言葉を過信してはいけない

たとえ核心を示す事に成功した明晰な言葉であったとしても、そして、それを声高に訴える術を用意出来たとしても。言葉とはおよそ無力であり、やがて雑音となって消えゆく虚しいものなのだ。
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樹木は育成することのない

Der Baum treibt unzahlige Keime,

無数の芽を生み、

die unentwickelt verderben, und

根をはり、枝や葉を拡げて

streckt weit mehr Wurzeln, Zweige und Blatter

個体と種の保存にはあまりあるほどの

nach Nahrung aus, als zu Erhaltung seines Individuums

養分を吸収する。

und seiner Gattung verwendet werden.

樹木は、この溢れんばかりの過剰を

Was er von seiner verschwenderischen Fulle

使うことも、享受することもなく自然に還すが

ungebraucht und ungenossen dem Elementarreich zuruckgibt,

動物はこの溢れる養分を、自由で

das darf das Lebendige in frohlicher

嬉々としたみずからの運動に使用する。

Bewegung verschwelgen. So gibt uns die Natur

このように自然は、その初源からの生命の

schon in ihrem materiellen Reich ein

無限の展開にむけての秩序を奏でている。

Vorspiel des Unbegrenzten und hebt

物質としての束縛を少しずつ断ちきり、

hier schon zum Teil die Fesseln auf, deren sie sich

やがて自らの姿を自由に変えていくのである。

im Reich der Form ganz und gar entledigt.

フリードリヒ・フォン・シラー

Friedrich von Schiller

この詩を読みながら、

ボクは長い長いエスカレーターを上っている。

真っ赤なそれの手すりにつかまり、

直線に詩へ向かって上っていく。

ひとつに見えていた詩のかたまりが、

やがて部分的な見え方をしてくる。

ひとかたまりだった語句が、

ゆっくり、ひとつひとつ、ばらばらになり、

小さな語句が、ボクの方に問いかけてくる。

毎日何万という人が、この詩を気にも留めずに通り過ぎる。

これほど大きく、これほど目立つところに掲げてあったとしてもだ。

通り過ぎるあなたは心に留めることなく、

大きなそれの前を通り過ぎながらも、

日常の瑣末な心配に心を砕きながら、駅へと向かっていく。

それが言葉の宿命なのだ。

たとえ核心を示す事に成功した明晰な言葉であったとしても、

そして、それを声高に訴える術を用意出来たとしても。

言葉とはおよそ無力であり、

やがて雑音となって消えゆく虚しいものなのだ。

言葉を力のある道具だと思って使うことは、

言葉を過信しすぎている。

花瓶に活けた一輪の花のように、

言葉はただそこに置くものであって、

誘導の力を持った便利な道具ではない。

もし、言葉がなんらかの力を持ちえた局面があったと

思いあたるならば、それは誤解である。

そのときは、その言葉がなくても、

同じ結論になっていたはずである。

マメヒコの劇 vol2 「ルンルー通りの三角形」

2014年8月

29(金)19:30~

30(土)14:30~ 19:30~

31(日)14:30~

《会場》

カフエマメヒコ宇田川町店

《作》

井川啓央(カフエ マメヒコ)

《キャスト》

平野勇樹

金そよん

みすともこ

お申込みの詳細はカフエマメヒコHPでご確認ください