悲しいのは当たり前?― グリーフについて知らなかった4つのこと

グリーフは生きていくうえで避けては通れないものですが、それとどう向き合うかは誰も教えてくれなかったように思います。

「私は気がおかしくなったわけでも、性格が悪いわけでもないとわかってほっとした」

グリーフについて初めて知った人たちから、そんな言葉をよく聞きます。グリーフとは、簡単に言えば喪失によって起こる深い悲しみのことです。

大切な人やペットとの死別以外でも、離婚、引越し、職を失くしたときなど、私たちはグリーフを経験します。

グリーフは生きていくうえで避けては通れないものですが、それとどう向き合うかは誰も教えてくれなかったように思います。

今日はグリーフについてあまり知られていない4つのことをご紹介します。

1.グリーフは心だけではなく、体や思考にも影響を与える

ショック、否定、怒り、後悔、深い悲しみ、不安、孤独感など、グリーフにはさまざまな感情がともないます。しばらくの間何も感じない人もいますし、反応は人によって異なります。

また、グリーフは体や思考にも影響を与えます。物忘れが激しくなったり、物事に集中できなくなったり、体がだるく疲れやすくなったり、食欲の変化が現れたりする場合もあります。

2.大切な人が亡くなる前から、グリーフははじまる

実際に死別を経験する前に起こるグリーフを「アンティシパトリーグリーフ」と呼びます。

アンティシパトリーとは「予期しての」という意味で、大切な人の死を予期して起こるグリーフのことです。

先日、認知症の奥さんを介護している男性からこんなメッセージが届きました。

「妻の体はここにあっても、過去の妻と別れたような悲しみがあるのです。自分の中ではすでにグリーフがはじまっていると思います」

もし今、あなたが大切な人の死に直面し、否定や怒り、後悔などを感じ、不眠や物忘れなどの影響が出ているとしても、それは誰にとっても普通のことであり、決しておかしくなってしまったわけではありません。

3.子どももグリーフを経験する

大切な人を失ったとき、子どもも大人と同じようにグリーフを経験することを知っていますか?

考えてみれば当然のことなのですが、このことはあまり知られていないように思います。

大人のグリーフと比べ、子どものグリーフは複雑化しやすいです。

喪失を経験したあと、子どもは大人と同じようにさまざまな感情を抱きますが、子どもはその複雑な感情を的確に表現する言葉を持っていないため、気持ちが行動に出てしまいがちです。グリーフを乗り越えられなかった子どもは、のちに非行に走ったり、登校拒否やひきこもりになったりする場合もあります。

子どもたちもあなたと同様にグリーフになっていることを理解し、さまざまな面でサポートをすることが大切です。

4.グリーフになっている人は「励ましの言葉」を求めていない

大切な人の死から数日後、たいていの人は仕事に復帰し、まるで何もなかったかのように生活することになるでしょうし、そうしなければいけないと感じるでしょう。

もし、あなたがいつまでも悲しんでいたら、周りから思わぬ言葉をかけられることになるかもしれません。

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「いつまでも泣いていたら、〇〇(亡くなった人)が悲しむわよ」

「もっと前向きにならないとだめよ」

「何年も一緒にいられたんだからありがたく思わないと」

「〇〇は苦しみから解放されたんだから良かったじゃないの」

「あなただけじゃないんだから元気出して」

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相手は励ましのつもりでかけた言葉でしょうが、あなたは自分の気持ちをわかってもらえないことに驚き、ますます孤独感を募らせることになるでしょう。

周りの人にお願いしたいのは、「もうその話は聞いた」「あなたの気持ち、私にもわかるよ」などと言わずに、何度でも、ただ親身に耳を傾けてほしいということです。喪失を経験した人の気持ちは、自分には想像できないという前提で話を聞いてみることが大切です。

グリーフを乗り越えていくうえで近道はありませんが、特有の症状や過程を認識するだけでも、多くの人は安心できます。もし、あなたの周りで喪失を経験している人がいたら、この記事をシェアしていただければと思います。

この記事は、『死に逝く人は何を想うのか』(ポプラ社)の一部を修正して引用したものです。

(2017年3月8日 「佐藤由美子の音楽療法日記」より転載)

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