安倍外交は、北方領土の返還をむしろ後退させている

国益にかかわる重大問題である。
Valery Sharifulin/TASS

ウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」の全体会合で、プーチン大統領は安倍総理に対して、前提条件なしで年内中に平和条約を締結しようと提案した。

メディアの多くは、プーチン大統領が「突如」提案したと報じているが、世界中のメディアに聞かせるように、意図的に司会者に質問させて発言したとも考えられる。

北方四島の帰属問題の解決が平和条約締結の大前提だ。それなのに安倍総理は、プーチン大統領からの提案に対して、微笑んでいただけで何の反論もしなかった。外交的失態と言わざるを得ない。

外務省も茫然自失だと思う。事実上の領土問題棚上げ、先送り論。これまでの先人たちの合意を反故にする完全なちゃぶ台返しだ。会合後、早速、ロシア側の外務次官は、今後はプーチン大統領の提案も含めて協議すると答えている。

そもそも、つい2日前の日露共同記者会見で、 安倍総理は「北方四島の未来像を描く作業の道筋が見えてきた」と述べていた。しかし、いったい何を根拠に、どんな道筋が見えたのか総理に聞いてみたい。

5月30日の党首討論でも提起したが、領土交渉の本質的課題は、実は日米安保条約だ。つまり、返還された島に米軍の基地や施設を設置しないことをロシア側に確約できるかどうかだ。この問題に道筋をつけない限り、いかなる交渉にも意味がない。

いくら共同経済活動をやったとしても、ロシア支配を公式に認めることになるだけだ。むしろ、経済的利益だけ先食いされることになる。そもそも、北方領土でウナギの養殖やトマトの温室栽培を共に行うことが、どうして領土返還につながるのか。

共同経済活動の先に領土の返還を見通すことは困難だ。展望のない共同経済活動先行アプローチは、一旦、停止すべきである。

自民党総裁選が終われば速やかに臨時国会を開催し、予算委員会・外務委員会で議論すべきだ。国民民主党として開催を求めていきたい。

国益にかかわる重大問題である。

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