「今年亡くなった有名人」を振り返るとき、心に留めておいて欲しいこと

その人たちの家族や友人がどうしているか、思い浮かべる人はどれだけいるだろう。

この季節になると必ず「今年亡くなった芸能人・有名人」がメディアで取り上げられる。でも、その人たちの家族や友人がどうしているか、思い浮かべる人はどれだけいるだろう。

年末年始はグリーフ(悲嘆)を経験している人たちにとって、とてもつらい時期だ。忘年会、クリスマス、お正月などのさまざまな行事は、大切な人を失った人や介護中の人たちにとって、ストレスの原因になることが多い。

もし、あなたが今グリーフに苦しんでいるとしたら、自分の気が進まない行事に無理に参加せず、まずは自分に優しくすることを優先して欲しい。そして何よりも、ひとりではないことを知って欲しい。

私が初めてグリーフを経験したのは、音楽療法士のインターンとしてノースカロライナ州のホスピスで働きはじめた頃だった。患者さんが次々と亡くなり、最愛の人を失う家族を目の当たりにする毎日。心身共に疲れ果て、「クレージー」になったかと思った。

同僚のグリーフカウンセラーに相談すると、「僕らはみんなクレージーだよ。ここで働いていたら誰だってそう感じるときがあるさ」と彼は笑った。

この言葉でずいぶん気が楽になった。その後も彼からグリーフについて多くを学んだが、不思議なことにこのときの会話が一番印象的だ。おそらく、グリーフは「普通のこと」という認識が、それと向き合うにあたってとても大切なことだったからだろう。

実際に、グリーフカウンセリングの重要な要素のひとつは、「ノーマライゼーション」と呼ばれる。グリーフを経験している人が自分に起こっていることを普通のことだと自覚できるよう、カウンセリングを行うのだ。

つまり、グリーフについての知識を持つことはそれを乗り越えていく上で大切だということ。そのためには日ごろから「死」や「喪失」について、もっとオープンに語ることが必要だと思う。

来年から始める新企画「ポッドキャストBLISS」では、エンドオブライフ・ケア協会事務局長の千田恵子さんにグリーフについてお話を伺う。彼女は2014年に相次いでご両親を失い、それが今の活動につながっているという。

「死は悲しいことだけれど、悲しいだけではないことを知って欲しい」

千田さんは言う。

グリーフについて会話を広げることで、深い悲しみを抱えて生きている人たちにとって少しでも優しい社会になって欲しいと思う。

今年亡くなった人々のご冥福をお祈りするとともに、彼らの家族や友人たちが穏やかにこの時期を過ごせるよう願いを込めて。

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(2017年12月18日「佐藤由美子の音楽療法日記」より転載)

佐藤由美子(さとう・ゆみこ)

ホスピス緩和ケアを専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院を卒業後、アメリカと日本のホスピスで音楽療法を実践。著書に『ラスト・ソング』『死に逝く人は何を想うのか』。

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