<過去最低の投票率となった我孫子市長選>県内トップクラスの投票率を維持していた我孫子市民が求めているものとは?

市長選に紐づいて行われるはずだった欠員2名分の我孫子市議会議員補欠選挙は届出が2名しかおらず無投票という結果になった。

2015年1月18日。全国で最初の基礎自治体の首長選挙が千葉県我孫子市で行われた。風は冷たかったが穏やかな冬晴れの1日だった。

同日市長選に紐づいて行われるはずだった欠員2名分の我孫子市議会議員補欠選挙は届出が2名しかおらず無投票という結果になった。今回、新たに市議となる2名は市議会議員選挙本選では残念な結果となっていることや、同年11月にすぐ市議会議員選挙本選が行われることからもたったの10か月間の任期であることや、立候補者がおらず当日に届出を提出した2人目の候補者はポスターすらも貼らなかったことに対し、市民から疑問の声が殺到した。

本選で勝ち上がってきている現在の市議たちは24の議席を32名で争い、大激戦を繰り広げてきているので、それぞれの議員の支持者は腑に落ちないというのが本音だ。

更には2名欠員でも特段支障のない現状からみても、補欠選挙を行う必要性を感じられないという市民の声が大多数を占めた。

しかしながら市区町村議会においては市区町村長選挙等が行われる場合、同時に欠員分の補欠選挙を行うことは地方選挙の仕組みであり、ルール違反をしているわけでもない。公職選挙法の問題であり、残念ながら現時点ではどうすることもできない。こういった事態に加え、市長選も信じ難いほど盛り上がりに欠けた。

我孫子市は政治に非常に関心が高い街と言われ、国政選挙では千葉県内で投票率がトップとなることもある。また市議選に至っては50%を切ったことがない。しかしながら、今回の市長選はいつもと全く異なる空気が我孫子市に広がっていたのを肌で感じた。

現職の市長は3選を目指すことを昨年から市議会の代表質問にて答弁している。前回2011年の市長選では40代の市議が対抗馬として戦い、一騎打ちとなった。結果、両者2万票台に乗せたが現職を上回ることはできなかった。こういった背景からも、二元代表制では存在してはならないが、いわゆる野党系議員グループから対抗馬が再挑戦するであろうと多くの市民が予想していたが、今回はそういったこともなく現職市長が無投票で再選されることはほぼ確実となった。その矢先、以前みんなの党(解党前)で県議会に立候補した60代の女性が突如出馬表明した。早々と駅頭を開始した現職市長は実績を強調した。

一方で市長選挙間近に出馬した新人候補者の具体的な政策や活動内容が見えにくく、対立軸がなかったため現職と比較することすらも困難となり、市内がしらけてしまった。そこに市議補欠選の無投票となり、追い打ちをかけるように流れは悪くなる一方であった。

そのムードは如実に投票率と得票結果に出てしまった。あんなに他市町村から我孫子市民の民度や投票率の高さを評価されていたにも関わらず、市のトップを決める我孫子市長選で過去最低の32.52%という数字となってしまった。なんと前回の市長選挙より13ポイントも下がった。しかも得票についてはダブルスコアではなくトリプルスコアで現職市長の圧勝という形となった。選挙費用には血税が千万円単位で使われることからも、むしろやらない方が良かったという声さえSNSでも見受けられる始末。

しかし、私はこの数字を見てあることに気付いた。実はこの最低投票率から政治へのアンテナを張っている有権者が多くいることを再認識することができたのだ。

意義のないと思う選挙には有権者は背を向け、手応えがある選挙は確実に投票に行く。

今回の投票率の低さを単に嘆き悲観するのではなく、冷静に分析をしてみると、この投票率の振り幅の大きさや上下こそが我孫子市民の政治への関心の高さの表れだともとれるのだ。現職の勝利は目に見えていたこと、政策・政治的対立軸がなかったということ、市議補選の内容に落胆したこと、全て有権者が実情を理解した故にとった行動であるということだ。市民は投票行動のモチベーションを無意識に必要としている。そしてこの我孫子市特有の投票率ギャップこそが有権者が地元政治家の人物や政策や活動をしっかりと見ているという証拠なのだ。

有権者には選ぶ権利として「投票」することができるが、市議補欠選挙は選ぶことすらもできなかった。複数の議員を選ぶ県議選や市議選では積極的に選んで投票をすることができる候補者を出していくことが必要である。有力な候補者が出馬すれば一気に投票率が伸びる期待や可能性を秘めている。つまり我孫子市における選挙の投票率の数字こそが我孫子市民の答えであり、求めていることだ。

この有権者の判断をそれぞれがそれぞれの立場で当事者として責任を感じ、危機意識を持って今年行われる2つの選挙に臨むことで、また一歩我孫子市は前に進む。

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