予算委員会が予算を決める場所ではない理由 ~ヤジとデマで怒られるズッコケ総理と国会を空転させるお気楽野党~

西川農林水産大臣が辞任した。それを受けて民主党・維新の党・共産党は大臣が急に交代したから審議が出来る状況ではない、と審議拒否をすると報じられている。
時事通信社

「私がいくら説明しても分からない人は分からない」

昨日、そんな捨てセリフを残して西川農林水産大臣が辞任した。それを受けて民主党・維新の党・共産党は大臣が急に交代したから審議が出来る状況ではない、と審議拒否をすると報じられている。

民主党の高木国会対策委員長は記者団に対し「西川大臣の突然の辞任と、辞任に至る経緯をしっかり聞かなければならない。新しい大臣との質疑を行うための環境整備の時間も必要なので、あすの委員会は開くべきではない」と述べました。

NHK NEWSWWEB 2015/02/23

つい先日、2月19日には衆議院予算委員会で安倍総理がヤジを飛ばし、身内でもある自民党の大島委員長から注意を受け、その後謝罪に追い込まれた。謝罪までの過程でも度々間違った認識を示し、二重三重に恥の上塗りをした。

そして野党はこれらの事態を受けて総理批判と任命責任の大合唱、審議拒否と大ハシャギだが、今行われているのは「予算委員会」である。一体予算の審議はどうなっているのか。

■予算委員会は予算を話し合う場ではない。

2010年、まだ民主党政権だった頃に池田信夫氏は「予算委員会は予算を話し合う場ではない」と指摘している。

そもそも予算委員会で予算が修正されたことは、55年体制になってから一度もないのだ。このような慣例は、自民党の絶対多数のもとで、与党と大蔵省の折衝で予算がすべて決まった時代の遺物だ。野党も最初から予算案は修正されないものとあきらめているから、予算の中身はほとんど審議されず、予算を「人質」にとって政府から他の問題で譲歩を引き出そうとする。おかげで予算委員会は、政治資金や沖縄の基地問題など森羅万象を審議する「よろず委員会」になってしまった。

ニューズウィークジャパン 2010/04/29

他の識者も同様の指摘をしている。

予算そのものについて無駄を指摘したり、理由を述べて金額の増減を求めたり、あいまいな表現をただしたりしても、たいてい上手にかわされて終わりです。なので責める側の野党は「こんな内閣の作った予算案を信用できるのか」という格好でスキャンダルや失言を追及したり、「態度がなっていない」などと理事に文句をつけて引き延ばしをはかったりして「成果」を得ようとすることがあります。

THEPAGE 2014/02/01

■メンツと見栄がぶつかる予算委員会。

そしてなぜそんな状況になるのかについても、坂東太郎氏は以下のように説明する。

内閣にとって3月末までの成立は至上命題。それができないと大変みっともない非力な内閣とみなされるので、野党が強い状況や痛いところを握られている場合は、問題大臣のクビと引き替えに審議促進を非公式に伝えるといった手段に出ることもあるのです。「予算を人質に揺さぶる」という行為です。つまり予算委員会は華々しい割に「出来レース」との指摘もあります。

つまり、与党はなんとか年度内に予算を通したい、野党は退屈な予算審議では誰も注目してくれないので関係の無い話で騒ぎを起こして注目を浴びたい、ということになる。あまりの下らなさに涙も出ない。

■予算と関係のない話は時間外に無給でやれ。

おそらく野党は与党を叩けば叩くほど自分達に耳目が向き、そして支持率が上がると考えているのかもしれないが、はっきり言って大間違いだ。

「1日1億円もコストが掛かるという国会運営で一体何をやっているのか?」

これが与党も野党も支持していない、「真っ当な有権者」の態度だろう。

野党が与党にダメージを与えたいのなら、予算審議には応じ、予算と関係の無い話は一切止めるべきだ。そして「予算委員会ではヤジ・農相辞任など予算と関係のない話はしない。だから委員会が終わった後、全員居残りで農相の資金問題を話しあおうじゃないか」と与党に向かって呼びかければ良い。

当然与党がそんな要求に応じるはずもないので、その時に初めて「与党は逃げた、我々は予算を人質にせず正々堂々と責任問題について話しあおうと主張しているのに」と強い立場に立てる。

■稚拙なアピールで泡沫政党化する野党。

もういい加減、政治家は国民をバカにするのは辞めた方がいい。「与党と戦ってますポーズ」に喝采を浴びせるような有権者など居るはずもない。小手先の注目を浴びるためのパフォーマンスは勘弁して欲しい。

こんな状況が続けば次の選挙でも組織票の強い自民党が圧勝し、全ての野党が泡沫政党化していくだけだろう。各野党が信頼を得て、次の選挙で勝つには与党よりも良い政策を提案する事だけに違いない。それを肝に銘じるべきだ。

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