夫が家を出たときに、娘に伝えたこと・伝えなかったこと

夫が家族を置いて家を出たとき、子どもに夫の悪口を言ってはいけません。「あなたは愛されている」と安心させるのです。どれだけ根深い怒りを抱いていようとも。
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いまにも泣き出しそうな、娘の大きな茶色の瞳を見て、私の胸は張り裂けそうでした。涙がいっぱいたまって、今にも溢れ出しそうです。今度だけはもしかしたら、私が違う答えを口にするのではないか、という望みで、その目は大きく見開かれていました。

「ママはあなたを愛してるわ。ママとあなたにはつらいことで、本当に残念だけど、パパは家を出るって決めたの。でも、あなたのせいじゃないのよ。パパは悪い人じゃない。たくさんの人を悲しませる悪い決断をしただけ。悲しい思いをさせてごめんね。世界中のどんなパパにも負けないくらい、ママはあなたのことを大事にするから。だって、あなたのことを一番愛しているのはママだもの」

私は娘にそう言いました。けれども、本当に言いたかったこと、頭の中を駆け巡っていたこと、あまりのつらさに今にも張り裂けてしまいそうな心の中を満たしていたことは、実はこんな感じでした。

「パパは私たちを置いて行っちゃったの。なぜって、パパは自分勝手だから。自分勝手すぎて、子どもなんてそもそも持つべきじゃなかったから。これまで家族にどれだけつらい思いをさせ、あなたにどんなひどい仕打ちをしてきたのか、毎日自分の目で見るべきなのに。人間のクズ、ゴミ。もう二度と会いたくないし、正直言って、いなくなったほうがずっと幸せよ」

本当のところ、目にいっぱい涙をためて自分を見上げる大きな瞳に向かって、何と言えばいいのでしょうか。何とかして許そうと日々、格闘している心の原因となっている人物のDNAが、娘の体の半分には入っています。そんな子に何と言えばいいのでしょうか。

「あなたは愛されている」と安心させるのです。夫の悪口を言ってはいけません。いくらそうしたくても、どれだけ根深い怒りを抱いていようとも。

彼女のDNAの半分を占めるその人は、悪い人ではなく、彼女の中には悪いところなど存在しない、と断言するのです。彼女が傷ついていることを認め、つらい思いをしていることを受け止めてあげなければなりません。なぜなら、彼女は胸の内を聞いてほしいと思っているから。

泣いてもいいのだし、話をしたい時はいつでもそばにいるよ、と彼女に伝えてください。四六時中、彼女がいかに素晴らしい子であるかをほめ、夫が家を出て行ったのは彼女のせいでは決してない、と言って聞かせなければなりません。

正直になってください。あなたはすべての答えを知っているわけではなく、何とかしたいけどそれができないのだ、と。でも、彼女には、あなたが知っている、最も正直で最も大切な真実を伝えましょう。それは、何があろうとも、あなたは彼女を心から愛しており、いなくなった人の分を埋め合わせるのに十分な愛を、死ぬまでずっと注ぎ続けるということです。

自分は決して娘を置いて出て行ったりしないと安心させてください。なぜなら、ともに過ごす一秒一秒が宝物なのですから。

彼女に伝えてください。パパは行ってしまったけれど、さいわいなことに、パパはその時、自分の最高の部分を置いて行ってくれたんだよ、と。

このブログはハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

[日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]