ベストセラー「超一流の雑談力」について考える

「これはどういうことなのか」という事の本質を、もうちょっとみんな考えた方がいいと思う。

「超一流の雑談力」という本が、大ヒットしているようだ。

毎日本屋の前を通るのだが、売れ筋本コーナーにもう何ヶ月もずっとある。最初は、「雑談」という本来あまり評価されないものに脚光を当てる事で、「なんか面白そうじゃん」という新しもの好きが買っているのかと思ったのだが、ここまでロングセラーとなると、これはもう、一般の人々が「雑談力を磨かなければ」と本気で思って買っているらしい。

「雑談力を磨いて、営業成績を上げなければ」

「雑談力を培って、仕事の評価を上げよう」

「人間関係がうまくいかないのは、雑談力がないからだ」

などと思った人が、この本にすがっているのだろう。

が、しかし、ちょっと冷静に考えてみて欲しい。雑談というものは、「雑学」という知識のバックボーンがあってはじめて面白い雑談が出来るのである。

当たり前の話だが、「小論文の書き方」をマスタ−しても、出されたテーマに対する知識のバックボーンがなければいい小論文は書けない。それと同じで、雑学がなければ、雑談で評価されるようにはならない。

「あいつは何でも知っている」「あいつは面白い事しゃべる」と評価されたいと思うのなら、それなりの「雑学を仕込む努力」が必要なのである。

本気で雑談力を上げたいのなら、雑学のインプットに励む事が必要で、週刊誌を読みまくるとか、ワイドショーを欠かさず見るとか、話題のマンガを読破するとか、Youtubeやニコ生を視聴するとか、スポーツでも野球でも芸能界でも人よりも「語れる」分野を持つとか、そういう「地道な努力」をしなければならない。

「地道な努力を惜しんで、効率良く『ノウハウ』を吸収してうまくやったほうが頭がいい」

という雰囲気が,今の日本を席巻している。

その行き着いた先が「就活」で、エントリーシートの書き方とか、面接の受け方とか、そんなものを身につけるために、大学生が右往左往しているのをみると、日本の大学って何なんだろう? っと思ってしまう。本当の力は、地道な努力の積み重ねの上にしかつかない。

日本では大人気の「聞くだけで英語が話せるようになる」式の英語学習法は、海外の人からは驚かれるらしい。

「日本では,聞くだけで英語が習得できる魔法の教材があるらしいぜ(笑)」的な。

韓国の方のTOEICのスコアは、非常に高いが、TOEICが満点近い韓国人の奥様を持つ方にどうやって勉強しているのか聞いたら、「地道に単語を覚えてる。コツコツやってる」ということである。

魔法はない。

だから、雑談力を高めたいなら、「雑談力を磨く」ノウハウ本を買うよりも、そのお金で、好きな雑誌を読んだり、映画をみたり、話題の店に飲みに行ったりしたほうがよっぽど良いのではないかと思うのだけれど、そんな事にも気付かずにせっせとこの本を買って読んでしまう人がこれほど多い事に、ちょっとこの先の日本が心配になってしまう。

「これはどういうことなのか」という事の本質を、もうちょっとみんな考えた方がいいと思う。

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