安倍総理も認めた、株価下落による年金の減額

株価が下落して、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用が悪化したときは、年金の給付額が減額されることがあり得るのか。

2月15日の衆議院予算委員会で、年金資金の運用について安倍総理に質問した。質問内容はシンプルだ。

株価が下落して、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用が悪化したときは、年金の給付額が減額されることがあり得るのか。

これに対して安倍総理は、「想定の利益が出ないなら当然支払いに影響する。給付に耐える状況にない場合は、給付で調整するしかない」と答弁。

正直驚いた。ここまで素直に答えるとは思っていなかったからだ。運用次第で、将来、年金支給額の減額もあり得ると認めたわけだ。

同時に「運用は長いスパンで見るから、その時々の損益が直ちに年金額に反映されるわけではない」とも述べたが、だからと言って短期の急激な運用悪化を放置していい理由にはならない。

実は、このGPIF、安倍政権の下で資産運用の見直しを行っており、2014年10月には、株式への投資比率を、それまでの24%から50%に倍増させている。官製相場を支えるのが目的だとも言われている。

この見直しの結果、運用が株価変動に大きく左右されるようになってしまった。実際、株価の急落に伴い、昨年7月~9月のわずか3カ月で7.8兆円の運用損を出し、今年になってからも、さらに約8兆円程度、評価損を拡大していると推測される。

さらに、本年1月9日に閣議決定された質問主意書への政府答弁書によれば、新しいポートフォリオの下で想定される最大の損失額は約21.5兆円に拡大しており、見直し前の最大損失額10.4兆円の約2倍となっている。要は、ポートフォリオの見直しで、年金の損失リスクが倍になっているのである。

そして、総理や財務大臣も答弁したように、肝心の株価は、中国経済や原油価格の下落などの外的な要因で変動するため、国内だけでコントロールできない。

それなのに、アベノミクスの成功を演出するという極めて政治的な目的のために、株式投資の比率を増やして国民の年金をリスクにさらし、挙句の果てに、将来の年金減額もあり得るなど、国民の皆さんは納得できるだろうか?

しかも、安倍総理を含め、誰も運用失敗の責任をとらない仕組みになっている。

国民の十分な理解なく進められる、こんな無責任な運用は一刻も早く改めるべきだ。

放置すれば、新たな「消えた年金」問題が発生することになる。

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