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「ゆるキャラグランプリには出ません」ご当地キャラ界の異端児「カツオ人間」の心意気

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くまモン、ふなっしー、バリィさん、せんとくんにひこにゃん――日本各地のゆるキャラブームの過熱は止まりそうもない。

そんな中、「ゆるキャラグランプリには出ない」とブームに背を向け、我が道をゆくご当地キャラがいる。

バラエティーやイベントには目もくれず、露出を絞り込む代わりに、ソーシャルメディアの投稿に注力し、Facebookに写真を投稿すれば、1000いいね!、2000いいね!は当たり前。大企業のアカウント並みに厳しく指標管理しながら活動している、高知県の「カツオ人間」だ。

まずはソーシャルメディアに投稿されている写真を見ていただこう。

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カツオ人間 写真集
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カツオ人間の仕掛け人は、高知県の半官半民の団体に所属する一般財団法人 高知県地産外商公社 プロモーション戦略局 局長の小笠原慶二さん。「カツオ人間」の“反逆”の理由を聞いた。

――カツオ人間、ソーシャルメディアで拝見したんですけども、写真のクオリティーが高くて、「ゆるく」ないですよね。

実際、ゆるキャラではないですね(笑)

他のキャラクターみたいに、おかしなポーズを取った写真が連続で貼られてて、っていうのとは確実に違います。Twitter始めた時から、同じプロのカメラマンで撮ってますし。もう、プロの写真はやっぱり、奥行き感がありますよね。

Facebookって写真のあるなしでまったく反応が違うんです。Twitterは、テキストの世界で生きている人が大半で、写真がなくても、刺さる言葉があるとガッと行くんですけど、Facebookは写真がないとほとんど飛ばして見られてると思います。

でも、すごくみなさんに喜んでいただける写真って、あるんですよ。

――ほうほう。

青い海、青い空、緑の山の中にカツオ人間がいる――こういう写真はものすごく愛されるんです。なにか、人の心に響くものがあるんですかね(笑)

――へえ!

あとはカツオ人間が日常の中にいる、ってことも大事だと思うんです。セットみたいな場所に連れて行っても全然、面白くないし、ゆるキャラコンテストに他のキャラと出てても、やっぱり面白くないんですよね。

普通に飲み屋に行ってるとか、二日酔いになってるとか、知ってるところにいる、っていうのがすごく喜ばれます。でも、どこに来た、というのははっきり言わない。必ず、1つ2つ3つくらいは、見てる人が語れる、コメントが書けることを残すんです。

「あ、ここってこの店だよね」「ここはここのママはさー」とか(笑)

――カツオ人間が生まれたきっかけを教えて下さい。

2007年からキャラクターとしてはいたんです。でもこれは高知の地元のおみやげやお菓子の卸会社さんが、仲間内でノリで作ったキャラクターなんですね。イラストを描いて、「それなんか面白いよね」ってことで活動してたんですけど、誰も知らない。

私は2011年にあのキャラクターを発見して、これすごくフォルムとか面白いなあ、ポテンシャル高いキャラクターだなあ、これなんとか使えないかなあ、と思っているうちに、この高知県のアンテナショップ(東京・銀座)が2011年に1周年記念をやる、っていうことになりまして。でも、考えてみてください。この地方のアンテナショップが1年を迎えたからって、メディアさんが取材に来るかって言ったら、来ないですよね? ニュースバリューないですし。

かといって、坂本龍馬を大好きな人はいっぱいいますけど、龍馬さんだけでは厳しいので、代わるものとして私があたためてきたのがカツオ人間なんです。

さっそく、県の観光特使にする企画を県庁に持ち込んだんですが、大反対に遭いまして。「人でもないし。そもそも、これなんなんですか?」みたいなところから始まり、前例がないと、ありとあらゆることを言われ、どうにもならない。「もうやめた!」と私、ブチ切れたんです。そしたらその話が、尾崎正直・高知県知事の耳に入りまして、「公社の1周年PR大使」ということでトップダウンでゴーサインが出たんですね。

でも、そのときは今みたいにゆるキャラブームでもなくて。2011年って、くまモンがゆるキャラグランプリで1等賞取ったタイミングで、せんとくんとかも2010年でしたかね。そんなタイミングだったんで、周りとかブームを全く意識せず、たまたま面白いなと思って引っ張ってきたんですね。それで、TwitterやFacebookを始めたという。

――「ゆるキャラ」ブームと関係ないところから生まれ、自ら「ゆるキャラ」ではないとおっしゃっている。ではなぜ、「キャラクター」だったのか気になります。

十数年前から、人がモノを買う時って、なにがきっかけになるんだろう、って考えてて。何かしら、機能的なところとか、情緒的なものに惹かれるとか、いろいろあると思うんですけど。

あの……突然ですけど、お酒、飲まれますか?

