改正風営法の施行にあたって ナイトカルチャーを守るために続けていきたい努力

ナイトカルチャーを愛する人たちは、ただナイトカルチャーを楽しむだけではなく、社会の一員として、他の価値観を有する人たちに敬意を払うことが大切です。
日浦一郎

ハフィントンポスト日本版の読者の皆さん、はじめまして。クラブとクラブカルチャーを守る会(略して「CCCC」といいます)の会長を務めておりますラッパー/DJのZeebraです。

今年6月23日に風営法が改正され、ダンス営業規制が撤廃されることになりました。

もともと風営法では、ナイトクラブは風俗営業とカテゴライズされ、風俗営業の許可を得なければ営業できないとされてきました。しかも、仮に風俗営業の許可をとったとしても、深夜(午前0時から日の出まで)には風俗営業を営んではいけないため、深夜にナイトクラブを営業することは違法でした。

私は、ラッパー/DJになる前からナイトクラブに通い、そこで奏でられる音楽や集う人々に深く影響を受けてきました。ナイトクラブで過ごした経験が、今の自分の音楽や活動スタンスに活きていると思っています。そんな、私に大きな影響を与えてきたナイトクラブという場所が、日本では違法になってしまうということに疑問や違和感を感じ、今回の風営法改正運動に関わっていくようになりました。

2010年ころから警察によるナイトクラブの取り締まりが厳しくなってきたことや、2012年に大阪のナイトクラブNOONの元経営者である金光正年さんが逮捕・起訴されたこと(なお、先日、最高裁でも金光さんに無罪判決が出て、無罪が確定しました。おめでとうございます!)などを受けて、風営法改正を求める声が大きくなっていきました。

その後、Let's DANCE 署名推進委員会が集めた風営法改正を求める15万筆超の署名を受けて、超党派の国会議員で構成されるダンス文化推進議員連盟が発足しました。国会議員の皆さんからは、ロビー活動を行うためにはナイトクラブの業界団体を作ることが必要だと言われたのですが、当初は事業者の皆さんが表に立つことが難しかったため、2013年4月に、DJ/アーティストが集まってCCCCを結成しました。

私たちは、普段あまり着ないスーツに身を包み、国会議員に会ったり、事業者の皆さんと勉強会を開いたりするなど、地道にロビー活動を続けてきました。ロビー活動では、ナイトクラブの関係者の方はもちろんのこと、社交ダンス、サルサダンス、ブラジリアンダンスなどの様々なダンスエンターテインメントの担い手の方々が協力してくれ、風営法改正に向けた大きなうねりを生み出していきました。

途中、直前まで通ると思っていた改正案が廃案になるなど、無力感に苛まれる出来事もありましたが、遂に昨年6月に改正風営法が成立し、そして、今年6月23日に施行されることになりました。

改正風営法については、まだまだ問題点は残っていますし、私としては、6月23日がやっと新しいスタート地点だという認識ではいます。でも、少しずつではあっても、問題のある法律が時代の要請に応えてアップデートされたということは喜ばしいことだと思っていますし、みんなが動くことで法律というルールを変えることができるのだということが証明されたのは、たいへん意味のあることなのではないかと考えています。

もっとも、風営法が改正されても、騒音や迷惑行為がなくならなければ、市民の理解を得られず、すぐにナイトクラブに対する営業規制が強化される可能性もあります。このような事態を防ぐためには、クラブシーンを形成する重要な要素であるユーザーのマナー向上が不可欠であると考えています。

そこで、CCCCでは、「PLAYCOOL」というナイトカルチャーにおけるマナー向上キャンペーンに取り組んでいます。多様な文化が受け入れられる土台を作るためには、別の価値観を持つ人たちに対して、文化が理解されなくても、その文化の存在自体を許容してもらうようにする必要があります。そのためには、ナイトカルチャーを愛する人たちは、ただナイトカルチャーを楽しむだけではなく、社会の一員として、他の価値観を有する人たちに敬意を払うことが大切です。

深夜に道路で騒がない、道にゴミを捨てないといった最低限のマナーを守り、近隣の住民へ敬意を払いながらクールに遊ぶことが、ナイトカルチャーを守り、文化の多様性を生み出す源泉になるのです。このような「PLAYCOOL」の活動の一環として、私は、渋谷区観光協会が任命する渋谷区観光大使ナイトアンバサダーにも就任しました。

今後も、風営法をよりふさわしい形にアップデートさせていく活動を継続するとともに、「PLAYCOOL」に取り組み、自分たちの遊び場を守っていくための不断の努力を続けていこうと思っています。

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