メディアに好かれる「グーグル」と、メディアに嫌われる「フェイスブック」

嫌でも圧倒的な普及と拡散性の高いフェイスブックに頼らざるを得ないのが現状だ。
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メディア会社はグーグルに対し好意的になっているが、フェイスブックを嫌っているようだ。

オンラインのニュースメディア市場では、テック会社であるプラットフォームの力が強大化し、メディア会社の主導性が損なわれようとしている。先月(2017年12月)、ロイター( Reuters Institute for the Study of Journalism and the University of Oxford)がグローバルの主要パブリッシャーの主導者を対象に実施した調査によると、パブリッシャーの半分近い44%が1年前に比べプラットフォームの影響力が増していることに警戒心を抱いていると答えた。警戒していないパブリッシャーはわずか7%しかいなかった。

では現時点で、パブリッシャーが主要プラットフォームのそれぞれをどう見ているかのだろうか。各プラットフォームに対して肯定的見方から否定的見方まで5段階で評価したスコア結果が興味深い。図1に示すように、最も高いスコアを得たのがグーグルで、最も低かったのがフェイスブックとなっていた。スコアが3以上のプラットフォームが、パブリッシャーから好意的に見られていることになる。

(ソース:Reuters Institute for the Study of Journalism)

図1 パブリッシャーがポジティブに捉えているプラットフォームと、ネガティブに捉えているプラットフォーム。

今回の調査では、欧州を中心に米、豪、日本、韓国、ケニアなどを含む29か国の伝統メディアや新興メディア(デジタルオンリー)のリーダー(CEOや編集責任者など)194人を対象に実施した。通常ロイターのこの種の調査では、ニュースメディアが主対象となる。

オンラインメディアはこぞって、オーディエンスとの出会いの場としてプラットフォームへの依存を高めている。その中で際立っているのが、検索エンジンのグーグルとSNSのフェイスブックである。米国だけではなくて欧州や途上国も含めた世界のパブリッシャーにとって、両巨人への依存が非常に高くなっている(例外的に日本は、中国やロシアと同様、Facebookにあまり依存していない。「FBに頼る海外のニュースメディア、FBに頼らない日本のニュースメディア」を参照)。

米トラフィック解析会社Parse.lyの測定結果からも両巨人の突出が明らかである。米国のオンラインパブリッシャーの記事への外部からの参照トラフィックのシェアを見ても、最近の1年間でも図2のように、3位以下を大きく引き離してグーグルとフェイスブックが競い合っている。

(ソース:Parse.ly)

図2 パブリッシャーへの参照トラフィックの流入元シェア。

参照トラフィックでもグーグル検索がフェイスブックSNSに大逆転

もともと4年前頃までは、グーグル検索からのトラフィックを増やすことに、パブリッシャーは躍起になっていた。ところが「検索」から「ソーシャル」への流れがモバイルシフトに乗じて加速化し、2年半ほど前に一つの転換期を迎えた。Parse.lyの測定で、オンラインメディア(デジタルパブリッシャー)への外部トラフィックで、フェイスブックがグーグル検索に2015年6月に追い抜いついたからだ。それ以降、次第に両者の差は開くようになり、一時、米メディアサイトへの全流入トラフィックのうちの45%前後がフェイスブックから、35%前後がグーグル検索からとなり、フェイスブックが事実上独走態勢に入ったかのように思えた。パブリッシャーは競って、フェイスブックに記事を投稿するようになった。

ところが、「メディア接触の主導権争い、「フェイスブック」の独走に「グーグル検索」が奪回迫る」で紹介したように、昨年の初夏あたりから、グーグル・トラフィックが巻き返しフェイスブック・トラフィックに追いつき追い抜き始めたのだ。さらに昨年の秋以降は、図2でもはっきりと見られるように、グーグルのシェアが急上昇しフェイスブックが急降下していった。図3の直近の1か月間のシェア推移からも、両者のトラフィック差が2倍に広がってしまった言える。

(ソース:Parse.ly)

図3 直近の過去30日間の参照トラフィックの推移。昨年の春から夏にかけて、グーグルがフェイスブックに抜き去ってからは、両者の差が日々拡大している。直近(2018年1月17日)でも、グーグルが45%でフェイスブックが22%と大差がついてしまっている。

ニュースフィードのアルゴリズムの変更で、トラフィックが激減するパブリシャーも

1年ほど前から、フェイスブックからのトラフィックが減って、月間ユニークユーザー数とかページビュー数が落ちこんだと、不満を漏らすパブリッシャーが増え始めていた。Parse.lyの調査でも、2017年2月から10月までの間に、測定対象のパブリッシャーサイトの約2/3でフェイスブックのトラフィックが減っていた。残りは増えていたことになる。その期間で半数近くのパブリッシャーは20%以上もフェイスブックのトラフィックを減らし、さらに5分の一のパブリッシャーに至っては50%以上もトラフィックが激減した。フェイスブックのトラフィックに大きく依存している新興パブリッシャーにとって大打撃となったのだ。

多くのフォロワーを擁しているパブリッシャーが大量の記事をフェイスブックに投稿しているにも関わらず、当てにしていたフェイスブックのトラフィックが減り始めているのである。明らかにパブリッシャーからの投稿コンテンツ(大半がリンク情報)がニュースフィードに露出する頻度が減っているのだろう。つまり、フェイスブックが頻繁に実施するニュースフィード・アルゴリズムの変更が大きく影響したのは間違いない。

