大学卒業まで児童養護施設に入居可能にー改善される児童環境

児童虐待死のうち、約40%が生まれてすぐに虐待死で亡くなっているという現状がある。

厚生労働省は、児童養護施設に残れる年齢を現行の18歳未満から22歳に引き上げる方針を固めた。さらに、大学などに進学し、施設を退所する子どもには最大で4年間、家賃や生活費を支給する制度を新たに設ける。

大学進学率は11.4%

背景には、18歳で施設を出ると、経済的な理由で進学が難しい上に、未成年が親の同意なしに住居を契約することもできず、寮のある職場など、限られた職にしか就けないという問題がある。

児童養護施設を出た子どもの大学進学率は11.4%となっており、全高卒者の53.8%に比べると圧倒的に低い(平成27年度厚生労働省)。さらに就職後1年以内で約4人に1人、26.6%が離職している(全高卒者は19.9%)。

親の同意がない場合でも予防接種可能に

また、別の記事で親権の過度な保護による弊害について触れたが(児童虐待を減らすために必要なこととは何か?)、先日、厚生労働省は4月以降から、保護者の同意がない場合でも施設側の判断で予防接種を行えるよう、省令を改正すると発表した。

むしろ予防接種に親の同意が必要というのが異常な気もするが、今までは親の同意が取れない場合、裁判所に親権停止を申し立てる必要があり、予防接種を行うまでに1年近くもかかるケースがあった。

大阪府の虐待予防のための取り組み

さらに、児童虐待死のうち、約40%が生まれてすぐに虐待死で亡くなっているという現状があるが、これは望まれずに産まれた子どもが虐待にあう可能性が高いということを意味している。

そのため、大阪府は妊娠中から支援対象を把握できるよう、市町村の担当者向けのガイドラインを作り、妊娠の届けが出た時点で、生活歴や経済状況などを確認するシートで妊婦の状況を確認する。

今後は特別養子縁組の普及が求められる

こうした中で、今後は特別養子縁組の普及も求められるだろう。特別養子縁組とは、6歳未満の小さな子どもと、その実親の「法律上の親子関係」をなくして、別の大人と新たに法律上の親子関係を作り出す制度だ。2014年度は513件成立しているが、2013年度に児童相談所が新たに委託先を決めた0歳児の85%が乳児院に入っている。

また、特別養子縁組のあっせんを2013年度に実施した児童相談所は全体の6割弱と、改善できる余地は多い。これに対し、自民党の野田聖子衆議院議員、公明党の遠山清彦衆院議員が特別養子縁組のあっせんについて定める議員立法をまとめており、超党派で今国会への法案提出を目指している。

一方、「子ども庁」をつくるべきだという声もある。23日、自民、民主、公明、共産など各党の国会議員有志約60人が、超党派の「子どもの貧困対策推進議員連盟」を発足させ、設立総会を開いている。その中で、参加議員から「省庁縦割りではなく『子ども庁』をつくって一元的に対応するべきだ」という発言も出ている(参考記事:貧困対策に「子ども庁」必要 政策提言へ超党派議連発足)。

海外には「青年事業庁」や「若者協議会」といった仕組みもあり、世界で最も少子高齢化が進む日本にも必要かもしれない(ちなみにそうした海外の仕組みを日本でも実現しようと、筆者も関わっているが、昨年から日本若者協議会という団体が立ち上がっている)。

昨年、所得の低い高齢者に3万円、計3600億円を給付することを決め、高齢者にばかり目を向けているというイメージの強い安倍政権であるが、最近は少しずつ子ども・子育て支援にも力を入れている(関連記事:若者政策まで自民党に取られた民主党はどこに存在価値を見出すべきか?)。

もちろん、まだまだ比重としては低いのが現状であるが、今後もさらなる若者や将来世代に向けた取り組みを期待したい。

関連記事:

(2016年2月28日「Platnews」より転載)

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