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【3.11】復興政策や福祉政策からこぼれ落ちる被災地のシングルマザーたち 悪化する「貧困」と「孤独」

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東日本大震災から3年。東北のシングルマザーたちの現状を聞く集会が3月26日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で開催された。シングルマザーの支援を行っているNPO「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京都千代田区)が開催、国会議員や復興庁、厚生労働省の担当者も参加。現地で活動する団体からは、復興政策や福祉政策からこぼれ落ち、貧困や差別に苦しむシングルマザーたちの厳しい状況が報告された。

■職場と自動車が流されたが、罹災証明書が出ず支援なし

集会ではまず、「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事、赤石千衣子さんから被災したシングルマザー14人の聞き取り調査が報告された。

たとえば、岩手県沿岸部で高校生の息子と中学生の娘を育てている山内由香子さん(仮名、30代)。震災の1年前、夫の借金や金銭トラブルが原因で離婚していた。養育費も払ってもらえず、月収12、13万円の食品加工の仕事と児童扶養手当などでギリギリの生活をしていたところへ、震災が起こった。

山内さんはその時、自動車を運転していた。津波に流され、たまたま木にぶつかったので車外へ逃れて九死に一生を得た。家は無事だったものの、勤め先は流されていた。仕事も自動車も失ったにも関わらず、家が無事だったために「罹災証明書」はなく、義援金も受け取れなかった。

その上、山内さんの住む地域では、自動車がないと暮らしていけないため、流された自動車のローンが終わっていないのに、再び自動車を買わなければならなかった。もちろん、二重ローンに対する援助もなかった。現在は手取り14万円で、買いもの代行サービス業で働いているが、その仕事に就けるまでに何度か転職、月収4万円にまで落ちたこともあったという。

被災地では公的な交通機関が寸断、車社会にも関わらず、自動車の所有が資産と考えられてしまう。赤石さんは、「高校生の子供がいれば、アルバイトしてもらって収入にするよう言われて生活保護受給を断念したケースもあります。被災地では特別に生活保護ルールの緩和があればありがたい」と指摘した。

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「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事、赤石千衣子さん(右)から被災したシングルマザーの聞き取り調査が報告された

■震災遺児家庭と母子家庭の支援格差が浮き彫りに

報告会では、被災地でシングルマザーの支援を続けてきた団体からも報告があった。岩手県盛岡市の「インクルいわて」理事長、山屋理絵さんは、「一人親家庭の貧困と孤独は、震災後に悪化している」として、「男性並みに長時間働けば、子供と向き合えない。テレビに出てくるかっこいいシングルマザーの世界はない」と現状を語った。

「ワーキングプアという社会的な構造上の問題があっても、声を上げることができない人たちのために、その声を聞きながら模索してきた。一人親を一番、疲れさせているのが、差別と偏見のまなざし。『離婚したのは自己責任でしょ』という言葉がその人たちを傷つけ、一歩を阻んでいます」

また、岩手県陸前高田市を活動拠点とするマザーリンクジャパン代表、寝占理絵さんは、「経済的には震災で母子家庭になった人よりも、震災前から母子家庭の方が大変。震災で父親が亡くなった家庭には、あしなが育英会をはじめ、義援金、生命保険金が入ったケースも多いです。それに対し、震災で安定した職を失った母親も多く、3人の子供を持ちながら、3つのパートを掛け持ちしている人もいる」とその格差について言及した。

そうした家庭は、月収10万円以下、多くても12、13万円で、それ以上の収入を得ている家庭はほとんどないという。「自分のわがままで別れたんだからという批判をよく耳にするが、実際は、DVや父親が蒸発してしまった場合もある。自分のためではなく、子供の環境によくないと決心して別れている。震災前に離婚して頼っていた実家が津波に流されてしまい、自分と子供だけが残されたという家庭もあり、本当に不安を抱えている」

■「母子家庭」「東北の伝統的村社会」「被災の影響」という三重苦から孤立

また、寝占さんによると、陸前高田市ではそれまで、祖母の介護を担当していた母が震災で亡くなり、母親が働きながら育児と介護をしなければならないという「想像を絶するケース」もある。

「別れたご主人から養育費をもらっていたが、震災で亡くなってしまったのでそれも途絶えた。パートで月収10万円で、子供3人を抱え、貯金を取り崩すしかない人も。こういったお母さんの中には、震災で『自分が死ねばよかった』という人もいます。震災遺児家庭への支援が多過ぎるといっているわけではなく、震災以前から大変な家庭や、震災後に夫のDVが増えて離婚してしまった家庭にも支援が届いていないのが問題なのです」

宮城県からは、「災害子ども支援ネットワークみやぎ」(宮城県仙台市)の代表世話人、小林純子さんが、シングルマザーに必要な施策として、「被災地保育園の再建や代替制度」「一時預かりの充実」など育児支援の強化を訴えた。

宮城県北部で活動している「ウィメンズアイ」(宮城県登米市)の代表理事、石本めぐみさんは、宮城県北部のシングルマザー家庭は年収が著しく低い世帯が多く、「母子家庭」「東北の伝統的村社会」「被災の影響」という三重苦から孤立しがちな傾向を報告。震災から3年を経てもいまだ弱い立場にあるとした。夫からDVを受けて、離婚寸前のプレシングルマザーも多いことからも、貧困女性層へのサポートの必要性を指摘した。

■東北のシングルマザーへの支援には官民の協力が必要

集会に参加した復興庁の担当者は、「支援制度がある中で、偏見や差別が気になって使っていただけない状況があるということで、罹災証明書もなかなか出ずに制度の中から落ちている人をどうしたらいいのか。今後も関係省庁、自治体、被災地に心を置いている方々と連携しながら、難しい面はいろいろありますが、少しでも母子家庭、父子家庭の方に安心して生活できるように取り組みたい」と話した。

厚労省の担当者は、「一人親家庭の支援のあり方について、2013年5月から『ひとり親家庭への支援施策の在り方に関する専門委員会』が開かれ、中間まとめができた。これを踏まえて、母子及び寡婦福祉法の改正案を国会で審議いいただいている。父子家庭に対する支援の拡充や法律名や関係する部分をわかりやすくするといった内容です。平成26年度予算では相談窓口の強化、色々な施策が知られていないので、周知、広報啓発を行っていきたいという内容を盛り込んでいます」と説明した。

報告した団体からは、運営資金不足の窮状や「助成金などによって被災地の支援団体を育てていってほしい」といった声も聞かれた。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石さんは、「東北の母子家庭になかなか施策が届いてない現状を協力してなんとかやっていきたい。子どもの格差が広がって行くことが、命の危険にまでつながる」と語った。

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