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2017年12月24日 16時42分 JST | 更新 2017年12月24日 16時42分 JST

高齢者をインフルエンザから守る 里帰りのお土産にしないために

発症してしまった場合は、若者感覚で「寝てれば治る」と楽観せず、早めの治療につなげることが大切です。

全国でも、ちらほらとインフルエンザの注意報が出されるようになりました。間もなく本格的流行に入っていくものと思います。例年、12月までは小児を中心に流行しますが、1月からは高齢者へと拡がってゆきます。核家族化した現代社会ですが、お正月には世代間交流が活発になるからですね。里帰りのお土産にしないよう、十分に注意してください。

毎年の流行では、国内で600~1200万人(国民の5~10%)がインフルエンザを発症し、5,000~20,000人が直接もしくは続発する合併症で死亡します。これら死亡者の約9割が65歳以上と言われています。健康な若者にとっては「寝てれば治る病気」にすぎませんが、高齢者は十分に注意しなければなりません。とくに、インフルエンザで体力を奪われたあとに、二次性肺炎を続発することで多くの命が奪われています。

現代社会が警戒すべき特徴として、高齢者が集住するようになったことがあります。従来、インフルエンザは(免疫力が十分に育っていない)小児が集まる学校の感染症であり、登校停止(あるいは学級閉鎖)という措置で感染拡大を抑止してきました。でも、平成のインフルエンザは(免疫力が低下してきている)高齢者が暮らす介護施設の感染症という様相も呈しています。ところが、施設で感染拡大を抑止する方法論が定着していないようです。もちろん、施設閉鎖という選択肢はありません。

というわけで、インフルエンザ様症状の入所者を認めると、とりあえず救急告示病院に運んでくる施設が少なくありません。まあ、それは構わないのですが、インフルエンザと診断すると、担当者が「感染力がなくなるまで入院させてください。うちでは無理です」と主張して、連れ帰ろうとしないのは困りものです。場合によっては、救急ベッドに利用者を残したまま担当者が帰ってしまうこともあります。もちろん食事がとれないなど重症であれば、入院させた方がいいでしょう。けれども、感染対策だけのために救急告示病院を利用すべきではありません。

施設における飛沫感染予防策、発症している入所者の施設内隔離、濃厚接触者のリストアップと対応などなど、病院感染対策の経験をもとに「現実的な」介護施設における感染対策を提案してゆく必要があるように思います。そうしないと、結局のところ、救急告示病院の病床(しかも個室)が埋まってゆくのです。毎年のようにインフルエンザ流行期の病院機能は低下しており、今後の高齢化の進展に耐えられなくなる可能性すらあります。

もちろん、こうした専門的な感染対策だけではなく、日ごろから心がけるべきことがあります。お正月の里帰りを控えたいま、インフルエンザから介護施設を守り、ひいては地域医療を守るため、ぜひ皆さんでも確認いただければと思います。

1.入所者と職員にインフルエンザワクチンを接種する

シーズン入り前からやれることがあります。それは、介護施設に入所している方、そして介護職へのワクチン接種の普及です。これだけでも地域の医療と介護を支えることに繋がるでしょう。ところが、ここを中途半端にしている施設が少なくないのが実態です。こうした基本的なことを蔑ろにして、発症したら「うちではケアできません」と病院に寄りかかってくるようでは困りものです。

もちろん、インフルエンザワクチンは無意味だと考えている方々は、無理に接種しなくていいいです。私も勧奨はしますが、説得まではしていません。ただ、施設として入所者や職員に推奨することなく、その機会を提供していないとすれば問題です。ワクチン接種はハイリスクな集団生活の場を守る第一歩です。ぜひ、心がけていただければと思います。

2.インフルエンザ症状のある人は介護施設を訪問しない

発熱や咳などの症状がある人は、介護施設を訪問しないでください。介護施設はインフルエンザが流行しやすい環境であることを理解しましょう。もし、インフルエンザと診断されている場合は、症状が軽快しても感染力が残っている可能性があります。症状がなくとも発症してから5日間が経過するまでは、介護施設の訪問を待ってください。

どうしても訪問せざるをえない事情があるときは、最低限、マスクを着用すること。そして、アルコールによる手指消毒を徹底しましょう。施設内では(ウイルスが付着している手で)あちこち余計なところを触らないことも大切です。症状があるお子さんで、それが守れないようなら、やはり介護施設への出入りは禁止です。

※ 学校保健安全法施行規則では、インフルエンザの登校禁止期間を「発症後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児では3日)を経過するまで」としています。

3.入所者と職員のインフルエンザを速やかに診断する

インフルエンザ感染対策の基本は、早期発見と早期治療です。診断の遅れは、高齢者が重症化するリスクを高めるばかりでなく、必要な感染対策が実施されないため、施設内におけるアウトブレイクの原因となります。インフルエンザのシーズンに高熱や咳嗽などの症状を認めたときは、かかりつけ医師を早めに受診して必要な治療を受けるようにしてください。もちろん、発症している職員を休ませることは言うまでもありません。

タミフルなど抗インフルエンザ薬の意義について、いろいろと議論があるようです。日本で過剰に処方される傾向があるのも事実です。私自身、基礎疾患のない若い人には不要だと考えています。ただし、介護施設に入所しているような高齢者にとっては、抗インフルエンザ薬は必要な薬剤です。発熱期間を1日短縮させることで、肺炎などの合併症を予防し、体力の回復を早めることが期待されます。たった1日、されど1日。若者感覚で「寝てれば治る」と楽観せず、早めの治療につなげることが大切ですね。