赤ちゃんを抱えながら「仕事」はできるか?生後2か月の息子を連れて役所との打ち合わせに行ってみた

育児しながらできる仕事がかなりあることに気付く。

 在宅で仕事をしながら生後二か月の次男の世話を1日数時間していると、育児しながらできる仕事がかなりあることに気付く。男性の育児休暇取得も上司など周囲からの理解が大事と言われるが、育児をしながらどれだけ仕事をこなせるかも、どれだけ周りが理解してくれるかにかかっている。

 看護学校に通う妻が授業に行く時間は、私が一人で次男の面倒を見る。近くの買い物や顔見知りの方との簡単な打ち合わせなら、次男を抱っこ紐で抱えながらこなすようにしてきた。面談中にぐずり出したら、立ち上がって、少し揺ら揺らすれば泣き止む。

 6月28日、私は冒険をしてみることにした。次男を連れて、約15キロ離れた役所との打ち合わせに行くことにした。用件は二つ。現在、空き家を民宿として開業するため、旅館業の営業許可を取る手続きをやっており、この日は、消防署から通知書を一つ受け取り、それと他の書類を保健所に提出しなくてはならなかった。次男は運転中や面談中、果たして良い子にしていてくれるだろうか。

午後2時15分、妻が次男に母乳を与え、学校へ行く。次男は完全母乳で授乳間隔は約3時間。

午後2時30分、次男を私の車のチャイルドシートに乗せる。普通なら国道で行くが、次男が運転中にぐずったら困るため、高速道路を使う。

午後2時50分、南魚沼市消防本部に到着。次男を「クーハン」(赤ちゃんを持ち運びできる籠)に入れ、片手に書類バック、片手に赤ちゃん入りクーハンを持って、消防署に入る。自動扉が開いた瞬間、室内にいた隊員さん全員の視線が集まる。「まさか、赤ちゃん拾ってきたんじゃないだろうね?」とでも言いたげな表情だ。私が「黒岩と申しますが、Tさんいらっしゃいますか?」と尋ねると、「もう帰りましたけど?」と言われ、「あ、あの、お願いしていた通知書の準備ができたと聞いたので、それを取りに来たのですが」と言うと、別の方が「ああ、これですね」と大きな封筒を持ってきてくれた。次男を見ながら、その男性は苦笑いをしていた。「ありがとうございます」と言い、そのまま退室。次男は終始ご機嫌だった。

午後3時、南魚沼地域振興局健康福祉環境部(保健所)に到着。次男が車内でちょっとぐずり始めたので、クーハンではなく、今度は抱っこ紐に入れた。扉を開け、受付に来た方に「黒岩と申しますが、Iさん、いらっしゃいますか?」と尋ね、「はい。あちらでお待ちください」といつもの様に隅のテーブルに通された。

Iさんは眼鏡をかけた女性で、私を見るなり、「お疲れ様です」と普段通り接してくれた。私が「今日、赤ちゃん連れなので、たまに立ち上がったりするかもしれませんが、、、」と言うと、「ああ、全然いいですよ」と言ってくれた。と、その瞬間、私の腕に白い液体が。次男がさっき飲んだ母乳を少し吐いたのだ。「すいません。ティッシュありますか?」と私が聞くと、Iさんは、「あ。はい」と自分の席に戻って、ティッシュボックスを持ってきてくれた。

私が書類をすべてテーブルに並べると、Iさんは、「それでは、まず、この書類を書いていただけますか?」と言う。旅館業の申請書だ。私は大事な書類ほど、間違いたくないので、担当の方と一緒に書くようにしていた。往復30キロある役所まで何度も足を運ぶのも面倒だからだ。しかし、今回は次男を抱えならとなると、果たしてうまくいくだろか少し不安になった。

まず、名前を書き、住所を書き、空き家の住所を書く。Iさんからの「緊急の連絡方法はどうなさるのですか?」などの質問に一つ一つ答える。それから、「〇〇法第〇号」の部分がわからないので、尋ねると、Iさんは「少しお待ち下さい」と確認に行く。その間、私は席を立って、揺ら揺らする。Iさんが戻ってきて、「4号ですね」と言い、そのまま記載する。

これで終わりかと思ったら、申請書には裏面があり、そこに物件の面積などを詳細に書かなくてはならなかった。私は平面図を取り出し、Iさんが電卓を持ってきてくれ、一緒に計算してくれた。(ありがとうございます)

次男が抱っこ紐の中でぐずり出し、Iさんが「大丈夫ですか?」と尋ねてきた。私は、次男を抱っこ紐から出し、左手で次男がIさんと対面する形で抱っこした。視界が広がるからか、この態勢が一番ご機嫌になることを知っていた。予想通り、次男は泣き止み、私はそのまま次男を抱えながら、平面図を見て、数を読み上げ、Iさんが計算をし、そこに打ち出された数字を私が右手で記入していった。

それが終わり、Iさんが一つ一つ書類を確認し、「22000円の収入証紙はありますか?」と聞かれ、「あ、まだです」と私が言うと、「それがないと受理できませんので、持ってきてください」と言う。「この辺だとどこで買えますかね?」と尋ねると、500メートルほど離れた県の地域振興局内の売店で売っているという。

すぐに、次男をチャイルドシートに乗せ、車を走らせ、着いたら、次男を抱っこ紐に入れ、売店で買い、また同じプロセスで保健所に戻った。次男は車の中でぐずっていたが、2分ほどで着き、車を降りたら、泣き止んだ。

再び、保健所に入り、Iさんをお願いし、テーブルに収入証紙を出した。座ったら次男がまたぐずると思ったので、今回は立ったまま、座っているIさんを見下ろしながら、対応させてもらった。「はい、じゃあ、これですべてそろいましたね。それでは来週木曜日に建物の審査に入らせていただきます」などと、これからの手続きについての説明があった。私からも「許可証はいつもらえるのですか?」などの質問をした。

すべてを終え、保健所を出たのは3時45分。次男を抱えながら、30分以上の打ち合わせをこなすことに成功したのだ。

帰りの車の中で、次男は寝始めたので、高速道路は使わずに帰った。そしたら、残り3キロ地点で起き、泣き始めた。私は高速を使わなかったことを後悔し、コンビニに立ち寄り、コーヒーを飲みながら抱っこ紐で少し歩き回った。次男が少し落ち着いたら、車に乗せ、またすぐぐずり始めたので、車の窓を開けてたら、泣き止んだ。

午後4時15分、無事自宅に戻り、妻に次男をパスした。

在宅勤務なら、育児をしながらでもできる仕事はたくさんある。肝心なのは、自分がどれだけ図太くなれるかと、Iさんみたいに理解してくれる人がどれくらいいるかである。次男にとっても、ずっと家に居続けるよりは、色々な環境や人に接することができて良かったのではないかと、勝手ながらに思う。