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2018年02月06日 10時25分 JST | 更新 2018年02月06日 10時25分 JST

ただの風邪? 親としての直感こそ大切に

「風邪なんてものはさ・・・」というような口吻には、いささかの警戒が必要だと私は思っています。

インフルエンザの大流行です。私の病院でも、重症で入院となる患者さんが毎日のようにいらっしゃいます。夜間当直もかなり忙しくなってきました。

そんななか、風邪症状を有する方の医療アクセスについて、自制を求める意見を見かけます。もちろん、救急外来への不要不急の負荷はなるべく減らしていただきたいと思います。かかりつけ医がいるのなら、できるだけ日中にかかりつけ医を受診してください。

でも、子どもの発熱について安易に受診を抑制しようとする意見には賛同しかねます。とくに、「風邪なんてものはさ・・・」というような口吻には、いささかの警戒が必要だと私は思っています。

そう、風邪なんてものは寝てたら治ります。それには(いくつかの例外が頭をよぎりますが)感染症医の私も同意しましょう。でも、母親は「風邪じゃないかもしれない」から心配してんですよね。「風邪なんてものはさ・・・」には、そうした母親の不安に応えることなく、単に「子どもの熱なんて風邪でしょ」と切り捨てる無責任さがみてとれませんか?

すべての母親と、少なからぬ父親が、発熱している子どもについて、想像力を働かせながら先手を打って守ろうとしています。ある種の本能ですよね。私はその本能を信じます。ろくに看てもいない誰かが「病院へ連れてゆけ」とか、「ただの風邪だから連れてゆくな」とか口出しするんじゃなく、親として連れて行った方がいいと思うなら、迷わず連れてゆくべきですよ。その結果として風邪だったとしても、とやかく周りが言うべきではありません。

たしかに、深夜に、熱を出した子どもが眠い目をこすりながら、母親に連れられて受診してきていると、「夜は休ませてあげた方よいですよ。朝でも大丈夫です」とお話しすることはあります。あるいは、「インフルエンザだったら大変! タミフルを手に入れなきゃ」と妄信している母親がいたら、「お子さんは持病もないし、あえてタミフルのむ必要はありませんよ」とアドバイスをすることもあります。

血相を変えた母親から「インフルエンザかどうか診断してください」と詰め寄られることもあります。もはや、「子どもが熱を出しているときは、ゆっくり寝かしておいたほう良い」という母親の直感を見失ってますね。こんな患者さんが立て続けに受診してくると、当直している医者としても「インフルエンザぐらいで夜間救急に連れてくるなよ」と言いたくもなります。

ただ、それでも私たち医師は、個別のお子さんの特性を(あるいは母親のケア力を)捨象して、「夜間に連れてくる必要はない」とか、「タミフルはいらない」と一般化したことを言うべきではありません。

日本人は「熱を出した子どものことが心配なら、いつでも診療所や病院で診てもらえる」という素晴らしい医療制度を作り上げたわけで、いろいろあるなかでも、最後まで大切に守ってゆきたい社会制度じゃないですか?

「医療費がぁ!」と強調される方もいますね。いやいやいや、無駄ならもっとあるでしょ。日本の国民医療費42兆円のうち、風邪やインフルエンザによる負担なんて大した問題ではありません。アルコールやタバコの乱用、放置された生活習慣病に対する医療、介護力低下に対する社会的な入院医療、老衰に対する意思決定不在の延命医療・・・ 漫然と医療費を注いでいる現実を直視しましょうよ。

発熱した子どもの受診をひとくくりに抑制しようとするのではなく、すでに見えている「浪費」の部分をしっかり議論して、地域医療を守ってゆきたいですよね。そういう医療制度が日本にあることに感謝しながら・・・

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