――飲みますねえ。というか、飲み過ぎます(笑)

(笑)。じゃあ、そこまでしてお酒を飲む理由って、説明してもらえませんか?

――うーん………

こういう質問するとほら、おかしな空気になるでしょ?

飲んじゃう理由なんて、ないんですよ。全然、ロジカルじゃないんです。よく考えたらバカバカしいことなんです。そりゃ、多少のストレス解消にはなるでしょうけども、二日酔いとか身体にはポジティブには働いてないし、それもけっこうなお金を使っているし。でも、飲んじゃうんですよね。こういう、「理由がないけど心が動いてしまうもの」って他にないかな、って考えてたんですよ。

十数年前に、コンピレーションアルバムってすごく売れてたんです。エイティーズ〜とか、70年代〜とか。で、改めて聞きますけど、なんでその頃の曲、好きなんだと思います?

――思い出ですよね。

そう。何かしら、思い出とリンクしてるからですよね。自分の青春時代の曲を買うわけです。でもさらに掘り下げて、「なんで、この年に生まれたの?」って言われたら、説明できない。だって、生まれちゃったんだもん。

この、時系列に基づいたもの、「あの時俺、これ大好きだったなあ」っていうのは、人がモノを買うときにすごく大きな理由になるんですよね。

――なるほど。

もうひとつ。

たとえば三軒茶屋(東京都世田谷区)の西友に行った時に、茨城のピーマンが5個100円、高知のピーマンが5個100円。同じ5個100円で売ってたら、絶対に、高知のピーマンを買うんですよ。「なんで高知のほう買ったの?」って訊かれたら、それはもう、「だって俺、高知生まれだもん」ってことに尽きるんですね。クオリティは? とか、1個あたりのグラムは? とか、そこにまったく合理的なロジックってないんです。

時間に基づくノスタルジーと、場所に基づくローカル。この2つは圧倒的に強い。

これをどうやったらビジネスにできるだろうなあ、と考え始めたのが、もう十数年前ですね。当時も高知をキーワードに何かしようとは考えていましたけど、さすがにまだソーシャルメディアもないから、何をするにもコストがかかるんですよ。それで頓挫したんですね。大資本を引っ張れない限り無理だ、と。

ところがコミュニケーションツールが発達してきて、いろんなことにお金がかからなくなってきた。っていうところで、声がかかったんですよ。それが、カツオ人間と結びついたわけです。

3年半やってきて、この時間と場所の軸を使う、というのはおそらく、主義主張に関係なく世界中で通用するやりかたなんだろうなと思います。あとはどうやって他に応用していくか、ってことでしょうけどね。

■「ゆるキャラは2分で飽きられる」

――活動はネットが中心ですか?

ほぼ100%ネットです。それにもちゃんと理由があるんです。ゆるキャラって、限界あるんですよ。

たとえば、カツオ人間がバーンって登場するじゃないですか。やっぱりインパクトあるんです。「おーっ」って。知ってる人なら、「あっ! カツオ人間だ! 写真撮っていいですか?」ってバシバシ写真撮って――ってなりますよね?

