医師不足の解決には医師同士の「使える」ネットワークが不可欠

ネットワークを広げていくためにはどうしたらよいだろうか。

救急患者の受け入れ拒否、救急搬送のたらい回しが問題となっている。断る理由として当直医の専門外であるというのがよくあげられる。しかし、専門外の疾患だったとしても、各疾患ごとに相談することができるネットワークを当直医が持っていれば状況は変わるかもしれない。

ある日曜日の夜、福島県南相馬市立総合病院脳神経外科で勤務する筆者の携帯電話に大町病院に一人内科常勤医で働く山本佳奈医師から連絡があった。

「80代の女性が現在入院中なのですが、意識レベルが悪化していて困っています。麻痺はなさそうです。」という。

まず脳卒中であるかどうかを判断する必要があり、そのためには画像検査が不可欠であることを伝えた。休日の夜間であったため放射線技師は病院内に待機していなかったが、彼女はすぐさま放射線技師を呼び出して画像検査を行い、結果をスマートフォンで送ってきてくれた。その画像から脳梗塞で致命的な状態であることがすぐわかり、急いで転院させるように伝えることができた。その甲斐もあり、一命をとりとめ、現在は食事を口から取り、話すことができるまでになった。患者様のご家族も「ここまで回復できてよかったです」と安堵されていた。

今回のケースは専門外のことでも気軽に相談できるネットワークがあることで、院内急変が救えた事例である。こうしたバックアップがあれば、院内急変だけでなく万が一専門外"かもしれない"ということで救急車、救急患者も断る必要がなくなるのではないだろうか。

特に高齢者にとっては地域で救急を受け入れてもらえ、医療を簡潔させることができることは非常に助かることである。遠い大病院に搬送された場合、帰宅する足がなくて困ったり、入院する場合でも家族の見舞いが困難なことがある。

こうしたネットワークが「使える」ためにはただ知っているだけではなく、電話相談などを行うための敷居の低さが不可欠である。今回のケースでは以前同じ病院で働いていた経験があったため、気兼ねなく電話一本で相談できる環境が整っていた。

ならばネットワークを広げていくためにはどうしたらよいだろうか。一つの方法としては病院間での医師などの交流や診療応援などが考えられる。ただ、現時点では南相馬市立総合病院の医師は地方公務員で基本的に兼業禁止である。

しかし、診療応援として例外的に認めることが深刻な医師不足の緩和につながると考えられる。医師不足や救急車のたらい回しが叫ばれる中、医師が少ない地域でこそ、積極的に患者を診察し、適切な医療を提供できるようにネットワークを構築し、有効に活用していかなければならない。

(2017年12月19日「MRIC by 医療ガバナンス」より転載)

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