フェイスブックは3~4年ほど前から、パブリッシャーのコンテンツをニュースフィードに優先して表示するように、アルゴリズムを変えてきていた。それに合わせて、パブリッシャーのフェイスブック依存度が年々高まっていった。だが昨年から風向きが変わってきた。パブリッシャーのコンテンツを優遇しても、フェイスブックの広告売上アップに大きく貢献しないことや、本来のコミュニティーサイトの役割が薄まりユーザーの滞留時間が減る懸念が高まっていた。そのため、友人のコンテンツを優先表示するアルゴリズムの変更はジワジワ進められていた。

それに加えて、フェイクニュースなどの信憑性の無いコンテンツをフェイスブックが拡散させ、蔓延させたと批判が高まり、また増え続けるクリックベイトにも手を焼いていた。その対策として、ユーザーに不利益で信頼のおけないンテンツを表示しないように手を加えていた。グレイゾーンのニュースコンテンツが排除されるようになり、中にはまともなニュース記事までも犠牲になったりしたという。

こうした混乱の中で、フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏が先日(2018年1月19日)、信頼できるパブリッシャーのニュースを優先して表示していきたいと明言した。信頼できるパブリッシャーをどのように定めていくかが物議をかもしそうだが、ともかくニュースコンテンツは排除していかないということだ。

パブリッシャーはグーグルのAMPを好み、フェイスブックのインスタント記事を嫌う

としても最近のフェイスブックのアルゴリズムの変更で振り回されきただけに、冒頭のロイターの調査でフェイスブックに対して、世界のパブリッシャーの多くがフェイスブックに対して不満を募らせているのは仕方がない。フェイスブックだけではなくてグーグルに対しても、パブリッシャーに分配する収益を増やすべきだと主張しているが、特にフェイスブックへの不満が目立ってきた要因の一つに、インスタント記事の登場がある(「フェイスブックの分散型メディア「インスタント・アーティクルズ」、一気にアジアや南米のグローバル展開に突入」)。

インスタント記事では、フェイスブックに投稿するコンテンツを、リンク情報だけではなくて記事全文にしなければならない。わざわざ時間をかけてパブリッシャーサイトに飛ばなくても、記事全文を高速表示できるようになる。ユーザーにとって高速表示はありがたい。それ以上に、フェイスブックにとって大きなメリットをもたらす。ユーザーを自分のフェイスブックのドメイン内に留めておけるし、インスタント記事内の広告枠も同社のルールに従わせることになる。

2015年春から段階的に、世界中の主要パブリッシャーにインスタント記事の採用を強力に働きかけた。インスタント記事をニュースフィードに優先表示させることを臭わさせられたこともあって、多くのパブリッシャーが採用に動いた。パブリッシャーにとって不利な条件であったが、スマホ時代のコンテンツの高速表示は避けられない動きでもあった。

ところがグーグルも同じようなモバイルで高速表示できるAMPを立ち上げた。インスタント記事よりオープンで、グーグルの検索エンジンだけではなくてTwitterなどのプラットフォームでも利用できる。それにパブリッシャーにとって魅力なのは、AMPを採用したコンテンツがグーグル検索結果の上位に表示されやすいことである。パブリッシャーが雪崩を打って、AMPの採用になびいた。図4でも明らかに、パブリッシャーへのトラフィックでインスタント記事が伸び悩む一方で、AMPが急増している。AMPの急伸のお蔭で、図2に示したように、パブリッシャーへの参照トラフィックの流入元シェアで、グーグルがフェイスブックに対し2倍の大差をつけるに至っている。

(ソース:Parse.ly)

図4 フェイスブックのインスタント記事とグーグルのAMPのトラフィックの推移

嫌でも頼らざるを得ない

フェイスブックに対して警戒心を募らせているパブリッシャーも、ミレニアル世代に代表される若い人にリーチするソーシャルプラットフォームとなれば、やはり嫌でも圧倒的な普及と拡散性の高いフェイスブックに頼らざるを得ないのが現状だ。バイラル性の高い記事を武器に、フェイスブックを舞台にして大躍進したBuzzFeedやHuffPostのような新興パブリッシャーが、しばらく苦戦を強いられそうだ。

NewsWhipの測定データをプロットした図5でも、フェイスブックにおけるBuzzFeedとHuffPostの月間Interaction数(=Comment数+Share数+Like数)が、この2年間で急速に落下している。一方で、高級ニュースメディアと言われているNYTimesとWashington Postは、有料コンテンツの制約がありながらも、エンゲージメントに関わるInteraction数はさほど減っていない。インスタント記事の採用からいち早く離脱し、ファイスブック依存離れを宣言しているNYTimesが、Interaction数を増やしているのが興味深い。マーク・ザッカーバーグ氏が先日、信頼できるパブリッシャーのニュースを優先してニュースフィードに表示していくと明言したことを、先取りして実施しているのかもしれない。

(データ:NewsWhip)

図5 有力ニュースパブリシャーのInteraction数(=Comment数+Share数+Like数)

◇参考

Journalism, Media and Technology Trends and Predictions 2018(Reuters Institute for the Study of Journalism)

(2018年1月22日メディア・パブより転載)