――はい、はい。

次は「2ショットいいですか?」――どうぞ――「カツオ人間だーふわふわだーかわいいー」で、2分で終わり。賞味期限は、たった2分。これじゃ、カツオ人間がかわいそうでしょ(笑)

――(笑)

人って、あまりにも異型なものに出会うと、日常に戻ろうとするんです。あっという間にカツオ人間が日常の世界に居着いてしまって、単なる置物になっちゃう。だから、イベントにはよほどのことがないと出しません。

あの……揶揄するわけじゃないですけど、今のゆるキャラって“数の勝負”になっていて。ほとんどゆるキャラって、10体とか20体で、クルマや飲料のコマーシャルに出て、キャラ好きを押さえちゃえ! っていうっていうやりかたなんですね。でも、それやったら、私からすると終わった感がありますね。

本来、キャラが背負ってる役割とかを理解される前に「見たことある!」って言われちゃう。しゃべれるふなっしーとかはまた違うんですけど、普通のゆるキャラだと外見のフォルムでしか勝負できない。そうすると見た、知った、で終わりなんですよね。

――本来の役割を果たさない、と。

そう。だから、カツオ人間がみんなの前に現れるのは高知県のため、っていうところはブラさない。

カツオ人間が現れると、あ、高知の何かをしにきたのね、ってわかって初めて存在価値があるので、キャラクターというより、メディアとして扱ってるんです。

たとえば、月曜日は地元の生産者のところ行ってます、火曜日は地元の高校に行っていますとか、ちゃんと曜日でメニューが決まっているんです。それぞれターゲットも目的も定めて。

特に高校に行くのは、OB,OGがとっても喜ぶんですね。その後の情報の伝播がすごいんですよ。「うちの母校に変なの来てさ!」とか「えーなんで去年来てくれなかったのー!」とか。

高校に行って実際なにをしてるかといえば、生徒さん4人くらい、それも生徒会の真面目な子とカツオ人間が並んで象徴的な写真を一枚パッと撮っているだけで、2000とか3000のいいね!がつくんですよ。まったく広がりのない、地元ネタなのに。

でも、すごく深く刺さってるんです。

たとえば、創立100年だったら、毎年、何百人かを出してるわけですよ。狭くて深いところ、ここが非常に大きなポイント。カツオ人間って、ただ面白おかしくしてファンが増えて欲しいとはまったく思ってないんです。だから、今流行っている、いわゆる“ゆるキャラ”とは違う、とハッキリ言えます。

■カツオ人間が県外で営業活動をしない理由

実は、高知県を出て行った人を探してるんですよ。カツオ人間の目的はそこにある。

カツオ人間のFacebookのいいね!数は今、2万ちょっといるんですけど、定期的に100人を抜いてきて、現住所と出身地調べるんです。Facebookは出身地のデータをエクスポートできないんで手作業でやるしかないんですけど。

そのデータを見てると、高知に縁もゆかりもない、県外にお住まいの方が50%。今現在、高知に住んでる方が30%。残りの20%が、高知出身だけど、出て行った人。カツオ人間はこの、20%を探してる。

たとえば、高知のみんなが大好きな、極めてローカルなチキン南蛮弁当なんてものをカツオ人間がアップした日には、大騒ぎなんです。「チキン南蛮だー!」って。「きさらぎ」っていう高知の人間ならだれでも知っているローカル限定のコンビニがあるんですけど、そこのお弁当なんです。県外の人には、知りようもない情報です。そういう形で、探すんですね。

探してどうするの、って話なんですけど、これがさっき言った、私は高知で生まれているから、高知のものをよく知っていて、つい高知のものを買っちゃう人ですよね、ってところにつながるんです。高知の人は、高知のことをしゃべれる。

冬が明ける頃に出てくる、高知の文旦(ぶんたん)っていう黄色くて、おっきい果物があるんですけど、美味しいんです。でも知らないと、「グレープフルーツと何が違うの?」ってなるんですね。で、私はグレープフルーツと文旦の糖分の違いから話すんです。もちろん、味のこともしゃべれる。高知の人ならしゃべれるはずなんです。

たとえば、「文旦買って」って、高知と関係ない人に突然チラシ送っても、買わないですよね。でも、私と会ったら終わり。一箱買わされます。「絶対うまいんだから、食べてみてよ!」って(笑)

要は、カツオ人間の役割は、高知出身だけどよそに行っちゃった人の、「俺、高知出身なんだよねー」っていうローカルのアイデンティティーをかきむしることなんです。それができれば、その人は強烈な高知の宣伝マンになってくれるんですよ。

――キャラが直接、県外の人に売り込むんではなく……

ワンクッション置くんです。モノの良さを当たり前のように知っている、高知大好きな宣伝マンをスカウトしてるっていう感覚です。

いったん、カツオ人間から高知の人を経由して、その人が東京なり、大阪なり、別の場所の人に伝える、これが一番重要なんです。カツオ人間がいくら「あれうまいよ!」って言ったって、よその人は耳を傾けません。だって、信用するベースがないから。

