学生が説明を聞きたいというのなら、いつでも行きます」と言ってくれた。

 私はこの問題についてもっと広く知ってもらおうと、学生や卒業生の話を聞いた。

 アフリカ出身の男子学生は「市からも大学からも何の説明もない。建設予定地の場所は、学生たちが夏場は毎日の様にバーベキューをする場所の近くで、山が目の前にあって景色が素晴らしい。でも、ごみ処理場ができたら景観はがらりと変わる。後輩たちにも今の素晴らしい景観のまま学校に通ってほしい」と話した。また、日本人学生は「確かに、1年や2年だけの滞在になる学生は多い。一方、10年以上いる教授もいれば、卒業後に南魚沼に残る学生もいる。私たちだって同じ住民なのだから、せめて意見を交換する場くらい設けてほしい」と話した。

国際大学卒業後に南魚沼市内の企業に就職した東南アジア出身の20代の男性は「全く知らなかった。建設予定地は私が住んでいた寮からすぐそこだ。寮から山を眺める景色が大好きで、南魚沼に残ることを決めた。市は私たちの様な若者に市に残ってほしいと言いつつ、その様な施設を学生の住居近くに作るなんておかしい。大学にはこれまで100か国以上の学生が在籍し、彼らが日本の親善大使となってそれぞれの国で日本のことを発信してくれている。そんな場所にごみ処理施設を作るべきかどうか、しっかり話し合ってほしい」と話した。

 3月15日に送ったメールに、大学から回答がなかったため、3月19日、改めて電話をしたら担当者が不在だった。30分後に、私の携帯が鳴った。国際大からだった。「2月、3月はテスト期間中ということもありバタバタしておりました。市の方と調整した結果、4月中に大学で説明会を開くということになりました」。

 「市民一人だけが声をあげても、どうせ何も変わらないよ」と思っていたが、そうでもないらしい。そんなことを学ばせてもらった数日間だった。