日本の子どもの貧困問題 広告費2億円を考える

私は「『子どもの未来応援基金』は、2億円を宣伝に使うのなら、この2億円を基金に入れた方が良かった」という指摘は間違っていると考えます。

私は、日本の子どもの貧困を解決するために無料の学習支援を展開している特定非営利活動法人キッズドアhttp://www.kidsdoor.net/

の代表をしています。

活動資金を集めるために、毎日寄付集めをしていますが、本当に寄付集めは大変です。

「子どもの未来応援基金」で、2億円以上のお金を広報関連に使っているのに2,000万円しか集まっていないから、費用対効果が悪い、という指摘があります。

□「2億円以上かけて寄付は2千万円」 蓮舫氏が批判

2億円を宣伝に使うのなら、この2億円を基金に入れた方が良かった、この2億円をNPOなどに配れば良かったという意見もあります。

私は、この指摘は間違っていると考えます。

子どもの貧困のことを広く知ってもらうために、たった2億円しか使っていないから、寄付が集まらないのではないでしょうか?

子どもの貧困がどれほど深刻なのか、まだまだ国民の理解は進んでいません。基金に寄付を集めるにも、子どもの貧困を改善するために、児童扶養手当を改善したり、教育格差をなくすために奨学金の制度を整えたりするにも、国民皆が「そうだよね、この問題,重要だよね」と認知してもらうことが必要です。

そのために必要な経費を使わなければならないし、個人的にはまだまだ少ないと思っています。もっと、じゃんじゃん宣伝して欲しいです。

私は2007年にキッズドアの前進団体を立ち上げて、足掛け9年目です。当時からずっと「日本の子どもの貧困」を軸に活動をしていますし、ぶれてはいないつもりです。おかげさまで随分メディアなどにも取り上げてもらっています。しかし、寄付集めには本当に苦労しています。

驚くぐらい集まりません。

子どもの貧困に取組んでいる団体としては、活動の規模を含め日本でも有数の団体だと自負していますが、びっくりするぐらい寄付は集まりません。

月々1000円とか3000円のマンスリーサポーターを募集していますが、毎年100人の新規サポーターを獲得しようと計画して、未だ達成したことはありません。本当に、恥ずかしいぐらいマンスリーサポーターは少ないのです。

なぜなら、私たちの活動を知っている人がまだまだ少ないからです。

キッズドアは、寄付集めのための広告宣伝費はほとんどありません。Web広告にお金をかける余裕がないため、寄付の呼びかけは、自社のHPやFACEBOOKで呼びかけたり、メールマガジンでお願いするぐらいしか方法がありません。もちろんテレビCMや電車の中吊り広告なんて出せません。

知ってもらわない限り、寄付は集まらないのです。

政府が2億円,広報宣伝費を使った事にあなたが怒っているとしたら、ぜひあなたにお伺いしたい。

あなたは、日本の子どもの貧困を解決するために、寄付をしたことがありますか?

ボランティアをしていますか?

勉強会やシンポジウムに来た事がありますか?

あなたは、日本の子どもの貧困の事を知っていますか?

もし、寄付をした事がないとしたら、その理由はなんだと思いますか?

寄付をするに値しない問題だからですか?

日本の子どもの貧困には興味がないからですか?

子どもの貧困は、結局親の自己責任なんだから、手をさしのべる必要はないと思っているからですか?

自分とは関係ない課題だと思っているからですか?

それとも、日本の子どもの貧困について良く知らないからですか?

ここからは、少しセンシティブな発言になります。

誤解を招かないように前置きをしますが、私は、日本の子どもだけが幸せになればいい、他国の子どもなんてどうでもいいと思っているわけではありません。世界中のすべての子どもたちがHAPPYに暮らせるようにと願っています。そのために、自分が出来る事として、日本の子どもの貧困に取組んでいます。だって、私たち日本人が動かなければ、日本の貧困状況にある子どもたちは、誰も救ってくれませんからね。

さて、みなさんは、ユニセフ募金をした事はありますか?

日本ユニセフ協会さんの収支報告書をご覧になった事はありますか?

日本ユニセフさんは2014年度は、日本から約170億円の寄付を集めています。現在子供の未来応援基金に集まっている寄付の約1000倍です。

170億円のうちの169億3784万円が開発途上国の子どもたちのために寄付され、540万円が東日本大震災の緊急募金として寄付されたそうです。

そして138億円をユニセフ本部に拠出しました。このお金は,開発途上国の子どもたちの支援のために使われるのでしょう。

残りの31億円は、日本国内での募金・広報活動、子どもの権利に関わる啓発・アドボガシー活動、国際協力に携わる人材の育成活動等に使われています。

これは極論をいえば、より多くの募金を集めるための(多くの方に開発途上国の大変さを知ってもらい、子どもの権利を知ってもらうことで寄付を集める)費用と言っていいでしょう。

いわゆる広告費にあたると思われる啓発宣伝事業費だけでも3億7千万円です。募金活動事業費は17億円ぐらい使っているようです。

極論をすれば、あなたがユニセフに1万円を寄付するとそのうちの1850円(18.5%)は,寄付集めのための費用に使われているのです。

例えばワールドビジョンさんの2014年決算書によれば、33億円をチャイルドスポンサーシップという寄付で集め、その他寄付と合わせ37億5千万円の寄付があります。寄付を集めるための啓発教育費には8億6千万円を使っているようです。