テレビCMだっていっしょなんですよ。ターゲットにとってなじみのある、説得力のあるタレントを連れてきて、「うまいよ」って言わせるわけですからね。

カツオ人間が地元の高校に行ったって特産物売れないでしょ、っていうのはごもっとも。でも結局は、関係構築なんです。「うちの学校に来た!」ってことで、カツオ人間という存在が自分ごと、私ごとになるんです。そうすると、カツオ人間が発した情報をかならず受け取ってくれる。そして卒業した彼らの中の一定の割合は、他県に行くんですね。

だいたい、今どき情報なんて山ほどあるし、疑っているし、目を閉じて、耳をふさいでいる人はいっぱいいる。信用できるものだけを信用したい、と。だったら、信用に足るものになるためにはどうすればいいの? っていう活動をやっている。そうなるには、ただやたらめったらテレビに出たりすることは違うよね、っていうことに集約されると思います。

■ただ面白おかしくやって人を集めても意味はない

――とはいっても、有名になる前はテレビに出たくなりますよね?

そりゃ、なりますよ(笑)

でも、急速に売ると、急速に減退するっていうのはもう、最初から考えていたので、最初はもう、我慢ですよね。最初の方にテレビに出る機会があって、そこでバーッとフォロワーは増えました。カツオ人間と一緒に喜びました。でも、そこで来た人たちって、アクティブになってくれないんです。つながった理由が、「テレビを見たから」という理由でしかないから。だから、とにかく変な番組に出すのはやめよう、地道にやろうと決めました。

中には、テレビの情報番組に出て、Facebookでも十何万とかすごい数のフォロワーがいるキャラクターもいますよ。でもね、効果という視点から見ると、そのキャラのポストに対していいね!がついてる数って、100くらいなんですよ。

これって、なんのためにやってるんだろう、と。他の人には「普通の大きい企業でも、そんなもんですよ。1000、2000のいいね!が毎回つくのなんてないですよ」って言われちゃうんですけど。

でも、私にとっては、100とかなら止めたほうがいいと思ってます。労力に対して報われない。企業でも全く同じで、プレゼントキャンペーンです、とやるとそもそも関係の薄い、アクティブにならない人を呼び込んじゃうんですね。

カツオ人間に関しては、プロモーションはやらないので、本当に好きな人がいてくれる。そこが他のキャラクターとの違いだし、ずーっと我慢しててよかったよな、とカツオ人間ともよく話してます。

――本物のファンしか集めない。

そうです。ほぼ100%、本物のファンですね。というより……本物じゃない人は、そもそも見つけられないと思うんですよね。こちら側からムダな露出を拒絶していたので。そうじゃない人がいくら来ても意味がないから。

そのおかげで、ちゃんと「信頼関係」を築ける相手だけを呼んでいれば、こちらがきちんと発信していくだけで、フォロワーの100%近い人が反応してくれるんですよ。

もうこれの影響たるや、そこらに広告出すよりはるかに効果的なんです。

――親しい人、自分が好きな人の流すものを選んで見たい、というのはソーシャルメディア的ですよね。

まさにそうです。

県外の人じゃなくて、高知をよく知っている人に向けたメッセージなんで、妥協がすぐバレる。リアリティを追求するために文旦とか、ゆずを作っている農家さんのところにお手伝いに行ったりとか、けっこう過酷なんです。

言葉遣いも、徹底してリアルな土佐弁です。ネイティブ土佐弁。「龍馬伝」に出てきた土佐弁じゃないんです。あれは違う。高知の人は話さない。「〜ぜよ」とか言ってる人いませんから、高知には(笑)

面白おかしくやってるふうに見えるんですけど、ホントは緻密で繊細な作業で、ちっちゃな積み木を縦に積んでるような状態ですよ。一個置き間違えたら即アウト、っていう。その慎重さがカツオ人間を作ってるんです。そういう意味で、まったくゆるキャラじゃないんです。本当に。

――ガチキャラですね(笑)

いや、そう言われるのも違和感あるんですけどね(笑)

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