地方公務員の給与を削減するべきか。政府の要請に基づき7月1日時点で地方公務員の給与を削減したのは、全国の自治体のうち58.1%にとどまっていることが、総務省が2日に発表した調査によって明らかになった…
Flickr / Yuya Tamai

地方公務員の給与を削減するべきか。政府の要請に基づき7月1日時点で地方公務員の給与を削減したのは、全国の自治体のうち58.1%にとどまっていることが、総務省が2日に発表した調査によって明らかになった。

政府は、東日本大震災の復興財源にあてるため、国家公務員の給与を7.8%引き下げており、地方公務員も同様に、7月までに引き下げるよう求め、地方交付税を減額した。

国主導のやり方に、反発も出たが、53.6%の自治体が国の要請に応じる、または今後実施予定との結果となった。既に国と同等の水準であったとする自治体の11.9%を加えると、65.5%となる。検討中または今後検討とする自治体も20.6%あったが、実施予定なし、または議会で否決されたとする自治体が14%存在した。

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2日の閣議後に記者会見した新藤義孝総務相は、国と同等もしくは、それより低い給与水準の自治体には引き下げを求めてはおらず、また、給与引き下げを行わなかった自治体に対し、ペナルティーなどは課さないとしながらも、全ての自治体に引き下げをお願いしたいと話した。

議会で否決されたとする自治体については、例えば青森市は、時事通信社が次のように報じている。

市は職員労働組合との交渉を経て、職員の給料を7月から来年3月まで9.77~4.77%削減することなどを柱とする条例案を議会に提出。この日の討論では「職員の生活に与える影響が大きく、仕事へのやる気を低下させる」などの意見が反対派の議員から出た。

(時事通信「給与削減条例案を否決=自民系会派も反対-青森市議会」より。 2013/06/25 15:58)

また、地方公務員の給与は、一般的な会社員より高いかもしれないが、国が一律に引き下げを支持するのはどうかとする声もある。東京都の猪瀬知事は、1月18日の記者会見で下記のように話している。

【記者】麻生大臣がですね、地方公務員の給与を7.8%カットしろと、こういう要請をしたんですが、地方自治体の首長の皆さんはですね、大反対したようですね。猪瀬都知事としては、この問題をどういうふうにお考えになりますか。

【知事】それはね、国が決めることじゃなくて、各自治体が自主的にやらなきゃいけないことであって、東京は既に石原知事が就任以来、現在まで、大体7.8%以上やってますよ、削減は。この間も11月に、退職金13%削減しましたよね。あれで1人340万ぐらいになりますよ、削減額が。そういうことをやっているわけであって、そういうことをよく知らない麻生大臣が、もっとも、いろいろな地方があるから。そういうの全然やってない、そういう地方公務員が住んでるような地域もありますよ、よそでは。東京はそうじゃない。そういうこと。以上です。

【記者】民間の給与と比べましてね、公務員給与っていうのは高過ぎると、こういう意見も随分あるんですが。

【知事】特にね、地方においては、民間の給与と公務員の給与は差が大きいんですよ。東京は首都だから、民間の給与が高いので、公務員の給与が1つの目安になって、別にそれほど高いという形じゃないんだが、それでも削ってきたわけ。削ってない地方がある。ただね、それを麻生副総理、財政担当の人がね、一律にですよ、国がそれを、交付税を盾に命令するのはいかがなものかということはあると。終わり。はい。

【記者】認識としましてね、都知事の認識としては、公務員給与は民間の、例えば東京の平均値をとりましてもですね、760万……。

【知事】予算の質問じゃないだろ、それ。ちょっと。予算についての質問じゃないでしょう。

【記者】ええ。まあ、これからの基本的な考え方になるかと思うんですが。

【知事】だから、そういう考え方では地方は高過ぎるところいっぱいあるの、公務員給料が。で、東京都は、だから石原知事以来かなり削減してきた。さらにこれからも無駄を削減して、削減できるところは削減していく。しかし、その前に民間企業の給料が上がるような政策を東京都が打たなきゃだめなんだよ。で、みんなの給料がどんどん上がっていく、デフレじゃなくて。そういう世界をつくろうとして、今回の予算の中身を、今、説明しているわけ。分かりました?分かったら分かったで、無理に質問しなくていい。はい、オーケー。次。いいですか。

(「平成25年1月18日 東京都・猪瀬知事記者会見」より)

今回の総務省の調査では、東京都及び東京23区全ては、「予定なし」となっている。

経済ジャーナリストの磯山友幸さんは、東京都が反発できる理由として、地方交付税交付金をもらっていないからと指摘している。国からの交付金が無いとやっていけない自治体にとっては、公務員の給与を下げないと、自治体のサービス自体が悪化してしまうため、東京都のように独自の財源で賄うと強気に出ることもいえない。

磯山氏は、国が税金を吸い上げて地方に分配する地方交付税交付金のあり方自体を見直さなければならないと指摘する。財政が潤っている自治体、そうでない自治体、様々であろう。地方公務員の給与うんぬんを中央から指摘するよりも、地方自治体が財政を健全化させて黒字になるような仕組みについて、議論すべきではないだろうか。

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