私はこれを悪いことだと言いたいわけではありません。寄付を集めるにはそれだけのコストがかかるのだと知っていただきたいのです。

これだけの費用を使い、日本国民だったら誰でもが知っているユニセフというブランドがあるからこその、毎年170億円の寄付です。ワールドビジョンさんの33億円です。

ほとんどの日本人が知らない「日本の子どもの貧困」、そして開発途上国の子どもたちと違い、見た目ではわかりづらい相対的貧困や,諸外国に比べ教育にお金がかかり過ぎるという日本独特の構造から生じる教育格差に苦しむ子どもたちのことを知ってもらい、寄付をしてもらうためには、広告宣伝費は必要なのです。

もうひとつ、みなさんに知っていただきたい事があります。

私たちは,あまりに寄付が集まらずくじけそうに時に、自重気味に「日本人にとって、子どもは、犬猫以下だから」と言うことがあります。

犬や猫などを支援をしているNPO法人さんには、ユニセフやワールドビジョンのような知名度はなくても、しっかりと寄付を集めている団体さんがたくさんあります。

例えばYahoo!基金にのっていた団体さんは107000人から55百万円以上の寄付を集めています。

他に1000万円以上の寄付を集めている団体さんがたくさんあります。

「かわいそうな日本国内の犬や猫」のために寄付をする人はたくさんいるのに、「日本の子ども」のために寄付をする人は、まだまだ本当に少ないのです。

これは、多くの人が、貧困な子どもよりも犬や猫のほうが、よっぽど大事だと思っているからでしょうか?

それとも、日本の子どもの貧困の事を知らないからでしょうか?

この2億円については、ありがたい事に、

「この2億円を、実際に活動しているNPOなどに配った方がよっぽどいい」

というような発言も見られます。

皆様に活動をそのように認めていただき、本当にうれしいです。

しかし一方、2億円では、直接的に子どもの支援をするにはあまりにも少なすぎるのです。日本の子どもの貧困率は16.3% およそ6人に1人が貧困です。

2億円を、無料の学習会や子どもへの食料配布に使っても、焼け石に水です。そして、直接支援で使ってしまえばそれは1年で終ります。

せめて来年も同じように子どもを支援しようとしても、その時にはもう2億円はないのです。

限られた予算である2億円をどのように使うのかと考えた時に、まずは日本の子どもの貧困を、日本国民皆様に広く正しく知ってもらう、そのための費用として使うことは、決して間違った使い方ではないと思います。

より多くの方に、「日本の子どもたちも大変なんだ」と知ってもらえて、例えば毎年1万円をユニセフに募金している人が、

「日本の子どもたちも大変だから、日本の子どもにも1万円募金しよう」

と思ってくれれば、170億円の寄付が集まります。

ユニセフに募金をしている人が、日本の子ども達にもせめて、1割ぐらいは寄付しましょう、と思って行動してくれれば。17億円の寄付になります。

超短期的に見て、2億円が無駄遣いだと政府を責めるのではなく、なぜ、貧困な状況にある日本の子どもたちのためには寄付が集まらないのか?という原因をきちんと捉えないといけません。

奇しくも先日、尊敬する方から、「子どもの貧困を政争の具にしてはならない」と言われました。まさしくその通りで、政権批判や党利党閥のために「子どもの貧困」や「子ども若者支援」を利用すると見誤ります。

誰もが知っているユニセフ募金と同じように、日本の子どもたちのための寄付の受皿として「子どもの未来応援基金がある」ということを知ってもらうことは、これから、長い時間がかかる、子どもの貧困を解決する活動資金を継続的に確保する上で非常に重要だと私は考えます。

さらに言えば、NPOの活動のみで日本の子どもの貧困が解決するはずはなく、日本の子どもの貧困を解決するために、もっと子どもへの手当の額を増やす、医療へのアクセスを無料にする、給付型の奨学金を増やす、ひとり親家庭の就労支援や教育訓練のための費用を増やす、若年層の非正規雇用の正社員化や同一賃金同一労働など進める、などなど、大きな財政支出や、産業界全体を巻き込んでの大変革が必要です。

極論を言えば、財源が逼迫する中で、高齢者福祉を少し削ってでも,子どもたちを支えよう、企業の利益を少し減らしてでも、若年雇用を支えよう、という選択を、私たち国民一人が支持するかどうか、なのです。

2億円の無駄遣いと政府を糾弾していても何も始まらないのです。

これは、私たち国民すべての問題であり、私たちがどう行動するかが、問われているのです。

どうか、日本の子どもの貧困について、みなさんもっと関心を寄せてください。

日本の子どもの貧困問題を啓発するために、政府が作ったHPはこちらです。

子どもの未来応援プロジェクト

ぜひ、私たちの活動を知ってください。

NPO法人キッズドア http://www.kidsdoor.net/

3月14日、15日には,子どもの貧困に関わる団体が15団体も集まるシンポジウム「Kids' Day JAPAN」があります。無料です。ぜひ来てください。

例えば、高校生がこんな素敵な子どもの貧困のサイトを作ってくれました。とても読みやすくわかりやすいので、ぜひ見てみてください。

(なんとコンテストで最優秀賞,文部科学大臣賞などをとったそうです)

SITK子供貧困サミット

まずは知る事です。

そして、とにかく何かしたいと思ったら、まずは月々1000円からのキッズドアのマンスリーサポーターになってみませんか?

クレジットカードがあれば、今すぐネットからできます。

子供の未来応援基金に、あなたが寄付することもできるのですよ

あなたが行動を開始することが、とても重要なのです。

▼写真をクリックするとスライドショーが開きます▼

ロサンゼルス 所得格差が分かる写真 

注目記事