日本ではインチキ医療が通用するのに、「自由の国」アメリカでは医療が厳しく規制されている理由

アメリカでは未承認の医療を医師がすることは、とても厳しく規制されています。
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先日の記事で、科学的な根拠のないがんの「免疫療法」について書きました。その後、「免疫細胞療法のエビデンスは確立されていないけど、患者さんにそれを提供することに問題はない」というコメントが届きました。

皆さんの中にもそう感じている人がいるかもしれません。実際日本ではこのような根拠ない治療が普通に行われていますので、「一体何がいけないの?」と思う人もいるでしょう。

驚くかもしれませんが、アメリカではこのような未承認の医療を医師がすることは、とても厳しく規制されています。そのため、医師が科学的な根拠のない治療を高額で提供している、などという話は聞いたことがありません。もしそのようなことをした場合、訴えられるでしょうし、医師免許を失うことになると思います。なぜでしょうか?

その答えは「医療倫理」にあります。この件についてわかりやすく説明された記事を見つけました。

医の倫理では、有効性や安全性が確認されていない治療は「臨床研究」として実施すべきであり、「被験者」として研究に協力してくれる患者からは費用は取らないで、研究費からまかなうべきだとされています。むしろ治験では、患者に日当や交通費に相当する謝礼が支払われます。にもかかわらず、免疫細胞療法を行っているクリニックは、本来なら臨床研究として行うべき治療を、患者から非常に高額なお金を取って行っているのです。だから、真っ当ながんの専門医たちは、「そんな治療で患者からお金を取るなんて許せない」と批判しているのです。

~「文集オンライ」より

承認されていない治療を行う場合、臨床研究として実施されるべきなのです。アメリカでは臨床研究においても「倫理」が非常に厳しいです。「自由」を重んじるアメリカ人は政府の規制が嫌いですが、医療に関しては日本よりかなり厳しく規制されています。その理由は、患者さんを守るためです。

本来医療とは患者さんのためにあるものですので、患者さん中心のケア (Patient-Centered Care)をして欲しいです。そのためには、「医療倫理」を見直す必要があると思います。

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(2018年10月25日「佐藤由美子の音楽療法日記」より転載)

佐藤由美子(さとう・ゆみこ)

ホスピス緩和ケアを専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院を卒業後、アメリカと日本のホスピスで音楽療法を実践。著書に『ラスト・ソング』『死に逝く人は何を想うのか』。